何も変わらず毎日、私たちの頭上に現れ光と熱の恵みを与えてくれている太陽。それはあまりにも当たり前で永遠に変わらないと錯覚してしまいそうです。
ですが、「形あるものはいつか壊れる」という言葉があるように、太陽にも”いつか壊れる”運命が待っています。
つまり、太陽にもいずれ終わりの時がやって来て、地球もまた太陽と運命を共にする事になります。
そんな、いつかは最期の時を迎える太陽、そして地球がどうなるのか?を映し出すかのような天体が初観測され話題になっています。

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まずは知っておこう未来の太陽の運命

常に膨大なエネルギーを放出し続けている太陽。残念ながらそれが永遠に続くことはなく、いつかはエネルギーが尽きてしまいます。

「Image Credit:iStock」
太陽のエネルギー源となっているのが、太陽の中心部で起きている熱核融合反応です。
この核融合反応では、水素1gから7,000億kWhという凄まじいエネルギーが発生しており、その核融合によって光や熱等が生み出され宇宙空間に放出され続けています。

しかし、そんな太陽もいつまでもエネルギーを生み出し続けていられるワケはなく、いつかはそのエネルギーが尽きる時がやって来ます。
ただそれは、私たち人間レベルでの時間の流れ感覚で到底測れるモノではなく、遥か未来の話で太陽のエネルギーが尽きる(寿命)のはあと50億年程だと考えられています。

では、太陽のエネルギーが尽きるとどうなってしまうのでしょうか?
これまで人類が研究して来た星(恒星)の進化理論によると、寿命が末期状態になると太陽は少しずつ明るさを増しながら膨張を続け赤色巨星へと進化をして行きます。

「Image Credit:NASA
赤色巨星へと進化していった太陽の膨張が最大限に達するのは今から約76億年後だとされ、このときの太陽表面までの大きさは、現在の地球の公転軌道を20%程上回ると考えられ、明るさに至っては現在の3,000倍に達するとされています。
赤色巨星へと最大限に進化した太陽はその後、外層部のガスが質量放出によって宇宙空間に流れ出し、つには核融合反応が停止してしまいます。そのような状態になってしまった太陽は中心核(コア)だけが残った超高密度・超高温の天体である白色矮星となるとされ、その大きさは地球程度の大きさではないか?と考えられています。

「Image Credit:白色矮星になり地球サイズになった太陽の想像図(ESA/NASAより)」
こうして白色矮星となった太陽ですが、もう核融合反応を起こさないため気の遠くなるような時間をかけて冷えていき、ついには光をも放出しなくなった黒色矮星になると考えられています。
ちなみに白色矮星が黒色矮星となる年月は、宇宙の年齢である138億年でも足りないため、現時点では理論上仮想の天体であり実在はしていないとされています。

太陽と運命を共にする地球の末路

太陽はいずれ膨張をはじめ赤色巨星へと進化して行きますが、最終的にはその膨張は地球の公転軌道を超えるとされているため、地球は太陽に飲み込まれるか?その前に巨大な太陽の潮汐力で粉々に破壊されてしまうという運命が待ち受けているモノと考えられます。

「Image Credit:70億年後の太陽と地球の想像図(Wikipediaより)」
ですが、太陽は1億年に1%ずつ明るさを増しており、それに伴い温度も上昇を続け、その影響で地球は今の環境を維持出来なくなり、いずれは海の水が蒸発し、地球が太陽に飲み込まれるずっと前(5~10億年後)の地球は生命の住めない惑星に変貌してしまうと推測されています。
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太陽に飲み込まれる地球のシナリオに似た現象を初観測

ここまで、遠い未来に訪れるであろう太陽と地球の運命を解説して来ましたが、それを裏付けるかのような天文現象が初観測され話題になっています。
それは、地球から「わし座」方向約1万2,000光年にある「ZTF SLRN-2020」という恒星で起こっている現象。

「ZTF SLRN-2020」は私たちの太陽とほぼ同じ質量と考えられており、この恒星がわずか1週間ほどの短期間で、急激に明るさを増長(約100倍)させるという現象が観測されたそうです。
なお、「ZTF SLRN-2020」は連星(恒星が2つ以上ある恒星系)だとされており、当初は2つの恒星が接近した事により明るさを増したものと考えられていたのですが、観測を続けて行くと実際はそうではなく、「ZTF SLRN-2020」は恒星として末期の状態を迎えており、いわゆる赤色巨星へと進化している状態だと考えられ、光の増長の原因は「ZTF SLRN-2020」を取り巻く冷たくて暗い塵が恒星の光を遮った事で急激な光の変化が起こったモノと言う事がわかったそうです。

つまり、この現象が起こったシナリオは、赤色巨星と進化した「ZTF SLRN-2020」が従える惑星たちが恒星の持つ重力に耐え切れず崩壊し、残骸となった惑星を構成していた物質が塵となって恒星を取り巻き、最終的に惑星が恒星に飲み込まれる事で光度が増したのではないか?と考えられるそうです。

「Copyright ©:caltech All rights reserved.」
なお、恒星「ZTF SLRN-2020」の質量は太陽の0.8〜1.5倍で、飲み込まれた惑星は木星の1〜10倍のガス惑星だったのではないかと推定されるとの事で、遠い未来、太陽系でも起こるであろう現象とは少し違いますが、それでもこれまでは、赤色巨星が惑星を飲み込むという実態が良く判っていなかっただけに、今回の初観測は大きな成果だそうです。
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