太陽系が誕生してから約46億年。地球は何度も天変地異に見舞われ危機的状況に陥るも、それらを乗り切って現在に至っています。
時にそれは地球だけでなく太陽系全体にも危機的状況が訪れており、そのひとつが他の恒星が太陽に異常接近するというニアミス(近接遭遇)。
では、他の恒星が接近して来たとき太陽系にどんな影響が出て、そのとき地球はどうなっていたのでしょうか?
280万年前に太陽系に起こった天変地異
地球からカシオペア座方向に約247光年離れた位置に、太陽質量とほぼ同じ(1.07倍)のG型主系列星「HD 7977」という恒星が存在します。このHD7977は、今でこそ250光年近い位置にありますが、その昔、太陽に異常に接近し太陽系に大混乱を巻き起こしたとされている星だそうです。
「Image Credit:iStock」
「HD 7977」が太陽系に接近したのは今から280万年前だとされており、この頃の地球では人類の祖先は既に誕生し、石器も使い出して狩猟生活を送っていた時代ではないかと思われます。
そんな人類の創成期でもある時代にやって来た星「HD 7977」。それは太陽系最外縁部にある領域「オールトの雲」の中まで入り込み、外縁部の小天体をかき乱していたのではないかと考えられています。
「Image Credit:オールトの雲の想像図(Vito Technology,Inc.より)」
これまでの研究によると、「HD 7977」は太陽から約0.2~0.5光年の位置まで接近し、そして通過していったと予想されていますが、この時、地球に何が起こったのか?については詳しい解明がされていませんが、このように比較的大きな恒星によるニアミスが起こった場合、太陽と他恒星の間で重力相互作用が起こり、軌道変動も含めた惑星に影響を与える可能性があります。
例えば、他恒星の接近に関わらず、定期的に地球の軌道は木星等の巨大惑星の重力によって引っ張られ、軌道離心率、軸傾き、歳差運動に長期的な変化(ミランコビッチサイクル)の影響が起こってしまう可能性もあり、また、彗星の故郷とも呼ばれているオールトの雲が引っ掻き回された事で、多くの彗星たちが太陽系内部まで入り込み、地球に大接近、または衝突をしていたことも考えられますが、現在の地球生命の繁栄を見る限りでは、壊滅的な事態は起こらず、それほど大きな影響はなかったのではないか?と考えられます。
7万年前にも起こっていた恒星のニアミス
G型主系列星「HD 7977」が太陽系に異常接近したのは280万年前ですが、それよりもずっと後の時代である、今から7万年前にも恒星が太陽系に接近していた事も知られています。その恒星の名は「ショルツ星」。
「Image Credit:連星ショルツ星のイメージ図(Michael Osadciw/University of Rochester)」
現在は太陽系から「いっかくじゅう座」方向約20光年の位置にある、太陽よりもかなり質量の小さい赤色矮星と、さらに重力の小さい褐色矮星から成る連星(2つ合わせても太陽質量の15%程)ですが、ショルツ星もまたオールトの雲の中まで入り込み、最接近時の太陽との距離は0.8光年(約7.6兆キロ)だったと推測されています。
この時は、かなり質量の小さい赤色矮星だったため、280万年前に接近した太陽質量並みの「HD 7977」程の影響はなかったにせよ、オールトの雲を引っ搔き回した事は確実なようです。
今後、太陽系に接近しニアミスの危険がある恒星
最近の研究によると、地球史の中で太陽系とニアミスを起こす他恒星は珍しくなく、1パーセク(3.26光年)以内に接近する確率は100万年あたり20回程はあると言います。となると、今後も他の恒星と太陽系が接近する可能性は十分あると思われ、研究者たちがシュミレーションを行った結果、現在「へび座」方向約63光年の位置にある「グリーゼ710」という太陽質量の0.6倍程のK型主系列星が、130万年後には太陽から2兆3,000億キロの距離まで接近して来るとされています。
◆ 参考動画:110~150万年後の間、グリーゼ710が太陽系に接近し通過して行く様子を描いたシュミレーション動画(
「グリーゼ710」もまたオールトの雲の中に入り込んでかき乱し、その代償として多くの彗星等の小天体が太陽系内部まで侵入し、もしかしたら地球にも雨のように隕石や彗星が降り注ぐかも知れません。