先日、太陽の所有権を主張した女性が現れ実際に登記した事が話題になりましたが、ご承知のとおり太陽は誰の物でもありません。と言うより、そもそも太陽を一個人の所有物扱いする事自体が大きな間違いであり、私たち人間にとって太陽の存在はあまりにも強大過ぎてとても所有など出来るハズもなく、太陽の持つ巨大なポテンシャルを知ると、そんな考え方を改めざるを得ないのではないでしょうか。
そこでここでは、太陽が如何に巨大でそのエネルギーが強大なのかを、少しではありますが解説したいと思います。

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太陽系はほぼ太陽で出来ている

私たちが住む地球の大きさは直径12,742キロメートルです。それに対し太陽の大きさは直径約139万2,000キロメートルで地球の約109倍もあり、その大きさの差を具体的に例えると、地球を直径1メートルの玉だとすると、太陽の大きさは東京ドームほどの大きさになってしまうほど巨大なのです。

「Image Credit:Planet Compare
これだけでも太陽が如何に巨大なのかは理解出来ると思いますが、その質量の大きさを知るともっと驚愕し、何と!地球や他の惑星等を含めた太陽系の全質量の99.86%を太陽が占めており、その中で地球の占める質量の割合は0.0002%程しかなく、太陽系はほぼ太陽だけで出来ていると言っても過言ではないのです。

太陽が放出するエネルギー量は凄過ぎた!

太陽が1秒間に放出するエネルギーを私たち全人類が消費しようとした場合、約90万年もかかってしまう計算になるほど膨大過ぎる量です。そのうち太陽から地球が受けるエネルギー量は22億分の1程。それでも、この太陽エネルギーを100%変換出来たとした場合、全人類が消費する年間エネルギーをわずか45分でまかなうことができるという計算になります。

「Image Credit:iStock」

太陽が造ったエネルギーが地球に届くまでは気の遠くなる年月が必要だった!

太陽から地球までの距離は約1億5,000万キロあり、太陽から放たれた光子が地球に届くまでは8分20秒かかっていますが、この熱を含んだ光子は太陽の中心部で起こっている熱核融合で生成され、これが太陽の内部を伝って太陽表面に届くまでは約17万年という気の遠くなる年月が必要となり、そこから約8分かけて地球まで送られて来ます。


「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」
でも何故、エネルギー伝達にそれほどの時間がかかってしまうのでしょうか?
その原因は、太陽の持つ凄まじい重力と内部密度にあり、中心核で生成された高エネルギーの光子はこれらに阻まれ、少しずつ外層部へ運ばれるためだと考えられています。
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太陽の表面もスケールがデカ過ぎた!

一個人が所有権を主張するには太陽のスケールはあまりにも大き過ぎます。それがひと目でわかるのが、直接観測出来る太陽の表面(光球)で起こっている事ではないでしょうか?!

例えば、太陽表面から噴き出す炎のようなガスの帯「プロミネンス(紅炎)」。これは太陽表面から飛び出す磁力線に沿って5,000度~10,000度のプラズマガスが数万キロの高さまで噴き上がり、それは地球を何個も飲み込む程の大きさです。

「Image Credit:NASA」
また、太陽の表面に出来る小さな黒いシミ「黒点」は聞いた事があると思います。

「Image Credit:Eduardo Schaberger」
黒点は、太陽が活動的になる時に複雑な磁場が生じ、表面に磁力線が飛び出した場合に、その磁力線の出口が表面温度よりやや低くなる事で暗い黒点のように見える現象ですが、それは小さなシミなどではなく地球が何個も入ってしまうほど大きな”シミ”なのです。
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そして、太陽の大きさを知るうえで極め付きなのが、太陽表面に浮かび上がって来る小さな粒模様「粒状班」です。
粒状班とは、太陽でのガスの対流で生じると考えられる粒状の斑点の事で、一つ一つが浮かんで来ては消える粒状班の寿命は10分未満程度だと言います。

「Image Credit:NASA」
上画像の赤枠の部分を拡大すると↓↓粒状班が浮かび上がって見えますが、この一粒の大きさは1,000キロもあり、一粒の中に日本列島(本州)がスッポリと入ってしまうほど巨大です。

「Image Credit:米国立太陽天文台」
仮に太陽の所有権が認められ土地を販売するとなれば、おそらくはこの粒状班が”土地”として該当するのでしょうが、だとしても購入した”土地”はあっという間に消えてしまうでしょうけど。

結局は個人が太陽を所有する事など不可能!

記事冒頭で太陽の所有権を主張した女性が現れたと紹介しましたが、結局のところこれは失敗に終わったようです。

宇宙条約」の第二条に「領有の禁止」という規定があり、「天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできない。」とありますが、これは国家に対しての禁止事項であり個人に対しての規定ではないため、太陽の所有権を主張した女性は、そこに目を付け太陽の土地を売りに出そうとしたらしいのですが、この記事で解説したように太陽はとてつもなく巨大ですがガスの塊であり常に流動しています。つまりそこに土地などは存在しないワケで、この主張はあまりにも無謀で無知としか言いようがありません。
ですが、一方で月や火星の土地は実際に販売されていますので、今後は、しっかりと土地のある太陽系天体へ所有権の主張が広がって来る可能性はあるかも知れませんね。
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