宇宙を舞台にした壮大なSFスペクタクル映画やアニメなんかを観ていると、いつかはこれが現実になって、人類は宇宙の星々の間を自由に旅する事が出来るようになるじゃないか?!って思っている人も少なからずいるのではないでしょうか?!
しかし物理的な現実で言うと、これから人類の科学がどんなに進んでも、残念ながら、それは不可能と言ってもいいくらい厳しいモノとなるでしょう。

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いつか人類は星間旅行が出来るようになるのは夢物語!?

人類の科学文明は目覚ましいモノがあると認識している人は多いかと思います。
その事実として、宇宙開発も加速度的に進んでおり、地球の軌道上には1万機を超える人工衛星が飛び交い、無人探査は太陽系全惑星に直接赴き調査を行っています。

「Image Credit:冥王星に接近するニュー・ホライズンズの想像図(NASA/JHU APL/SwRI/Steve Gribben)」
また、人類自体も数年以内には再び月面に降り立ち、調査・開発を実施する計画を立てており、その先には有人火星探査も視野に入れた動きも見せています。


「Copyright c:SpaceX All rights reserved.」
人類が宇宙に第一歩を記してから約70年余り。ここまで進んだ宇宙開発の現実を見てしまうと、もしかしたら宇宙開発100年以内で、私たちは宇宙旅行に行けるようになるかも知れないと期待を持ってしまい、さらに100年、200年後には太陽系を飛び出しSF映画で観るような星間旅行も可能になっていくのではないか?とまで期待を持ってしまいます。

「Image Credit:iStock」
しかし、現状での物理原則で考えると、今後、火星や木星といった太陽系天体を行き来する宇宙旅行は可能になるかも知れませんが、太陽系の外に飛び出すような星間旅行は到底不可能と言わざるを得ないでしょう。
では、それは何故なのでしょうか?
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そこには、限られた時間や寿命を持つ私たちのようなひとつの生命体では、あまりも壮大で次元の違い過ぎる宇宙の壁が立ち塞がっているからに他ならず、それは大きく分けると3つの巨大な壁があると言えます。

人類の星間旅行を妨げる巨大な壁①「広大すぎる宇宙の壁」

現在、人類が造った”人工物”で最も遠くまで到達しているのは、1977年にNASAが打ち上げた探査機「ボイジャー1号」で、現在は地球から約240億キロ(2025年5月現在)の星間空間を飛行中で、今もなお秒速約17キロメートルという速度で地球から離れつつありますが、それでもそこはまだ太陽系の中であり、ボイジャー1号が完全に太陽系を離脱するまでは、あと数万年はかかると予想されています。

「Image Credit:Wikipedia」
と、それだけでも太陽系自体がとてつもなく広いという事は理解できるかと思いますが、太陽系に最も近い恒星系である「アルファ・ケンタウリ」までの距離はおよそ4.3光年。つまり、秒速30万キロという光の速度を持ってしても4年以上はかかる途方もない距離であり、仮に現在人類が建造した最速の宇宙船でアルファ・ケンタウリ星系に向かったとしても、到着まで6~7万年の時間を要する事になるのです。

このように、隣りの恒星系に行くのに、とてつもない時間がかかるうえに、太陽系の外に出るのでさえ常識的な時間では不可能なのがわかるかと思いますし、宇宙の広大さを考えると、私たちのような生命体が宇宙空間を移動することが如何に困難なのか?を思い知らされてしまいます。
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人類の星間旅行を妨げる巨大な壁②「光速の壁」

アインシュタインが約100年前に提唱した「特殊相対性理論」によると、光の速さは絶対的でありいかなる物質も光速に到達する事は出来ないとしており、実際に現代でもそれは物理法則の厳密な制限として捉えられ、約299,792,458m/s(秒速約30万キロメートル)の光速は絶対に超えられないとされています。
すなわち、この物理法則の制限がある以上、寿命が100年にも満たない私たち人類では星間航行どころか、太陽系でさえも永遠と言っても過言でないくらい抜け出す事は不可能なのです。

「Image Credit:iStock」
でれば、光速に到達は出来ずとも光速に近づく事は出来ないのでしょうか?
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人類の星間旅行を妨げる巨大な壁③「相対性理論の壁」

残念ながら、そこにも物理法則の制限に伴う光速の壁が存在しており、特殊相対性理論では、速度が増すに連れて物質の質量も増大して行き、光速に近づくという猛烈な速度になっていくと質量も爆発的に増え、仮に宇宙船が光速の90%に到達した場合、質量は約2.5倍に膨れ上がってしまい、宇宙船に乗っている搭乗員にもその重量がのしかかって来る事にのです。

「Image Credit:iStock」
さらに、この質量の増加によって宇宙船に必要なエネルギーも膨大になって来ます。
仮に100トンの宇宙船を光速の50%まで加速させるとなると、広島型原爆1000発分以上の途方もないエネルギーが必要となり、現実的に考えると、このようなエネルギーを発生させる宇宙船を造る事など到底不可能です。

そしてさらに相対性理論の壁は他にもあり、光の速度と時間の流れの相対的な関係で、光速に近づくに連れて時間の進み方がゼロに近くなる現象が起きてしまい、地球と宇宙船との時間のズレが、まるで昔話の浦島太郎のような「ウラシマ効果」になってしまうとされています。

「Image Credit:iStock」
つまり、光速に近い速度で移動する宇宙船に乗っている搭乗員にとっては1年でも、地球での経過時間は数年経っているかも知れないですし、場合によっては数世紀の時間が経過している事もあるのです。
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宇宙空間を高速で移動する致命的なリスク

人類が太陽系の外に出て、星々を渡り歩くために必要な恒星間航行をするためには、光速に近い、またはそれ以上で飛べる宇宙船を造るしかないのですが、前記もしたように物理的法則で超える事の出来ない巨大な壁が立ち塞がる事で、夢の星間航行は不可能と言わざるを得ないでしょう。

しかし、ここまで挙げた物理法則の壁以外にも”夢”を妨げる壁はいくつもあります。例えば・・・
  • 超高速での衝突エネルギー:仮に光速に近い速度を出せる宇宙船が宇宙空間を航行している時に、、航路上に障害物があった場合、それを避ける事は至難の業になってしまうでしょう。また、超光速で航行する宇宙船にとって障害物は、例えそれが砂粒程度の塵であったとしても、諸突で発生するエネルギーは核爆弾並み、またはそれ以上の凄まじい破壊力を生じるとされています。
  • 過酷な宇宙環境に人間は耐えられない:星間航行をするとした場合、宇宙船の搭乗員たちは過酷な宇宙環境に長期間晒され続ける事になります。そうなった場合、生きるための重力環境や宇宙船が晒され続けるであろう、強力な宇宙放射線下での生活。また、閉鎖空間での長期生活で人はどれだけ耐える事が出来るのか?そこもある意味で物理的な問題が生じる事になるのかも知れません。

「Image Credit:iStock」
このように、物理法則を理由に人類の宇宙に対する好奇心を閉ざしてしまいがちになってしまますが、ここまで挙げた”壁”はあくまでも現代の科学での限界、そして相対性理論が全て正しい場合によるものであって、もしかしたら将来、この常識とされて来た法則・理論は覆るかも知れません。それはかつての人々が「人類が宇宙に行くなんてあり得ない」と思っていたように、未来社会では不可能が可能になっている可能性も捨て切れないのではないでしょうか?!
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