日頃から地上で生活している私たちにとって、あまり現実的とは考えないであろう小惑星地球衝突の危機。
実は、そんな地上に危険を及ぼし兼ねない小惑星は、毎年のように地球に接近しているという事をご存じでしょうか?
今回は、私たちが地上ばかり見ているばかりではなく、しっかりと上空(宇宙)にも目を向ける必要があるという事を認識したくなる、宇宙からやって来る危険についてお伝えしてみたいと思います。

Sponsored Link

最近起こった小惑星地球衝突事故

数年前(2018年12月18日)、アラスカとロシアを隔てるベーリング海に直径約10メートルの小惑星が落下しニュースになった事を覚えているでしょうか?
実は、この落下した小惑星は広島型原子爆弾の10倍以上もの威力があったにも関わらず、被害の報告もないどころか?ほとんどの人に知られる事もありませんでした。

その理由は、小惑星がベーリング海という誰もいない凍てついた海に隕石として落下したという事と、目撃者もいなかったという事にあります。

「Image Credit:小惑星の落下地点(NASA JPLより)」
ただ、唯一この様子を目撃していたのは、常に宇宙から日本を監視し続けている気象衛星・ひまわりで、この気象衛星だけが地球に落下していく小惑星の姿を捉えていたと言います。

ちなみに余談にはなりますが、地球に落下する飛翔体の事を小惑星と呼んでいますが、正確には、小惑星もしくは小天体は宇宙空間に存在しているときの事を言い、それらが大気圏に突入して起こる発光現象を火球または流星と呼び、そしてそれが地表に落下した場合に隕石と呼んでいます。

記憶に新しいパニックとなったチェリャビンスク隕石騒動

地球に落下する小惑星の事故で記憶に新しいのは、大きな話題にもなった2013年2月15日にロシアのチェリャビンスク州上空に飛来した直径17メートル、質量約1万トンもの小惑星が落下した「チェリャビンスク隕石騒動」ではないでしょうか。

「Image Credit:ロシア・チェリャビンスク州に飛来した小の想像図(Wikipediaより)」
この飛翔体も上空約20キロ付近で爆発し粉砕した隕石が地表に落下したモノの、幸いな事に大きな災害には至りませんでした。

「Copyright ©:Tuvix72 All rights reserved.」

教科書にも載る歴史的隕石事故「ツングースカ大爆発」

最近起こった小惑星地球衝突で忘れてはならないのが、教科書にも載っている人類史上最大の隕石衝突とされる1908年6月30日ロシア・シベリア地方で起こった「ツングースカ大爆発」をご存じでしょうか。

この大爆発では、約2,150平方キロメートルの範囲で木々がなぎ倒され、半径約30~50キロで森林が炎上し衝撃波で地震も発生。さらには、爆発現場より遠く離れたヨーロッパでもその爆発の様子がわかったと言います。

「Image Credit:隕石爆発でなぎ倒された森林(Wikipediaより)」
この大爆発、発生後約一世紀の間、原因不明で世界の七不思議のひとつにも数えられていましたが、最近の研究でその原因が判明し直径50~100メートル、質量約10万トンもの小惑星または彗星衝突によるモノだという事がわかりました。
Sponsored Link

まさに星の数ほど存在する地球衝突の危険がある小惑星

ここまで過去に起こった小惑星衝突事故をいくつかご紹介しましたが、地球周辺にはこれからも衝突の危険性がある小惑星が多数存在し、その数はまさに”星の数”ほどだと言われており、それらのいくつかは毎年のように地球の近くを通り過ぎ、一歩間違えば地球に衝突する危険性を秘めています。
研究者たちもその危険性を認識し、これらの小惑星たちを潜在的に危険な小惑星(PHA)と位置付けし、現在1,500個近い数の天体を追跡しながら観測をしています。

「Image Credit:地球周辺にある潜在的に危険な小惑星(PHA)の軌道図(NASAより)」
追跡対象となっている1,500個近い小惑星たちは、もちろんこれらは現在発見されている天体であり今後もさらに増える可能性がありますし、これまで発見されていなかった小惑星が突如地球に接近する危険もあります。
また、これらはあくまでも追跡、監視しているというだけであって、万が一にもこの中の一つが地球に衝突する危険が高まったとしても、現在の技術力では破壊をしたり軌道を変えたりする事など出来ないのが残念です。

だとすれば、破壊出来ないなら何故監視する必要があるのでしょうか?
その必要性として意味がある事は、危険のある小惑星を監視する事であり、それによっていち早く危険を察知し人々を迅速に避難される事ぐらいでしょう。

話題の小惑星・リュウグウも追跡・監視対象のPHAだった?

日本のJAXAが打ち上げた「はやぶさ2」が探査を行った小惑星「リュウグウ」。
この小惑星については、メディア等の報道では「地球から3億キロ離れた小惑星・リュウグウ」などと紹介しているため、地球から遠く離れた場所にある小惑星と思いがちですが、実はこの小惑星・リュウグウは、地球に接近する軌道を持つ天体・地球近傍小惑星なのです。

「Image Credit:小惑星・リュウグウ(JAXAはやぶさ2プロジェクトより)」
では何故、小惑星・リュウグウが地球から3億キロも離れていると言っているのでしょうか?
その理由は、はやぶさ2がリュウグウに到達した時点において、地球とリュウグウ、互いの公転軌道上の距離が3億キロ離れていたからであり、報道等が単純にその距離を伝えているために、一般の人たちにはリュウグウが地球から遥か遠くにある天体だと認識されてしまっているようです。
ですが小惑星・リュウグウは地球近傍小惑星であり、さらに潜在的に危険な小惑星(PHA)にも分類されている天体でもあり、同様に初号機の「はやぶさ」が訪れた小惑星・イトカワも潜在的に危険な小惑星(PHA)に分類されている天体なのです。
ちなみに、地球とリュウグウの公転軌道が重なった時の最小交差距離は、地球と月の距離よりも遥かに近い14.5万キロと推定されています。

「Image Credit:地球と交差する軌道を持つ小惑星「リュウグウ」と「イトカワ」の公転軌道図(JAXAより)」
もし、直径700メートルほどのリュウグウがこの距離で地球に接近した場合、十分に地球の引力に引き込まれてしまう可能性もあるのです。
ただ、現在のところリュウグウにはそのような危険性などはないため、探査目標の魅力的な天体である事は間違いなさそうです。
Sponsored Link