太陽系の惑星の中で、最も調査が進んでいないと言われているのが天王星と海王星。
というのも、他の惑星には直接探査機が送り込まれ詳しい調査が行れているのに対し、この2つの惑星の直接探査を行ったのはNASAのボイジャー2号ただ一機のみで、しかもわずかな時間しか探査出来なかったため、現時点では地上からの調査をする手段しかありません。
しかし、最近の観測技術は精度が高く様々な観測が行われ、この2つの惑星についての謎が少しずつ解明されつつあります。
そんな謎解明が進みつつある2つの惑星のうち、天王星について新たな調査結果が出たようです。

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太陽系第7惑星・天王星の基礎知識

地球からの平均距離が約27億キロの彼方にある、太陽系7番目の惑星・天王星。

「Image Credit:宇宙科学研究所 キッズサイト
太陽系の惑星の中で、木星、土星に次いで3番目に大きな天体で地球と比較すると約4倍あり、主にガスと氷から形成されており海王星と合わせて天王星型惑星と呼ばれています。

「Image Credit:大きさ比較 地球(左)天王星(右)(Wikibooksより)」
天王星の最大の特徴は大きく傾いた自転軸にあり、地球の自転軸が黄道面に対し、天王星の自転軸は約98度というほぼ横倒しと言ってよいほど傾いています。
この天王星の自転軸が何故、横倒しになったのか?についてはこれまで謎に包まれていましたが、最近の研究シュミレーションでは、数十億年前の太古に地球クラス、またはそれ以上の天体が2度に渡り天王星に衝突したことによる衝撃で傾いてしまったのでは?という説が有力になっています。
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天王星の衛星数と環

天王星には現時点で27個の衛星が確認されており、その中でも「天王星5大衛星」と呼ばれるのが天王星に近い軌道順に、アリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン、ミランダの5つです。

「Image Credit:天王星5大衛星 ()内は直径(Wikipediaより)」
これらの衛星はほとんどが岩石質の天体で、どの衛星もそれほど大きな特徴は持っていないのですが、付けられたネーミングが特徴的で、どの衛星もシェイクスピアまたはポープというイギリスの作家作品から命名されています。

また、特徴的と言えば天王星の環(リング)もそうかも知れません。
リング(環)を持つ惑星として有名なのは土星ですが、太陽系でリングを持つ天体は土星だけではなく、木星や海王星、そして天王星にもリングがある事は確認されています。
天王星のリングは現在のところ11本発見されており、直径10m以下という岩石や炭素を含んだ薄くて暗い物質で構成されています。

「Image Credit:天王星の環と衛星(Wikipediaより)」
上画像でもわかるように、天王星のリングが縦に巡っているように見えるのは、自転軸がほぼ横倒しになっているからであり、一番外側にある明るいリングはイプシロン・リングと呼ばれています。
また、リングがある天体はこのような巨大惑星だけではなく、カリクローなど小惑星にも存在する事も最新の観測で明かになっています。

●参考記事:【土星以外に環(輪)を持つ意外な天体

最近わかった天王星の意外な特徴

ボイジャー2号以来、天王星には探査機が送り込まれていませんが、ボイジャーの探査データと地上からの研究によって、最近になって天王星の大気について新たな謎が解明されています。

「Copyright ©:National Geographic All rights reserved.」
イギリスの研究チームが天王星の大気を詳しく観測し、その結果、大気中には硫化水素が含れている事が判明しています。
硫化水素は、地球上では温泉の臭いや卵の腐敗臭の原因としても知られており、いわゆる人間には不快に感じる臭いがする物質ですが、天王星に硫化水素が見つかったという事はどういう意味があるのでしょうか?
それは、同じ巨大惑星でもガスで構成された木星や土星には硫化水素は見つかっておらず、おそらく天王星と同じような形成の過程を辿っている海王星の大気にも硫化水素が含まれている可能性があるとの事。

「Image Credit:ボイジャー2号が撮影した天王星の大気(Wikipediaより)」
これは、太陽系の誕生の謎に迫るモノで惑星の形成時にどのような場所でその惑星が誕生したのか?今後の研究を進める上で、大きな価値のある発見になり得ると言います。

今後の天王星探査計画はあるのか?

前述もしましたが、これまで直接天王星まで行き探査を行ったのは1986年のボイジャー2号のみで、それ以降は、探査機による天王星の探査計画は実施されて来ませんでした。
しかし、欧州宇宙機関(ESA)が2030年代前半を目標に、天王星と海王星の探査を目的とした「ODINUS(オーディヌス)」ミッションを計画しています。

「Image Credit:天王星と海王星のシンボルマークを合成して作られたODINUS計画のロゴ。(Wikipediaより)」
この「ODINUS」ミッションは、1機の探査機で天王星、海王星の順に探査を行うモノで、今回天王星の大気で確認された硫化水素の含有量も含めこれらを調査・分析する事で太陽系誕生の謎に迫るという計画です。

「Image Credit:Getty Images」
また、天王星の自転軸が大きく傾いている原因の究明や環(リング)の調査。さらには、太陽系で唯一、他の衛星とは逆の周回軌道を持つ海王星の衛星・トリトンの謎解明等、様々なミッションを行う予定とされています。
とにかく、天王星や海王星の詳細な調査が行われるのはまだ先の事のようですが今後も探査計画の動向も気になるところです。
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