人類が最後に月面に降り立ったのは1972年12月。それから人類は一度も月面に降り立っていませんが、ようやくまた月面に立つ計画を実行し人類の宇宙進出への新たなる一歩を踏み出そうとしています。
それが、メディアでも大きく取り上げていますのでご存じの方も多いと思いますが、NASAの「アルテミス計画」です。

でも、人類が再び月面を目指すという事だけが注目されていますが、「アルテミス計画」の目的はそれだけではないんです。

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NASAが計画する「アルテミス計画」の概要

「アルテミス計画」の初期計画は、再び有人月面探査を実現する事にあります。
しかしこれはあくまでも初期の目的であり、最終的な目標は「人類の存在を太陽系全体へと広げられるようにする」ものだと言います。
つまり、前回の「アポロ計画」のようなミッションを再び実施するのではなく、これから人類が本格的に宇宙進出するための土台づくりが本当の目的になるとの事で、持続可能な駐留拠点を月面と月の軌道上に構築するという一大プロジェクトになるとの事です。

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」

現時点でわかる「アルテミス・プログラム」

半世紀前に行われたNASAの「アポロ計画」では人類を月面に立たせる事が最優先の計画でしたが、「アルテミス計画」でも再び人類を月面に送る目的もありますが、それだけではなくいくつかのプログラムが組み込まれそれを確実に実施する事にあります。

「Image Creditアルテミス計画ロゴ(NASAより)」
前回の「アポロ計画」では、アメリカが単独で実施したプログラムで、月面に降り立ったのもアメリカ人で軍人、そして白人のみでした。
ですが今回の「アルテミス計画」は、アメリカ中心ではありますが各国が協力(日本も参加)し、また宇宙飛行士は白人以外の人種、そして女性も月面に降り立つプログラムになっています。
ちなみに、アポロ計画はギリシャ神話の太陽神「アポロン」から取った計画名称でしたが、アルテミス計画の「アルテミス」はアポロンの双子の妹で「月の女神アルテミス」を由来にしていますので、名称からして女性の積極的な参加を見込んだ計画だとされています。

そして以下では、現時点(2022年)で判明している「アルテミス計画」の7つのプログラムを簡単にご紹介したいと思います。

アルテミス1:月まで往復する無人飛行試験

「アルテミス1」は記念すべきアルテミス計画の最初のミッションで、無人機による月往復の試験飛行となります。

「Image Credit:打ち上げを待つ初号機「アルテミス1」(NASAより)」
この「アルテミス1」は2022年秋に実施され、月周回軌道に到達し6日間の月周回後、地球帰還までの安全性を検証することが目的です。
なお、当機は無人ではありますがNASAと所縁の深いキャラクター、スヌーピーなどが搭乗すると言います。

「Image Credit:「アルテミス1」の計画概要図(NASAより)」

アルテミス2:有人による月往復飛行試験

「アルテミス2」は無人飛行試験から有人飛行試験へと移行。4名の宇宙飛行士が搭乗させて月までの往復飛行を2024年に実施(予定)します。

「Image Credit:「アルテミス2」の計画概要図(NASAより)」
このプログラムでは、行きに4日をかけ月を一周し、帰りも4日かけるという月往復弾丸ツアーになると言います。

「Image Credit:月を周回する有人宇宙船「オリオン」(NASAより)」

アルテミス3:いよいよ始動!有人月面着陸ミッション

そして「アルテミス3」で1972年のアポロ17号以来の有人月面着陸に挑みます。

「Image Credit:「アルテミス3」の計画概要図(NASAより)」
2025年に実施予定の「アルテミス3」では、4名の宇宙飛行士は月に向かい、うち2名は月の南極地域に着陸し最大で4回の船外活動を行い、約1週間月面に滞在したのち地球に帰還する計画になっています。

「Image Credit:月面で船外活動をする「アルテミス3」のクルー想像図(NASAより)」
なお、月面に着陸する2名の宇宙飛行士のうち1名は女性宇宙飛行士になるとの事です。
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アルテミス4:月周回軌道に宇宙ステーション建設へ

2027年に予定されているこのプログラムは人類の本格的な宇宙進出への足掛かりとなる一歩になり、小型の月軌道ゲートウェイを月周回軌道上まで運び設置、このとき4名の宇宙飛行士がこの設置ミッションに従事する事になっています。

「Image Credit:「アルテミス4」の計画概要図(NASAより)」
この月軌道ゲートウェイはNASAをはじめ欧州宇宙機関(ESA)、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、カナダ宇宙機関の4つが行う多国籍共同プロジェクトです。

「Image Credit:月軌道ゲートウェイの想像図(NASAより)」
なお、この月軌道ゲートウェイを月軌道まで運ぶのは、NASAが開発した新型大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」。

「Image Credit:Space Launch System(SLS)(NASAより)」
今後はこのSLSが宇宙開発を担う機体として活躍する事が期待されています。

アルテミス5~7:月面探査と宇宙ステーション建設の同時進行

2028年以降に予定されている3つのミッション「アルテミス5」「アルテミス6」「アルテミス7」は、月軌道ゲートウェイの拡張、そして月面の本格的探査に乗り出して行く予定になっています。

「Image Credit:拡張予定の月軌道ゲートウェイ(NASAより)」
この時、アポロ計画でも使用された月面車の投入を予定しており、宇宙服を着用して乗り込む与圧していない月面車の導入、そして日本のTOYOTAとJAXAが共同開発している有人与圧ローバー「ルナクルーザー」も導入し、月面基地建設にも着手して行く予定にもなっていると言います。

「Image Credit:月面車(左)とルナクルーザー(右)(NASAより)」

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」

「アルテミス計画」の終着点は有人火星探査

アルテミス計画は近い将来(2030年代)に計画されている有人火星探査への準備を整えて行く事もプログラムに組み込まれています。

「Image Credit:有人火星探査ミッション概要図(NASAより)」
アルテミス計画にはNASAや各国の参加もありますが、SpaceX社等の民間企業も積極的に参加する事になっており、火星へ向けたミッションも民間の協力のもと行われる予定になっています。
この計画についての詳細は現時点ではわかりませんが、ミッションが確定しているアルテミス1からアルテミス7までに、火星有人探査のフェーズが明らかになって来るものと思われます。
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