近年、太陽系外惑星探査で大きな注目を浴びている恒星・赤色矮星ですが、この恒星を観測する事でいくつもの地球に似た系外惑星が見つかっており生命存在の期待も高まって来ています。

しかし、現時点では地球に似た惑星は見つかってはいても、そこに生命が居るかどうかまではわかっておらず、今後の詳しい観測調査で明らかになって来るモノと思いますが、ここに来てそんな期待を打ち砕くような研究結果が発表され、今後の観測に影響を与えるかも知れないと危惧されています。

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生命探索に期待が持たれる赤色矮星

赤色矮星とは、私たちの太陽のような主系列星に分類される恒星のひとつで、表面温度が摂氏4,000度以下の低温で質量は太陽の1/3程度以下の小型で暗い恒星の事で、地球からは肉眼ではほとんど見る事が出来ない天体です。

「Image Credit:太陽(左)と赤色矮星(右)の大きさ比較例(Wikipediaより)」
赤色矮星は表面温度が低いため赤く見えるため、星の中心部で起こる熱融合反応のスピードも遅いため代謝が低い事もあり恒星としての寿命も長く、太陽の寿命がおよそ100億年なのに対し赤色矮星は数百年もの寿命があると考えられています。

そんな赤色矮星ですが、近年この恒星が太陽系外惑星探査にうってつけだとしてスポットライトが当たり、赤色矮星を中心に系外惑星の発見、及び地球に似た惑星惑星の探査に力が注がれています。
でも何故、小さくて温度の低い赤色矮星に生命探査の目が向けられているのでしょうか?

その最も大きな理由が、赤色矮星が惑星を発見しやすい事にあります。
何故なら、赤色矮星の質量が小さい事で周りにある惑星も主星(赤色矮星)の近くを公転するため比較的に発見が容易になって来る事が挙げられます。
現在、系外惑星の探査に広く用いられているのが「トランジット分光法(トランジット法)」と呼ばれる探索方法で、系外惑星が主星の前を通過した時に起こる、わずかな主星の減光を検出する事で惑星を発見する事が出来るという方法です。
【トランジット法の解説動画(Credit: ESA)】


「Copyright ©:ESA Science & Technology All rights reserved.」
例えば、太陽のような恒星で系外惑星を探索する場合において、生命が存在する可能性のある惑星は主星から遠く離れているため(太陽→地球の距離は約1億5,000万キロ)、トランジット法を用いても主星の減光はほとんど検出出来ず、尚且つ惑星が主星の前を横切る確率が低いのに対し、赤色矮星なら惑星との距離が近いため減光も大きく、また惑星の公転周期も短いため短期間(数日~数週間)で発見出来るとというメリットがあります。
さらに、トランジット法を用い減光を観測する事で惑星の大気の有無やその大気組成も分析する事が出来るため、赤色矮星を探索する事が生命探査に適していると考えられている事もそのひとつなのです。
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実際に見つかった生命存在が有力な赤色矮星に属する系外惑星

これまでトランジット法を使った赤色矮星の系外惑星探査で、いくつもの地球型惑星が発見されており、その中には生命が存在する可能性が高いと思われる惑星もあり、ここでは特に有力視されている系外惑星候補を2つ程紹介したいと思います。

最も地球に近い生命が居る可能性のある候補「ティーガーデン星」

まず一例目は、地球からわずか12.5光年という距離にある太陽質量10%程の赤色矮星「ティーガーデン星」です。
ティーガーデン星の表面温度は摂氏約2,700度と比較的低温の恒星で大きさはほぼ木星と同じサイズと考えられており、この星のハビタブルゾーンに2つの地球型惑星(ティーガーデンb、c)が見つかっています。

「Copyright ©:Universität Göttingen All rights reserved.」
ティーガーデン星で特質すべき事は、多くの赤色矮星は頻繁にフレアを起こす閃光星で生命の存在には厳しい環境とされるのに対し、ティーガーデン星はほとんどフレアが観測されていない静かで安定した恒星であり、またティーガーデン星の年齢も80億歳前後である事から、この条件が生命が進化するのに有利なのではないか?と考えられています。

7つもの地球型惑星が見つかった「トラピスト1」

地球から約40光年の距離にある赤色矮星「トラピスト1」は、表面温度が摂氏約2,500度とかなり低温の恒星で質量も太陽の太陽の約9%と小さく暗い天体です。
しかしこの恒星には、現時点で7つもの地球型惑星が見つかっており、そのうち3つはハビタブルゾーンに位置する惑星ではないかと考えられています。

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」
「トラピスト1」の年齢は「ティーガーデン星」と比べるとかなり若く20億歳前後ではないかと考えられており、強いフレアも確認されている事から生命存在の可能性は少し低くなるものの、やはり3つものハビタブル惑星があるという事は期待値も上がり、今後の調査が楽しみな天体である事は確かです。

赤色矮星に属する惑星は生命にとって条件が悪い?

カンザス大学の研究チームが、地球から約66光年離れた位置にある赤色矮星「GJ1252」を公転する惑星を調べたところ大気が存在しておらず、その原因は惑星が主星(赤色矮星)に近い軌道で周回している事で、主星で起こる強力はフレアの影響で大気が維持出来ず高温(摂氏1,200度以上)に達している事が判明したとの事です。

前記もしましたが、赤色矮星の特徴は強力な爆発現象「フレア」が表面で発生しやすい、非常に活発なタイプの恒星という事がわかっており、このフレアは惑星の大気を吹き飛ばすのに十分な威力を持っていると考えられ、現在は静かな活動をしているとされる「ティーガーデン星」もかつては激しいフレア現象が起こっていたとすれば、やはり生命が進化出来る程の環境を持った惑星は存在しないと考えても仕方のない事かも知れません。

「Image Credit:赤色矮星のフレアが惑星の大気を吹き飛ばす様子の想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
この研究結果で赤色矮星には生命が居ないと断言する事は出来ませんが、いずれにせよひとつの事実として受け止めれば、少なからず今後の系外惑星探査に影響が出て来る事なのかも知れません。
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