先日、木星の氷衛星探査ミッションが始動する事をお伝えしましたが、打ち上げも成功し木星系へと旅立っていった期待の木星系探査機「JUICE」ですが、今後、どんなスケジュールで探査を行うのでしょうか?
今回は、この木星氷衛星探査機「JUICE」がいつどの天体の調査を行い、どんな成果を出そうとしているのか?現時点において分かる範囲内でまとめてみました。

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世界初の木星氷衛星周回探査機「JUICE」

日本時間で2023年4月14日にギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられ、無事に木星へ向かう軌道に乗る事に成功した木星氷衛星探査機「JUICEJUpiter ICy moons Explorer)」

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木星に向かう軌道に乗ったとは言え直接木星に向かうのではなく、木星系軌道に乗るために複数回のスイングバイ(天体の重力を利用して加速・方法転換)実施(月→金星→地球→地球→木星)します。

「JUICE」ってどんな探査機なの?

「JUICE(ジュース)」はスイングバイを行いながら、これから8年かけて木星系に向かい、”木星氷衛星探査機”とあるように木星にある3つの氷衛星に特化した探査を行う予定になっています。

「Image Credit:NASA/JPL/DLR」
木星の3つの氷衛星とは、木星に近い順にエウロパ・ガニメデ・カリストの事で、これらの衛星に氷衛星ではないイオを加えると、かのガリレオ・ガリレイが発見した事で有名な「ガリレオ衛星」になります。
これらの探査に向かう「JUICE」は、欧州宇宙機関 (ESA) が主導となって開発された探査機で、国際協力で日本やアメリカも参加して建造され、世界初の氷衛星周回探査機として木星軌道に投入される事になります。

この「JUICE」の最大の特徴は、広げると大型バスを横に並べた位となる大型の太陽光パネルです。

「Image Credit:JAXA」
また「JUICE」には木星の氷衛星を軌道上から詳細に観測するための11もの機器が搭載されており、そのうち半分以上である6つの観測機器を日本が主な開発を担当しています。

木星氷衛星探査機「JUICE」に搭載された11の観測装置(以下、Wikipediaより抜粋)
※ 1~6までの観測機器を日本が担当。
  1. ガニメデレーザー高度計(GALA:GAnymede Laser Altimeter)
    ガニメデの軌道上からレーザーを照射し表面までの距離を測定することで、ガニメデの3次元形状とその変動を計測。
  2. 電波・プラズマ波動観測器(RPWI:Radio and Plasma Wave Investigations)
    木星磁気圏の構造・運動による氷衛星への影響を調べ、衛星の大気・電離圏及び氷の地殻層や地下の海の構造を解明する。
  3. プラズマ環境観測パッケージ(PEP:Particle Environment Package)
    木星や木星の衛星周辺を飛び交う 高速の中性粒子を直接計測。
  4. 可視分光映像カメラ(JANUS:Jobis, Amorum ac Natorum Undique Scrutator)
    可視13域の複数バンドのデータを得るカメラシステムで、主にガイニメデに対し計測を行い、地形や地質情報を取得。
  5. 磁場計測器(J-MAG:Magnetometer for JUICE)
    氷衛星の位置における磁場の方向と強度を計測。
  6. テラヘルツ分光計(SWISubmillimetre Wave Instrument)
    3つの氷衛星の大気成分や地表面構造を観測、また木星中層大気の化学と気象及び大気と磁気圏のカップリングプロセスを計測。
  7. 可視・近赤外撮像分光計(MAJIS:Moons And Jupiter Imaging Spectrometer)
  8. 紫外線撮像分光計(UVS:UV Imaging Spectrograph)
  9. レーダーサウンダ(RIME:Radar for Icy Moons Exploration)
  10. 重力観測機(3GM:Gravity and Geophysics of Jupiter and Galilean Moons)
  11. 惑星電波干渉計およびドップラー実験装置(PRIDE:Planetary Radio Interferometer and Doppler Experiment)
これらの観測機器を駆使し、木星系における太陽系起源の謎解明に挑み、これまで詳細な観測が行われていなかった3つの氷衛星の詳細なデータ収集、またこれらの衛星に本当に海が存在するのか?そして海が存在するのであれば生命存在の痕跡を見つける事が出来るのか?「JUICE」は非常に重要な役目を担って木星系への旅路についています。
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「JUICE」の探査スケジュール

予定では2031年7月に木星系に到着する「JUICE」ですが、その後約4年間に渡り木星軌道を周回しながら氷衛星の探査を行う事になっています。

「Image Credit:JAXA」
この探査において主な調査対象となっている衛星はガニメデですが、3つの氷衛星の中で最も生命存在の可能性が高いのはエウロパなのですが、エウロパには今後、この衛星に特化した探査機が送られる事になっていますので、今回はガニメデに焦点が置かれているという事のようです。ちなみにもう1つの氷衛星であるカリストについては、もちろん探査は行われますが、エウロパやガニメデに比べると生命の可能性は低いと思われ、重点的な調査行われないのではないでしょうか。

いずれにせよ、4年という長い期間木星系に留まって探査を行う「JUICE」の成果はかなり期待出来るモノであり、地球外生命存在の確証を得るのも間違いないかも知れません。
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