近年の宇宙における観測技術向上によって、恒星の重力に縛られていない「自由浮遊惑星」と思しき天体が複数見つかっています。

自由浮遊惑星は、恒星のように自ら光を放たないため発見する事は極めて難しいとされているのですが、このような天体をどのようにして見つけ出すのか?
また見つかってはみたものの、自由浮遊惑星は何故存在するのか?そのルーツはどうなっているのか?そもそも浮遊惑星に生命存在の可能性はあるのか?気になるところです。

Sponsored Link

自由浮遊惑星とは?

浮遊惑星とは、私たちの地球のように主星(太陽)の重力に束縛されず、自由に宇宙空間を漂う惑星サイズの天体の事を指します。

「Image Credit:自由浮遊惑星のイメージ図(Wikipediaより)」
どの恒星系にも属さず自由に宇宙を放浪する自由浮遊惑星。別名を”はぐれ惑星”とも呼ばれるこの天体は、昔から理論上は存在されるとして度々SF小説等にも登場していたのですが、実際にこのような天体が見つかるようになったのは近年になってからで、現時点(2023年)で100個近い自由浮遊惑星が見つかっています。
しかしながら自由浮遊惑星はまだ謎が多く、現時点で見つかっている天体のほとんどは浮遊惑星として確定出来るモノではなく、あくまでも”候補”として発見されているのだと言います。

自由浮遊惑星は何故宇宙を浮遊しているのか?

私たちの地球のように主星(太陽)を公転する惑星は、惑星の形成過程で周囲の天体の重力と相互作用が影響し、徐々に主星である恒星を公転する軌道に落ち着いていくと考えられていますが、浮遊惑星の場合、原因は定かではないですが、重力による天体同士の相互関係が乱れた事が原因で主星の軌道から弾き出され、宇宙空間を浮遊する天体になってしまったのではないか?とされています。
Sponsored Link

自由浮遊惑星はどうやって見つけるのか?

恒星のように自ら光を放たない自由浮遊惑星は、通常の観測で発見する事は極めて困難。しかし近年では浮遊惑星と同じように光を放たない太陽系外惑星も多数発見されており、これらは特殊な観測法(ドップラー法トランジット法等)を駆使する事で発見に至っており、浮遊惑星もまた特殊な観測方法を使う事で発見されています。

それが重力マイクロレンズ法と呼ばれる観測方法で、対象天体の背後にある遠い恒星を観測する事で、対象天体の影響を受けその恒星がより明るく見える特性を利用した間接的観測方法のひとつです。

「Copyright ©:NASA Video All rights reserved.」
現在の観測技術では、重力マイクロレンズ法が自由浮遊惑星を発見する唯一の方法とされていますが、この手法の欠点は対象天体の背後に恒星等の明るい天体が無くてはならない事。すなわち、ある意味で偶然的な要素が含まれている事になり、それほど多くの自由浮遊惑星を発見出来るとは限らないようです。
Sponsored Link

地球サイズの自由浮遊惑星も発見されている

これまで発見されている自由浮遊惑星は木星質量サイズの巨大惑星でしたが、重力マイクロレンズ法の観測によって、2個の地球と同じぐらいの質量をもつと考えられる自由浮遊惑星候補が発見されています。

「Image Credit:地球サイズの自由浮遊惑星のイメージ図(NASA’s Goddard Space Flight Centerより)」
”地球サイズ”の浮遊惑星と聞くと、ついそこには生命が居るのかも?等と考えてしまいそうですが、浮遊惑星が漂う宇宙空間は暗くて冷たい領域であり、普通に考えれば生命等存在し得ないと言えるでしょう。
しかしある科学者は、冷たい宇宙空間であっても惑星そのものが持つ重力によって放射熱が発生し、凍らずに大気を維持出来る可能性があるのでは?と示唆しています。

「Image Credit:pixabay」
また、浮遊惑星に生命は存在になくてもその惑星は巨大な衛星を従えていた場合、衛星が主星(浮遊惑星)を楕円軌道で公転していたとすれば、強力な潮汐力が発生し衛星内部に摩擦熱が発生し、条件さえ整えば水が豊富な生命に満ちた天体が生まれている可能性があるかも知れません。

銀河系には1兆個以上の自由浮遊惑星が存在する可能性

近年の観測研究によると、銀河系(天の川銀河)には、地球のように恒星を公転する惑星より、自由浮遊惑星のような”はぐれ惑星”の方が多く存在している可能性が高いとされており、その数は1兆個を超えるのではないかと予測され、しかも地球サイズの浮遊惑星もかなり多く存在している可能性があると考えられています。

しかし、現時点では自由浮遊惑星を観測する事は極めて困難。
そんな中、2020年代中に浮遊惑星を観測する事も可能な新型宇宙望遠鏡が打ち上げられるとの事。
その宇宙望遠鏡の名は「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」。
これは国際協力(日本も参加)のもとで進められているNASA主体の広視野近赤外線サーベイ宇宙望遠鏡で、ハッブル宇宙望遠鏡の計画実現に貢献したアメリカの女性天文学者ナンシー・グレース・ローマン氏から命名されています。

「Image Credit:ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(JAXAより)」
なお、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、普通の宇宙望遠鏡より浮遊惑星を観測する感度が10倍高いとされ、この宇宙望遠鏡の運用が始まれば、少なくとも400個以上の地球サイズの自由浮遊惑星発見が期待出来るとの事。それでも銀河系内に潜んでいる1兆個の浮遊惑星発見には遠く及びませんが。
Sponsored Link