大質量の恒星が一生を終える時に起こす大規模な爆発現象を超新星爆発と呼びます。
この超新星爆発は宇宙のあちこちで起きており、宇宙では日常的な現象でこれまでの人類の観測でもいくつ発見されています。
しかし、超新星爆発を起こす瞬間である衝撃波が起こる「ショックブレイクアウト」はほんの数時間程度しかなく、広大な宇宙空間でこのような短い時間の天体現象を観測することは極めて困難なのですが、近年になって初めてその現象を捉えることに成功しています。

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宇宙で一瞬の出来事~ショックブレイクアウト

広大過ぎる宇宙では人間の人生(寿命)などほんの一瞬に過ぎず、それどころか人類の進化の数百万年の歴史ですら僅かな時間でしかありません。

「Image Credit:imagenavi」
そんな私たちの感覚では測り切れない宇宙の時間の流れの中で、超新星爆発の初期現象である「ショックブレイクアウト」が起こる時間は数時間ほどしかなく、この現象が起こる瞬間に人類が遭遇(観測)出来るのは1憶分の1程の確率だと言われています。
ですが、そもそも「ショックブレイクアウト」とはどんな現象なのでしょうか?

超新星爆発の初期現象~ショックブレイクアウト

宇宙で自ら光を放つ天体は恒星であり、私たちの頭上に輝く太陽も恒星の一つである事は誰もが知る事です。
そんな恒星のエネルギー源は星の中心部で起こる熱核融合反応で、これによりエネルギーを放出し光輝いているのですが、それは無限に続くワケではなくいつかはエネルギーを放出し尽くし寿命を迎えてしまい、大質量の恒星(太陽質量の8倍以上)の場合、寿命が尽きると自らの重力に耐えられなくなり一気に星の中心部に向けて収縮する重力崩壊を起こし衝撃波が発生し、その反動で大爆発が起こり凄まじい光を放ちます。
「ショックブレイクアウト」とは、このときの爆発(輝き)の事で、ショックブレイクアウトにより放たれるエネルギーは太陽の数千倍から数万倍以上にもなると考えられています。

「Image Credit:ショックブレイクアウトのイメージ図(Kavli IPMU)」

予測不可能なショックブレイクアウトを捉えた瞬間

いつどこで起こるかわからないショックブレイクアウト。
ましてやその観測範囲が宇宙全体に及ぶと奇跡でもない限り、この現象を観測する事は不可能に近いと言われています。
◆参考動画:「ショックブレイクアウトの想像アニメーション」

「Copyright ©:NASA’s Ames Research Center All rights reserved.」
しかし、そんな奇跡が2016年9月に起きた事が大きな話題に!
それはアルゼンチンのアマチュア天文家が偶然捉えた事によるモノでした。
このアマチュア天文家は、たまたま自宅の観測施設で新しいCCDカメラの試し撮りを行っていたときに、ショックブレイクアウトが偶然写り込んでいる事に気付き、結果的に奇跡の瞬間を捉える事に成功しています。
これが↓↓その時、偶然撮影に成功したショックブレイクアウトの瞬間の画像です。

「Image Credit:Bersten et al.」
上画像は、地球から約6,500万光年離れた「ちょうこくしつ座」にある渦巻銀河「NGC613」で、アマチュア天文家がこの銀河を撮影していたところ、銀河中心の南側に突如出現した小さな天体(図内の赤丸)に驚き、この出現した天体を詳しく観測すると、太陽質量の約20倍もある恒星が起こした超新星爆発のショックブレイクアウトであったことが判明したのでした。
なお、このショックブレイクアウトを起こした天体は、その後「SN2016gkg」と呼ばれる事になります。
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先人が肉眼で目撃したショックブレイクアウト

超新星「SN2016gkg」は、約6,500万光年という地球から遠く離れた場所で偶然見つかったショックブレイクアウトでしたが、実は約1,000年前に肉眼でショックブレイクアウトが観測された例があります。
それは、現在は「カニ星雲」と呼ばれているガズ状天体で、カニ星雲の正体は地球から約7,000光年離れている超新星爆発によって出来た残骸です。

「Image Credit:超新星爆発の残骸・カニ星雲(Wikipediaより)」
このカニ星雲になった超新星爆発のショックブレイクアウトは西暦1054年の出来事で、中国の歴史書にはこの時の現象を「客星」として記されており、客星(ショックブレイクアウト)は1054年7月4日に突然出現し、しばらくは肉眼で見え続けたものの1056年4月5日には見えなくなったとあり、このとき発生したショックブレイクアウトは金星ほどの明るさまで輝き、約1カ月間は日中でも観測出来たと記録されているほど明るく見えたとあります。
なお、超新星の残骸「カニ星雲」は、現在も毎秒1,100キロもの速さで広がり続けているとの事です。

人類史上初の明るさで輝くショックブレイクアウトを見れる可能性

約1,000年前に肉眼で目撃された超新星爆発のショックブレイクアウト。このときの明るさは金星ほどでしたが、今後もっと明るく満月以上の明るさで輝くショックブレイクアウトが見れるかも知れません。
それは、このサイトでも何度も紹介しているオリオン座の一等星・ベテルギウスの事で、この天体は今まさに恒星としての最期を迎えようとしており、いつ超新星爆発が起きてもおかしくない状態にあると言われています。

「Image Credit:ベテルギウスの大きさ比較(左)と赤色超巨星となった現在の姿(右)(NASA Space Placeより)」
太陽の20倍ほどの質量を持つベテルギウスは、現在膨張を続け大きさにして太陽の900倍を超える赤色超巨星まで成長していると推測されており、地球からベテルギウスまでの距離は約530光年とされ、千年前に起きた「カニ星雲」の7,000光年とは比べモノにならないくらい近い距離にあり、もし、この距離で超新星爆発が起きた場合、ショックブレイクアウトは人類がこれまで経験したことのない現象となる事は間違いなく、その明るさは満月以上、または太陽が2つ出現するほどの明るさまで輝くと予測する専門家もいるほどです。

そんな爆発間近のベテルギウス。明日にでも超新星になってもおかしくない状態だと言われていますが、今のところその兆候は見られていません。
しかしながら、「明日にでも」と言っても私たちが生きているうちにベテルギウスの超新星が見れるとは限りません。

宇宙での時間の流れは人の時間の流れとは遥かに異なり、人にとっては永い100年も宇宙の時間では瞬きする一瞬にも満たない時間です。
そのため、ベテルギウスが起こすであろうショックブレイクアウトの瞬間は、百年先、千年先、もっとそれ以上先に起こる事かも知れません。
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