あのネイチャー誌に、興味深い情報が掲載されたそうです。
その情報とは、末期を迎え滅んだ星が他の星を食べる?(破壊)現象が確認されたとの事です。
つまりそれは、言わばゾンビのような星ですが正体は白色矮星なんだそうです。
天文に興味ある人なら、一度は聞いたことがあるであろう白色矮星という天体の名前だと思いますが、しかし、なかなかその詳しい情報を知らない人も多いのではないでしょうか?
星を破壊する白色矮星とはいったいどんな星なのでしょうか?そして白色矮星はどうやって生まれるのか?などについて調べてみました。
寿命を終えた恒星の末路~白色矮星
「ゾンビ星」という名前はあまり適切ではないかも知れませんが、今回ご紹介する天体は既に星としての寿命を終えているにも関わらず、近くにある天体を破壊し飲み込んでいると言います。まさにゾンビのような天体なため、そのような呼び方になってしまっていますが、その正体は白色矮星と呼ばれる高温で高密度な天体です。白色矮星とは、原子が壊れて大部分が電子が縮退した物質によって構成されている恒星の残骸で、高温で白っぽく輝く特異な天体のため白色矮星と呼ばれており、大きさは地球のような岩石惑星程のサイズだと考えられています。
「Image Credit:白色矮星の想像図(右上)(Giuseppe Parisi)」
白色矮星は恒星の残骸であると解説しましたが、元々は太陽程度、もしくは太陽質量の8倍以下の恒星が寿命を終えた事によって、恒星の外層が質量放出によって宇宙に流失し中心部に残った芯(中心核)だけになったしまった状態の天体です。
また、白色矮星は恒星のように高温の天体ですが、既に熱核融合反応は停止しており、その温度は永い時間を掛け少しずつ冷えて行き黒色矮星に変化すると考えられ、私たちの太陽もいつかはその寿命を終え白色矮星となり、そして黒色矮星へと変化していくモノと思われます。
(※補足:白色矮星が冷えて黒色矮星になるために必要な時間は、宇宙年齢よりも長いと考えられており、現在の宇宙に黒色矮星は存在していないモノと思われるため、今のところ黒色矮星は仮説上の天体と言う事になります。)
なお、白色矮星の表面温度は非常に高温で20万度程あると推定され、その重力も強大なモノであると考えらています。
惑星を破壊し飲み込むゾンビ星の正体は白色矮星だった!
2015年の「ネイチャー」誌に掲載された論文に、地球から「おとめ座」方向に約570光年離れた天体で奇妙な現象が見つかったとの報告があり、その天体は白色矮星の周りをわずか4.5~4.9時間という高速で公転しており、また、白色矮星のまわりに惑星の破片や小惑星といった微小な天体が強力な重力場によって破壊され、白色矮星の大気に飲み込まれて行く様子が観測出来たと言います。「Image Credit:白色矮星の重力で惑星が破壊される様子(ILLUSTRATION BY MARK A. GARLICK)」
白色矮星の大気は通常、軽元素の水素とヘリウムだけで構成されているのですが、一部の白色矮星の大気中には、マグネシウムやケイ素、アルミニウム等の比較的重い元素が存在していることが判明しており、それが何故白色矮星の大気に含まれているのかは謎でした。しかし、今回、白色矮星に飲み込まれる物質を観測出来た事で、それらの元素が白色矮星の大気に供給されているのではないか?との推測が出来るだと言います。
なお、白色矮星が物質を取り込んだ事でそれがエネルギー源になるワケではなく、あくまでも大気に供給されるだけで白色矮星はそのまま冷え行く運命あると考えられています。
太陽系に近いゾンビ星は存在するのか?
星々を粉砕し取り込んでしまう事もあると考えられている白色矮星ですが、太陽系の近くにあったりはしないのでしょうか?実は意外と近くに白色矮星は存在しており、それは太陽系から約8.6光年離れた「おおいぬ座」のシリウスにあります。
シリウスは全天で最も明るい恒星(冬の大三角の一角)と知られていますが、この星は連星を成しており明るく輝く星がシリウスA(マイナス1.5等級)。
そしてもう一つが伴星のシリウスBでこのシリウスBおそが白色矮星です。
「Image Credit:Wikipedia」
シリウスBが太陽系に近いからと言っても、それが地球に影響を及ぼすワケではないのですが、シリウスBの質量は太陽とほとんど同じなのに対し明るさがシリウスAの10,000分の1しかない事と、明るく輝くシリウスAに邪魔をされる事で、シリウスBの観測は極めて難しい状態になっています。
それでもシリウスBの観測は行われ様々な事が判明しており、表面温度は太陽より高温(約6,000度)の8,000度もあり大きさは地球と同等で、B密度は超圧縮され鉄の15,000倍以上もあり、この超高密度により強力な重力場が発生している事も判明しています。