何かと話題の天体・火星。
最近では15年ぶりの大接近地下に水が発見されたりと、次々に新しい話題を私たちに届けてくれており、また、近い将来は有人探査や移住計画の話題もあり、そして究極の話題は火星をテラフォーミング(地球化)する計画もあると言うのです。

ですが、この火星テラフォーミング計画にNASAが疑問符を投げかけたようです。
と言うのは、人類最先端の技術を持っているNASAが「火星をテラフォーミングするなんて無理!」との見解を示しているようなのです。

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現実味を増して来た人類が足を踏み入れる火星の地

地球と火星の距離は最も接近したときで約6,000万キロになり、当然ながら決して近い距離ではなく、今の人類にとってはとてつもなく遠い距離です。
しかし、この距離も最近の宇宙開発の進歩ぶりを見ると決して遠くない距離になりつつあるようで、2020年代から30年代初頭にかけて火星有人探査を行う計画や、民間の宇宙ベンチャーも20年代中にも人類を火星に送り込むという計画を実際に立てているほど。

「Copyright ©:SpaceX All rights reserved.」
このような計画が発表されているのを聞くと、これから先の宇宙開発の動向が非常に楽しみなところですが、はたして人類は計画どおりに火星の地に降り立ちそして無事に地球に帰って来れるのでしょうか?

人類が火星に行くには大きな問題点がある?!

公の場で火星有人飛行計画を発表するという事は、それだけ技術が進歩している事の表れであり本当に2020年代には計画が実行されるのかも知れません。
しかし、人類が最低でも片道半年以上かかる火星に行って帰って来るには、技術ではどうにもならない問題があります。
それは、長期間の無重力生活です。

例えば、国際宇宙ステーション(ISS)に長期間滞在した宇宙飛行士が地球に帰還したときのニュース映像等を観たことがあるでしょうか?

「Image Credit:ISSから帰還したカプセルから引き上げられるJAXAの金井宇宙飛行士(AFP BB NEWSより)」
長期間、無重力の宇宙で過ごした宇宙飛行士は、筋力が衰え自力では立つことも出来ずスタッフに抱きかかえられて地上に降り立ちます。
つまり、火星に行く人類もこれと同じことが起きるのです。

半年以上の長い間、宇宙を旅し火星に到着したとします。
宇宙飛行士が火星への航行中に、筋力の衰えを防ぐために筋力トレーニングしていたとしても、それでもかなり筋力が衰えた状態になっているでしょう。
そんな状態になった宇宙飛行士たちが火星の地に立つことが出来るでしょうか?
もちろん、火星では地球のように抱えてくれるスタッフなどいません。

ちなみにあるデータによると、人が半年間無重力で過ごすと筋肉が50%萎縮する恐れがあるそうで、火星の重力が地球の3分の1しか無いことを考慮しても、50%筋力が衰えた状態で自力で火星の大地で活動する事は、かなり難しいのではないでしょうか?
ただ、SF映画に出て来るような人工重力を造り出す装置が宇宙船に付いていれば別でしょうが・・・

「Image Credit:人工重力発生装置の付いた宇宙船の造形(映画「オデッセイ」より)」
いくら技術が進歩したとしても2020年代までに、そんな装置を開発し火星へ行く宇宙船に装備することは無理なのではないか?と、個人的には思ってしまいます。
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火星活動の問題点は筋力低下だけではない!?

無重力での筋力萎縮問題が解決され、無事に火星の地に人類が立てたとしても火星がかなり過酷な地であるこは変わりはないでしょう。

火星探査で短期間火星に滞在するのであれば、特に問題はないでしょうが、今、話題になっている”火星移住”となれば人が生活するには難しすぎる数々の問題点がのしかかって来るでしょう!?

「太陽系で最も地球に似ている天体・火星」と言っても火星が地球に似ている点はほんのわずかで、それは自転速度が地球とほぼ同じの約24時間である事と四季が存在する事、他、地下に水が埋蔵されている事ぐらいで、それ以外はとても地球に似ているとは言い難い環境であるのが火星です。

例えば、重力は地球の3分の1程度しかなくこの重力で長期間生活すれば、筋力低下どころか体中の機能に異変が起こってしまう可能性があります。
また、火星には磁場が存在しません。
これは何を意味するのか?
磁場は、太陽や宇宙からやって来る有害な宇宙線を防いでくれます。そんな磁場が無いことで容赦なく振り注ぐ宇宙線(放射線)で火星の地表は汚染されいます。

さらに、火星移住者が食糧を確保するために汚染された火星の土壌を使って作物を栽培しようとしても無理があるでしょう。
他、火星の近くには小惑星帯があり、そこからやって来て火星に落下する隕石の数は地球以上だと考えられます。
もちろん、大気が十分に厚ければ、地球のように大気摩擦で隕石のほとんどが地表に到達するまでに燃え尽きるでしょう。
しかし、火星の大気は地球の100分の1ほどで希薄のモノで、多くの隕石が燃え尽きず地表に落下することでしょう!?

「Image Credit:火星に点在する隕石落下痕(Wikipediaより)」
つまり、火星移住者は、頻繁に降って来る隕石の恐怖にも怯えながら生活しないといけないワケです。

火星地球化(テラフォーミング)は無理!とNASAが公式見解

スペースX社のC.E.O.イーロン・マスク氏は、人類を火星に送るために計画を進めています。
そんなイーロン・マスク氏が火星を目指す理由の1つとして語っていることが「火星は人々に夢を与えてくれる。」で、彼はNASAよりも早く2020年代までに火星に人類を送り、今後は火星を人が住める植民地化していく計画だと言っており、太陽系の天体で最も地球の環境に近い火星を、もっと地球環境に近づける「火星テラフォーミング」する事の夢も語っています。

ですが、前記もしましたが、いくら火星は地球に似ているからと言っても似ているのはほんの少しだけで、実際の火星は人類の植民を拒絶する無慈悲な環境下にあります。

現在考えられている火星のテラフォーミング方法は、火星の極地方に眠る氷と二酸化炭素を溶かし気化させ乾いた大地を水で溢れさせ、同時に薄い大気を人間が住める厚い大気圧に改造するというモノ。

しかし、この構想に疑問を投げかけたのがあのNASAで「現在の科学・テクノロジーでは火星のテラフォーミングは不可能」と発表しました。
NASAの発表によりと、火星に埋蔵された二酸化炭素は、火星の大気を厚くし冷えた大地を暖められるほど十分な量が含まれておらず、また、せっかく人工的に造り出した大気層も火星の低い重力では留めて置くことが出来ず、宇宙空間に流失してしまう恐れがあると言います。

「Image Credit:NASA」
ちなみに上図はNASAが発表した、火星の大地を暖めるために必要な温室効果ガスは地球が100%だとすると火星には0.6%しか無いという事を表しています。
つまり、火星に埋蔵されている温室効果ガスだけでは、とてもテラフォーミングは無理という事になるワケです。
また他にも火星をテラフォーミング出来ない理由があり、例えば火星の低重力もそのひとつで、火星の重力は地球の3分の1程度しかありませんので、人がこの低い重力化で長期間生活すると身体機能に著しく悪影響が出てしまう事が懸念されます。

そして、もっと重大なのが磁場の問題。
磁場の存在しない火星で、容赦なく降り注ぐ生物にとって有害な宇宙線(放射線)をどうやって防ぐのか?
これはとてつもなく大きな問題点であって、これをクリアしないととても火星で生活することなんて出来ないでしょう。

このような火星の問題点。火星移住計画を考えている人たちは、もちろんこの事はわかっていることと思います。
果たして、NASAでさえ無理と言っているこの計画を、どうやって進めて行くのでしょうか?
今後の展開が楽しみなところです。
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