約1兆円もの巨額を投じて開発された「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(略称:JWST)」。
2022年7月の運用開始からその性能を発揮し、私たちに宇宙の新たなる姿を鮮明な画像と共に届けてくれています。
そんなジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が最高画質で撮影した「わし星雲」の「創造の柱」があまりにも美しく大きな話題になっています。
でも、この天体がどんな天体なのか?良くわからない人も多いかと思いのではないでしょうか?
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」が美し過ぎる
地球から見て「へびつかい座」の方向約6,500光年の距離に「わし星雲(M16)」にガスと塵で出来た分子雲は、1995年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影し、そのそそり立つ壮麗な3本の柱が神秘的に見える事から「創造の柱(Pillars of Creation)」と名付けられました。「Image Credit:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」(Wikipediaより)」
そんな「創造の柱」に焦点を合わせたのが運用を開始したばかりのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」も鮮明で美しいのですが、新たにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」はそれを遥かに凌駕するモノでした。
「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」(NASA,ESA,CSA,STScIより)」
上画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)を使って撮影された画像をわかりやすく着色・加工したものですが、この分子雲が非常に美しく捉えられています。
「創造の柱」の分子雲は冷たいガスと塵が大量に集まって出来ており、密度が高まった部分は自身の重力で崩壊し、そこから新しい星が形成されている星の誕生の場となっている事もあり、分子雲の周りに新しく誕生した星(恒星)たちが光輝いている事がハッキリわかるかと思います。
なお、柱の先端部分に赤く輝いている領域が確認出来ますが、これは分子雲の中で新しい星が形成途中にあると考えられており、形成途中の星から放出されたガスのジェットが分子雲と衝突し、励起した水素分子から放射された赤外線が赤く輝いて見えていると言います。
「創造の柱」はどこにあるの?
「創造の柱」がある「へびつかい座」は北半球で見える星座で、真夏に南東方向の空に広がって見える大きな星座です。ただ大きな星座とは言え「へびつかい座」はそれほどメジャーな星座ではないため、この星座を見つけるにはメジャーで夏の代表的な星座である「さそり座」を目印にするち見つけやすいと思います。
「さそり座」には明るく赤い星である一等星のアンタレスがありますので、このアンタレスが「へびつかい座」の南側に位置しますので、そこから東方向に見て行けば「へびつかい座」がわかるかと思います。
そして肝心の「創造の柱」がある「わし星雲(M16)」は、「へびつかい座」の中央部最下部に位置しています。
「Image Credit:星座図鑑」
「わし星雲」は散開星団と散光星雲の複合した天体で、そのほぼ中央部にあるのが「創造の柱」ですが、市販の天体望遠鏡でもこの星雲を観測する事は可能ですが、「創造の柱」を確認するとなるとかなり高性能な望遠鏡が必要なようです。
「Image Credit:「わし星雲」中央部に「創造の柱」が見える(Wikipediaより)」
「創造の柱」は既に消滅している!?
「わし星雲」の中にある「創造の柱」はかなり大きな天体で、一番左側の最も大きな”柱”は根元から先端まで4光年程あるとされています。しかしこの「創造の柱」は現時点で撮影する事は出来、地球から約6,500光年離れているため私たちが今見ている「創造の柱」は6,500年前の姿という事になるのですが、実は、私たちが今存在するリアルタイムな時間ではもう「創造の柱」は存在していないのではないかと示唆されています。
これだけ星やガスが密集している「わし星雲」の領域には、大質量の恒星も多く存在しており、その中には超新星爆発を起こしている可能性がある恒星もあり、おそらくは6,000年前に超新星爆発が起こり、その爆発に巻き込まれた「創造の柱」は崩壊してしまっている可能性があると考えられています。
「Image Credit:iStock」
つまり、6,000年前の超新星爆発で「創造の柱」が破壊されてしまっているのであれば、あと500年はあの形状が見られると考えられますが、ただ「創造の柱」自体もめまぐるしく変化している事もあり、今の状態が儚いながらも最も美しい姿なのかも知れません。