地球から一番近いブラックホールが発見されたとして発表されたのは2022年10月の事でした。
そのブラックホールは、地球からの距離は約1,600光年。それを天文学的な距離で表現すると、家の裏庭くらいの場所にあるブラックホールなんだそうです。
しかし、それから一年足らずで距離が一気に短くなる発見があり、何と!わずか150光年先に新たなブラックホール候補が見つかったとの情報が。
それが本当だとしたら、1,600光年が”裏庭”の距離なら、150光年はどれほどまで距離が縮まる事になるのでしょうか?
つい先日まで裏庭にあるブラックホールが一番近かった
2022年の中盤まで、地球から一番近いブラックホールだとされていたのは「いっかくじゅう座」にあるブラックホールで、地球からの距離は約4,700光年でした。しかし、そこから一気に3,000光年以上距離を縮め、「へびつかい座」方向約1,560光年の距離に新たなブラックホールが見つかったと話題になったのは2022年10月でした。
それは「ガイアBH1」と呼ばれる質量が太陽の10倍ほどある恒星質量ブラックホールです。
「Image Credit:ブラックホール「ガイアBH1」の想像図(ESA/Gaia/DPACより)」
この1,560光年という距離。秒速30万キロで進む光の速さで1,560年もかかる距離と考えるととてつもなく遠いと思いますが、広大過ぎる宇宙においてはこの距離はとても近く、例えるなら「家の裏庭」ほどの距離と言えるそうなんです。
ヒアデス散開星団に見つかった驚愕的な近距離にあるブラックホール
「ガイアBH1」が地球に一番近いブラックホールと発見発表のおよそ1年後。その距離はさらに一気に縮まり、何と!地球からわずか150光年という距離に新たなブラックホール候補が見つかったとの事。それは、冬の代表的星座として有名なオリオン座に隣接する「おうし座」の赤い1等星アルデバランのすぐ近くにあるヒアデス散開星団の中に見つかったと言います。
「Image Credit:Yahoo!きっずJAPAN」
ヒアデス散開星団は太陽系に最も近い散開星団で、肉眼でも見る事が出来る星団と知られ、観測条件が良ければ10~12個程の星を見る事が出来ます。
「Image Credit:ヒアデス散開星団(EarthSky)」
しかもヒアデス散開星団に見つかったブラックホール候補は1つではなく複数個(2~3個)ある可能性があるとの事で、いずれも小型のブラックホールでおそらくは恒星質量ブラックホールではないか?と推測され、前回発見されたとされる1,560光年先にある「ガイアBH1」が”裏庭”の距離であれば、150光年先にあるヒアデス散開星団のブラックホールは「家の玄関先」の距離と言えるのかも知れません。
150光年先のブラックホールは発見ではなく示唆だった
光さえも脱出不可能と言われるブラックホール。そのため目視による探索は極めて困難。すなわち”目に見えない天体”それがブラックホールなのですが、今回の発見も実際にブラックホールの存在を確認したワケではなく、コンピューターシミュレーションの数値計算結果によってその可能性が出て来たというのが正しいようです。「Image Credit:ブラックホールのイメージ図(Wikipediaより)」
ただ、このシュミレーションを基に、さらに観測を進めていけば実際に発見出来る日が近いかも知れませんし、逆に間違いだったという事も考えられます。
また、これも別のシュミレーション結果ですが、私たちの太陽系がある銀河系(天の川銀河)には、最低でも1億個のブラックホールが存在すると示唆されています。となると、今回の研究結果が正しければ150光年よりももっと近い距離にブラックホールが存在する可能性が出て来るかも知れません。
疑問)もし150光年先のブラックホールが本当だったとしたら?
今のところシミュレーションの数値計算結果によって導き出された超近距離ブラックホール存在の可能性ですが、もしこの結果が正しく、実際にヒアデス散開星団に小型のブラックホールの存在が確認された場合、ひとつの疑問点が残ります。それは150光年という”玄関先”ほどと言ってもよい距離にあるブラックホールの誕生の際、至近距離にある太陽系に影響はなかったのか?という事です。
つまり、太陽系46億年の歴史のどこかで、ここまで近い距離ブラックホールが誕生していた場合、超新星爆発という星の重力崩壊に、太陽系が巻き込まれ何らかの被害を受けていなかったのか?
現時点ではそのような被害の痕跡は見つかっていませんし、もし数十億年前にヒアデス散開星団でブラックホール誕生に繋がる超新星爆発が起こっていたとしても、その頃は現在と違い太陽系とヒアデス散開星団の位置関係はもっと距離があったのかも知れません。
いずれにしても、超新星爆発による壊滅的な被害は数十光年先まで及ぶと考えられており、100光年以上離れていても少なからず大きな影響が出ていた事が考えられます。
今後、今回のシミュレーション結果が正しい事が証明され、ヒアデス散開星団のブラックホールが、太陽系さらには地球の歴史のどこかで誕生していたとするならば、その頃の地層を調べてみれば、何らかの証拠と成果が得られるかも知れません。