太陽系で最大の惑星である木星。
木星は巨大であるが故に従えている衛星数も多く、土星ほどではありませんがリング(環)も持っており、また、あまり知られていないのが木星の軌道上に存在するトロヤ群と呼ばれる無数の小惑星帯があり、これらの小惑星も木星の巨大な重力が従えている天体たちです。
そんなトロヤ群に人類は探査機を送り謎を探ろうとしていますが、探査機を送り込んでまでして、何故トロヤ群を探査する必要があるのでしょうか?
そしてトロヤ群とはどんなところで何があるのでしょうか?
などについて、今回はいくつか調べてみたいと思います。
巨大な重力惑星・木星
冒頭でも書きましたが、木星は太陽系で最も大きな惑星で直径は地球の約11倍。質量は地球の約318倍。体積は約1,300倍もある巨大なガス惑星です。「Image Credit:地球と木星の大きさ比較イメージ(Wikipediaより)」
巨大な惑星である木星の衛星数は80個(2021年現在)で、有名なガリレオ衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)も80個の衛星たちの一部です。
「Image Credit:Wikipedia」
また、土星のように派手ではありませんが、薄いリング(環)が存在することも確認されています。
「Image Credit:Wikipedia」
さらに、木星の重力は公転軌道上にも及んでおり、軌道を共有するラグランジュ・ポイントを中心に小惑星帯が存在する領域を木星のトロヤ群と呼んでいます。
木星のトロヤ群とは?
木星の軌道上に分布する小惑星帯・トロヤ群。この小惑星帯は、木星の軌道前方と後方の2箇所に分布しており、現在確認されているだけでも6千個を超える小惑星があるとされています。
「Image Credit:木星の軌道上に分布するトロヤ群(公益財団法人 日本宇宙少年団)」
なお、小惑星の集合体であるトロヤ群は木星だけでなく他の惑星にも存在しており、私たちの地球にも小規模ではありますが軌道を共有するトロヤ群が見つかっています。
木星の公転軌道を逆回転する謎の小惑星
2015年に、木星のトロヤ群の1つではないかと考えられる不思議な小惑星が発見されており、その小惑星「2015 BZ509」は、木星は他の小惑星とはまったく逆の公転軌道をとっているとの事です。「© Engadget 日本版 提供」
通常、このような逆回りの軌道をとっていると、重力の影響を大きく受けてしまい木星に衝突してしまうか?軌道からはじき出されてしまうのですが、「2015 BZ509」は木星との重力バランスが奇跡的に一致し、安定した軌道で公転出来ているモノと考えられています。
木星のトロヤ群に探査機を送る計画
多くの小惑星を有するとされる木星のトロヤ群の存在は古くから確認されていますが、実のところまだ良く判っておらず、人類はこの領域を詳しく探査していない事もあり、木星のトロヤ群がいったいどうところで何があるのか?を2021年にNASAが探査機「ルーシー」を打ち上げ詳しく調査する予定になっています。探査機「ルーシー」は、約6年かけて木星のトロヤ群に到着し、6年間トロヤ群の中を探査します。
その際、どの小惑星を探査するか?はまだ公表されていませんが、計画では合計6個の小惑星を探査するとの事です。
また、日本もトロヤ群に注目しており、「ルーシー」に少し遅れて探査機を送る計画を立てています。
日本のトロヤ群探査機がスゴい!
人類がまだ見たことのない木星のトロヤ群ですが、ここに探査機が送られるとなると未踏の地に足を踏み入れることになります。この領域には先にこの地にNASAが探査機を送り込みますが、遅れて約1年後には日本のJAXAが新技術を搭載した探査機を、木星のトロヤ群に向けて打ち上げる予定だと言います。
それが”宇宙ヨット”と呼ばれる「ソーラー電力セイル探査機」。
この新技術の探査機は、太陽光を受けるセイル”帆”を広げてヨットのように推進し、探査に必要な電力も”帆”を使い発電するという画期的な技術だとの事です。
トロヤ群には何があるのか?
巨額を投じ最新技術まで使って何故、木星の本体や衛星ではなく小惑星の集まりに過ぎないトロヤ群に探査機を送る必要があるのでしょうか?その大きな目的は、この地に太陽系創生の歴史が眠っているのでは?と考えられ、これを詳しく調査することで太陽系の起源の知ることが出来る可能性がある。と期待が寄せられていることにあります。
今から約46億年前太陽系が出来たと考えられていますが、その時に地球や木星などの惑星も創られており、その過程において惑星が出来たときの余りが、トロヤ群として残っているのではないか?との説もあり、また他にも、惑星創世時の大変動期に太陽系外縁部のカイパーベルトからやって来たのでは?という説もあり、どちらの説にせよ、ここには太陽系の歴史があると考えられています。