メディアでも何度も取り上げられている事もあり、もしご存じの方も多いと思います。
先日、火星に無事着陸を成功させた最新鋭の「火星探査機パーサヴィアランス」。
その火星地表への着陸シーンはあまりにも鮮明で、そこが他の惑星での出来事なのか?と錯覚するほどリアルなモノでした。
ですが、メディアが報じたのはパーサヴィアランスの着陸シーンのみがほとんどで、実際、この探査機がこれからどのようなミッションを行うのか?あまり伝えられていなかったのが少し残念でした。
最新鋭火星探査機の地表降下シーンのここがスゴイ!
まずは、何度も観た人は多いかとは思いますが、火星探査機パーサヴィアランスの火星降下の様子を捉えた映像を視聴してどのような感想を持たれたでしょうか?映像があまりにも鮮明なため思わず勘違いしてしまいそうですが、ここが火星ではなく地球のどこかではないか?という事ですが、間違いなく映像で写し出されているのは火星で起こっている光景であり、そんなパーサヴィアランスの着陸シーケンスが3段階で解説されています。
「Image Credit:パーサヴィアランスの着陸シーケンス(NASA / JPLより)」
① Take descent photos(降下中の画像)
まず、映像では降下用のパラシュートが開くシーンから始まり、無事にパラシュートが開いてゆっくりと降下を始めるパーサヴィアランス。
おそらく、パラシュートが開いた高度(上空約11キロ地点)の気温はマイナス100度は越えているでしょう。
そんな過酷な状況下で綺麗に開いてみせたパラシュートは、赤と白のデザインで、一見、何の変哲もないように見えますが、よく見ると何か統一性のない模様に見えないでしょうか?
「Image Credit:見事に開いたパーサヴィアランスの降下用パラシュート(Official NASA Videoより)」
実はこのパラシュートの模様は暗号化されたメッセージがデザインされており、Dare Mighty Thingsは「あえて強大なものに(挑もう)」というような意味のASCIIコードが描かれていると言います。
② Compare to orbital map(着陸地点への軌道の比較・調整)
そしてその後、大気圏突入の際に使用されたヒートシールド(耐熱シールド)の分離され地表に落ちて行くシーンも映っています。
「Image Credit:分離され落ちていく耐熱シールド(Official NASA Videoより)」
③ Divert if necessary(着陸目標までの迂回・調整を行いながら降下)
そして少しずつ降下し、いよいよ着陸という場面では、探査機本体であるロボット探査車のパーサビアランスが上空約20メートイル付近でスカイクレーンで吊るされながら、ゆっくりと地表に着地するシーンが映し出されています。
「Image Credit:実際にスカイクレーンで吊るされ着地するパーサビアランス(左)とそのイメージ図(右)(NASA/JPL-Caltechより)」
パラシュートは上空2キロ付近で切り離され、その後はスカイクレーンのエンジンを点火し噴射しバランスを取りながら地表へ向けゆっくりと降下します。
この時目に入るのが、スカイクレーンの噴射によって激しく巻き上がる砂煙り。まるで地球のどこかの砂地にでも降りるようなシーンにも見えたりしますが、そこはかつて水があったとされる「ジェゼロクレーター」です。
しかし、そこには水どころか?氷の欠片も見当たらない全くの乾いた土地。この巻き上がる砂煙りこそが、火星が水の無い乾いた不毛の惑星である事を現わしています。
● 参考動画: 【パーサヴィアランスの着陸イメージ動画】
パーサヴィアランスが着陸した場所とは?
今回、パーサヴィアランスが着陸した地点は火星の大シルチス台地に位置する直径約49キロにも及ぶジェゼロクレーター(北緯18.855度 東経77.519度)です。「Image Credit:ジェゼロクレーターの位置(Wikipediaより)」
このジェゼロクレーターはかつて豊富の水を湛えていたと考えられており、その証拠にここに水が流れ込んでいたと思われる三角州があったり、クレーター周辺には粘土鉱物も発見されており、ジェゼロクレーター自体も比較的緯度の低い場所にある事から、もし太古(約35億年前?)のジェゼロクレーターが巨大な湖であったとしたら、そこに生命の痕跡が残っているかも知れないという推測のもとパーサヴィアランスの着陸地点に選ばれて調査を行う事になっています。
パーサヴィアランスに与えられたミッションとは?
新しい火星探査ローバー・パーサヴィアランスには忍耐という意味があり、忍耐強く火星を調査し生命の痕跡を探すという大きな目的があります。パーサビアランスは小型車並みの大きさがあり、そこには様々な最新技術が積み込まれています。
「Image Credit:開発中のパーサヴィアランス(Wikipediaより)」
そんなパーサヴィアランスに与えられたミッションは大きく分けて4つ。
- 1.火星に過去生命が存在していたか?どうかを調査。
- 2.火星の土壌サンプルを採取。
- 3.火星有人探査・移民の準備(火星の大気から酸素を生成できるか?)ガジェットのテスト
- 4.小型ヘリの飛行(ドローン)→火星地図作製
1つは、火星の土壌サンプルの採取、そしてそれを地球に送り届けるサンプルリターン。
サンプルリターンは日本の「はやぶさ2」が成功を収めていますが、パーサヴィアランスはサンプルを試料管に入れて保管し、そして後に火星にやって来るサンプル回収着陸機(Sample Retrieval Lander)が試料管を回収し、火星軌道上を周回する地球帰還周回機(Earth Return Orbiter)に向けて打ち上げ、それをカプセルに入れて地球に向けて送り届けるという3段構えのシステムを計画していると言います。
「Image Credit:パーサヴィアランスが採取したサンプルを打ち上げるサンプル回収着陸機(NASA/JPL-Caltechより)」
そしてもう1つが、これも初めての試みで火星でドローンを飛ばすというモノで、パーサヴィアランスに搭載された小型のドローンの名前は「Ingenuity(インジェニュイティ)」。
「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
インジェニュイティの大きさはティッシュの箱程度(胴体部分)で重さは約1.8キロ。探査機本体であるパーサヴィアランスは地表をゆっくり移動して探査し視野が狭いのに対し、ドローンのインジェニュイティが飛び回る事でパーサヴィアランスの向かう方向を示したり、ドローン自体も搭載したカメラで火星の様々な様子を撮影する事が出来ます。
しかし、今回のドーロンでの飛行は初の試みであり、実際、地球の100分の1程度の大気しかない火星でちゃんと飛べるのか?また、地球の3分の1しかない重力の火星ではどんな飛行になるのか?さらには、緯度が低く火星でも比較的暖かい場所にあるジェゼロクレーターでもマイナス100度近い気温まで下がるため、この状態で飛行機能に問題はないのか?パーサヴィアランスの補助を行う以前にドローンが正しく機能するのか?
もし、飛行実験中に墜落してしまったら、このミッションはそこで終了してしまうでしょう。
ともかく課題が多いのは、試してみないとわからないのが現状のようです。