エレベーターに乗って簡単に宇宙に行ける時代がやって来る?!
以前もこのサイトでご紹介しましたが、これって、かなりSF的で空想上のおとぎ話のような話ですが実はこれが理論上は実現可能と言うのです。
これは実際に実現に向けて構想が組まれ、既に実験も行われている「宇宙(軌道)エレベーター建設計画」と呼ばれるモノで、実現出来れば本当にエレベーターに乗って宇宙に行けるらしいのです。
ですが、この宇宙(軌道)エレベーターって本当に実現出来るのでしょうか?
また、この壮大な建設事業にかかる費用や実現するとしたら完成予定はいつなのでしょうか?
気になるところです。
宇宙(軌道)エレベーターって何?
そもそも宇宙(軌道)エレベーターとはどんなモノなのでしょうか?「Image Credit:宇宙(軌道)エレベーター想像図(㈱大林組 季刊大林より)」
宇宙エレベーター協会(JSEA)が紹介しているこの構想を参考に説明すると。
まず、通常のエレベーターの目的は地上と高層建築物との上階の行き来を楽にするためであり、宇宙(軌道)エレベーターにおいてのエレベーターで高層建築物の上階に該当するのが、静止軌道と呼ばれる地球の赤道上空約36,000キロの領域にになります。
静止軌道は、地球の重力と自転による遠心力が同期している場所で、ここに人工衛星を投入すると上空に静止しているいるように見えることから静止軌道と呼ばれています。
「Image Credit:静止軌道のイメージ動画(Wikipediaより」
つまり、見かけ上にはなりますが、人工衛星の地球周回軌道が地球の自転と同じになっている事で、静止軌道上から地上を見下ろすと常に同じ場所の上空にいるということになり、現時点でこの特性を活かしている代表的な人工衛星が気象衛星で、我が国も気象衛星「ひまわり」を静止衛星軌道に投入する事で、常に日本上空の気象状況を観測する事が出来るワケです。
「Image Credit:静止軌道「ひまわり」のイメージ図(国土交通省 気象庁より」
そして今後、この静止軌道の特性を利用して地上にワイヤーを降し地上と宇宙を繋ぐエレベーターを造れないか?と考え出されたのが「宇宙(軌道)エレベーター構想」なワケです。
日本の企業(大林組)が具体的に考える宇宙(軌道)エレベーター構想
実は、宇宙(軌道)エレベーター建設構想を最も具体的に考えているのが日本で、その中でも大手ゼネコンの大林組が先進的な考えを打ち出しており、宇宙(軌道)エレベーターの建設は理論上可能であると考えられています。しかも、その構想がかなり現実を見据えており、総工費10挑円で2050年代には完成して運用を目指すとまで言っているほどです。
ちなみに、総工費10兆円と言うと途方もなく莫大な費用のように思えますが、国際宇宙ステーション(ISS)建設にかかった費用が約5兆円と言われていますので、個人的には10兆円は不可能な金額でないような気がしますが、それでも一企業が投資出来る金額ではありませんので、ISSのように各国が技術と資金を出し合い国際協力のもとプロジェクトに取り組めば実現可能になるかも知れません。
宇宙(軌道)エレベーターの仕組みとは
宇宙(軌道)エレベーターの起点は静止軌道上にある静止軌道ステーションにあり、そこから地上に向けて重力(内側へ引っ張るチカラ)が働いているためエレベーター・ケーブルを下ろす事が出来ます。と同時に、内側へ引っ張るチカラだけでは釣り合いが取れないため遠心力(外側へ引っ張るチカラ)に対してもケーブルを伸ばし、その先の延長線上に重りとなる構造物や小惑星などの質量のある物質を取り付け重力の釣り合いを取る計画になっています。
さらには、地上へ下ろすケーブルの途中に低軌道ステーションなどを設置することでケーブルの弛みや劣化などを防ぐ対策も行います。
「Image Credit:JSEA一般社団法人 宇宙エレベーター協会」
このように地上と宇宙を結ぶケーブルが繋がったら、昇降機を取り付け人や物資を運搬できる宇宙(軌道)エレベーターが完成するとされています。
非常に大きい宇宙(軌道)エレベーターのメリット
現在、人や物資を宇宙に運ぶには派手で、莫大な費用のかかるロケットを打ち上げなくてはならず、宇宙に運ぶ輸送コストは1キロあたり100~200万円ほどとかなりの高額になっています。「Image Credit:JAXA宇宙航空研究開発機構」
それでは、もし宇宙(軌道)エレベーターが実現したらこのコストはどうなるのでしょうか?
その場合、輸送コストは1キロあたり5千円~1万円ほどと試算されており、ロケット打ち上げとは比べ物にならない程のとんでもないコスト削減になるため、実現すれば海外旅行をする感覚で気軽に宇宙に行けるようになることは間違いないでしょう。
このように宇宙(軌道)エレベーターは、コスト面での大きなメリットがあると同時に他にも以下のような利点があるものと思われます。
【宇宙エレベーターがもたらす人類宇宙進出のメリット】
- 宇宙へのアクセスが簡単に!
一番のメリットと言っていいのが、人や物資を簡単に宇宙に運べるという事。
宇宙エレベーターのおかげで誰もが手軽に宇宙に行けるようになり、夢の宇宙がかなり身近なモノとなるでしょう。 - 宇宙産業の発達
宇宙エレベーターを利用し、宇宙旅行ビジネスや無重力を利用した新素材の開発等、様々な宇宙産業が発展する可能性。 - 宇宙移民が加速化?
今後の地球環境は、深刻な人口増加に悩ませられる時代がやって来るでしょう。
簡単に人や物資を運べる宇宙エレベーターなら、増え過ぎた人口を宇宙へ進出させる原動力になるかも知れません。 - 大気汚染の軽減
今後、宇宙開発が進むとロケット打ち上げによる大気汚染が深刻化する恐れがあります。
宇宙エレベーターならその心配もなく、クリーンでスマートな宇宙への扉が開かれるハズです。 - 資源・エネルギー問題の解決
宇宙には人類が使い切れないほどの莫大な資源やエネルギーが眠っています。
それを宇宙エレベーターを使って一気に解決。
豊かな人類の未来に役立つことが予想されます。
ガンダムの世界が描く未来の宇宙エレベーター時代
2007年~2009年にかけて放送された「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」をご存じでしょうか?このガンダム00は、まさに宇宙(軌道)エレベーターが実現された300年後の未来世界が描かれており、物語の時代背景は・・・
「Image Credit:機動戦士ガンダム00 公式サイト(MBSテレビ)より」
現在人類は石油や天然ガス等ど化石燃料に依存した文明を築いており、化石燃料無しでは生活すること出来ない状況にあります。
しかし、その化石燃料も無限に使えるワケでななく、そう遠くない将来には間違いなく枯渇してしまうとされており、ガンダム00ではそんな化石燃料が枯渇した時代に、それに代わるエネルギー源として宇宙太陽光発電システムの実用化に乗り出しているという設定で描かれています。
そしてその宇宙太陽光発電システムに絶対的に必要不可欠なのが宇宙(軌道)エレベーターなのです。
ガンダム00で登場する宇宙(軌道)エレベーターは、単に人や物資を宇宙に輸送する目的だけに造られてはおらず、このエレベーターを活用した太陽光発電も行っており、オービタルリング(軌道リング)と呼ばれる、宇宙エレベーターに繋がれた人工のリング(環)が設置され、このオービタルリングに太陽光集積パネルと発電システムを取り付ける事で、発電した電力を宇宙(軌道)エレベーターを通して地上に送電する仕組みが構築されているという設定になっているのです。
「Image Credit:週刊ガンダムパーフェクト・ファイル&機動戦士ガンダム00 300YEAR LATERより」
ガンダム00をご覧いただければおわかりになりますが、ここで描かれる宇宙(軌道)エレベーターはとてつもなく巨大な建造物で、地球の赤道を基準にアマゾン流域・アフリカ大陸・ソロモン諸島に合計3基建造されています。
人類の未来を見据えた非常にリアルな設定で描かれているガンダム00。
しかしリアルとは言え、実際の300年後にこれだけの巨大な宇宙(軌道)エレベーターを建造できるか?どうかは疑問が残りますが、それでもこのアニメを観れば宇宙(軌道)エレベーターの便利さと重要性が良くわかるように出来ています。
ただ、物語の根幹は宇宙(軌道)エレベーターの利権を巡る紛争(戦争)になっているのが少し残念ではあります。
課題山積み!宇宙(軌道)エレベーターは本当に実現できるのか?
実現可能とは言っても、それはあくまでも理論上の話であって本当に実現できるかどうかは様々な課題が山積みで、現在の技術ではかなり難しいと言わざるを得ません。大林組を始め多くの研究者たちが、既に実現に向けて動き出しており実験は行われていますが、それは簡易的な実験のみで実用化レベルには程遠い状況です。
そんな実用化には程遠いと思われる宇宙(軌道)エレベーター建設ですが、本当に実現するにはどのような課題をクリアしなくてはならないのでしょうか?
いくつか挙げてみました。
【宇宙(軌道)エレベーター実現のための課題】
- エレベーター・ケーブルが造れない?
上空3万6千キロから降ろすエレベーター・ケーブルは、現存する地上100階建ての高層ビルとは到底比較にならない長さで、その重量も想像できないほどの重さになるハズです。宇宙(軌道)エレベーター建設に欠かせない、強度が高く軽い素材を使ったケーブルであるカーボンナノチューブという超軽量な素材が開発されたらしいですが、それでも宇宙(軌道)エレベーターに使用できる素材かどうかは疑問が残るそうです。 - 静止軌道ステーション(プラント)の建造技術は?
宇宙(軌道)エレベーターを建設するには、まず3万6千キロという高軌道にプラントを建設しなくてはなりません。人類は高度約400キロにISSという低軌道ステーションの建設の実績はありますが、それより遥かに高い場所のプラント建設をしたことは無く、高度な技術習得もさることながらコストも相当高くなることが予想されます。 - 重りはどうする?
静止軌道の遥か上空に重りとなり構造物か小惑星を設置しないといけません。これをどうするのか?大きな課題であり、現在の技術では難しい部分があると思われます。 - 建設費はどうするのか?
技術の課題もそうですが、何より莫大な費用がかかる宇宙(軌道)エレベーター建設。とても一国が出せる金額ではなく世界各国の協力が必要になるでしょう。
しかも、ISS建造時以上の協力が必要で、賛同してくれる国がどれだけあるかにかかっているかも知れません。
ただ、人類のテクノロジーの発展は目覚ましいモノがあります。
もしかしたら、今は夢でもテクノロジーの発達ともに、10年後、20年後には現実味を帯びてくるかも知れません。
かつて海外旅行が夢だったように、そう遠くない将来、宇宙エレベーターに乗れば気軽にそしてあっと言う間に宇宙に行ける。そんな時代がやって来ると楽しいですね!?