2015年に冥王星に最接近し、詳細な観測を行った事で話題となった太陽系外縁天体探査機ニューホライズンズを覚えているでしょうか?
ニューホライズンズは、人類史上最も遠い天体に到達し観測する事に成功した無人探査機ですが、あれからだいぶ月日は流れましたが、地球から遠く離れながらも、今もなお探査を続けています。
ですが、冥王星の探査に成功した以降、あまりニューホライズンズの情報は流れて来ませんが、現在この探査機はどこにいてどんな探査を行っているのでしょうか?
少し気になったので調べて見ました。

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ニューホライズンスのこれまでの功績をおさらい

2006年1月にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げた太陽系外縁天体ニューホライズンズのメインのミッションは、これまで人類が訪れた事のない冥王星の探査でした。
それもそのハズ、地球から冥王星までは約48億キロも離れているため、地球から高性能な望遠鏡を使っても冥王星はボンヤリとしか見えません。

「Image Credit:ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた冥王星(左)と衛星カロン(右)(DR. R. ALBRECHT, ESA/ESO SPACE TELESCOPE EUROPEAN COORDINATING FACILITY; NASA)」
それが、打ち上げから約9年半後の2015年7月ニューホライズンズは、冥王星上空約12,500キロメートルまで最接近する事に成功し、約半年間、冥王星やその衛星等の詳しい調査を行い多大なる成果を挙げたのでした。

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「Image Credit:ニューホライズンズが撮影した冥王星(右)と衛星カロン(左)(NASA/JHUAPL/SwRI)」
冥王星上空から地表の詳細な画像のデータや大気分析を行ったニューホライズンズは、これまで冥王星の衛星で最も大きな「カロン」以外はほとんどわかっていませんでしたが、この探査によって残り4つの衛星の姿がハッキリと捕えることが出来たのも大きな成果でした。

「Image Credit:冥王星の4つの衛星。左からヒドラ・ニクス・ケルベロス・ステュクス(Wikipediaより)」
冥王星の探査を終えニューホライズンズが次に向かったのが、太陽系外縁部にあるエッジワース・カイパーベルトの更に深部へと進んで行きます。
ちなみにエッジワース・カイパーベルトとは、太陽系で最も外側にある惑星である海王星の外側に広く帯状に分布するとされる、小天体を中心とした天体群の総称の事を指し、地球から遠く離れている事もあり、調査がほとんど進んでいない謎に包まれている領域でもあります。

「Image Credit:自然科学研究機構 国立天文台」
そして次なる目標に選んだのが謎に包まれたエッジワース・カイパーベルトの領域にある「2014 MU69」と呼ばれる直径30キロほどの小惑星でした。
地球から約65億キロの距離にあるこの小惑星が探査目標に選ばれた理由は、ニューホライズンズの航路上、最も近い場所にあった事。つまり、「2014 MU69」の探査というよりニューホライズンズの軌道修正と速度調整を行うフライバイが目的でした。

「Image Credit:ニューホライズンズが撮影した小惑星「2014 MU69(アロコス)」NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Roman Tkachenko」
ニューホライズンズが小惑星「2014 MU69」(その後「アロコス」と命名)に対してフライバイを行ったのは2019年1月1日の事。大きさがわずか30キロメートルほどしかない小惑星を通過するのは一瞬の事でしたが、それでも出来る限りの観測を行ったニューホライズンズは、20カ月ほどかけて小惑星アロコスの観測データを地球に送信して来ました。
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ニューホライズンスの現在地

ニューホライズンズが小惑星「アロコス」でフライバイを行ってから約6年経過。その後もニューホライズンズは確実に地球から離れつつあり、現在(2024年)は、地球から約89億5,000万キロの位置を飛行中であり、この地点はおそらくエッジワース・カイパーベルトを抜けているのではないか?と考えられています。(現在の知見では、カイパーベルトは太陽から30~55au(45億~82億キロ)の範囲とされていています。)
すなわち、既にカイパーベルトを離れて太陽系の外へと飛行していると思われるニューホライズンズ。現在もこの探査機は運用中ですので、飛行ルート上に立ち寄る事が可能な天体が見つかれば、いつでもミッションを遂行できる状態にあり、現時点でNASAはニューホライズンズの観測対象天体を検討しているとの事です。
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カイパーベルトの外側でも新天体を発見!

現在、エッジワース・カイパーベルトの外側を飛行しているとされている探査機ニューホライズンズですが、カイパーベルトをはじめ太陽系外縁部は太陽から遠いため非常に暗い領域です。そのため地上からの観測でこの領域で新たな天体を発見する事は至難の業。そこで今、その場所を飛行しているニューホライズンズの出番!と言いたいところですが、残念ながらニューホライズンズに搭載されているカメラでは視野が狭過ぎるため、探査機単独で天体を発見する事は不可能に近いとされています。
そのため、地上の高性能望遠鏡でカイパーベルトやその外側を観測し、ニューホライズンズで観察できそうな天体の候補を探すという、言わば地上の望遠鏡と探査機の連携による新天体探索ミッションが行われ、地上の高性能望遠鏡としてニューホライズンズと連携を取っているのが日本の「すばる望遠鏡」だそうなのです。

「Image Credit:すばる望遠鏡(左)とニューホライズンズ(右)(国立天文台/Southwest Research Instituteより)」
この連携観測により、2020年~2023年の期間で239個の太陽系外縁天体を発見しており、そのうち11個はカイパーベルトの外側にある天体も含まれているとの事で、発見された11個の天体は70~90auの範囲という、距離にすると地球から100億キロ以上離れた場所にある天体だと言います。
これまでの推測によると、エッジワース・カイパーベルトの外側は天体がほとんど存在しない空間が広がっていると考えられて来ましたが、11個の天体が見つかった事により、カイパーベルトの先にはこれまで知られていなかった「天体群の谷間」があると考えられるそうなのです。
現時点では、見つかった11個の天体の詳細なデータはわからないようなのですが、これらのどれか一つにでもニューホライズンズが観測出来るようであれば、それは画期的な事であると同時に、太陽系形成の解明だけではなく、惑星形成のプロセスについて解明するヒントになるとの事です。
つまり、冥王星の探査を終えてその役目がほぼ終わったと思わているニューホライズンズも、まだまだ活躍の場が残っている可能性があり、その活躍次第では、遥か遠く太陽系外側の未知の世界を私たちに見せてくれるのかも知れません。
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