地球では、東から日が昇り西へと沈んで行くといった1日のサイクルがあります。すなわち、地球は反時計周りで自転しており、他の太陽系惑星も同じように自転しているのですが、金星と天王星だけはその自転が異なっている事はご存じでしょうか?
その異なる自転は、金星は地球の自転方向とは逆方向の反転周りで、天王星は横倒しのような自転をしているのです。
今回は、この金星と天王星が、どうして特異な自転を持つようになったのか?について解説してみようと思います。
まずは太陽系の8つの自転サイクルを見てみよう!
太陽系には、太陽から近い順に水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星と8つの惑星がある事はご存じかと思います。「Image Credit:iStock」
これら8つの惑星全てが自転をしており、地球と同じように昼と夜の時間を繰り返していますが、8つの惑星が地球と同じ時間サイクルで自転しているワケではなく、それぞれが独自の1日の時間サイクルを持っています。
上動画↑↑は、8つの惑星それぞれの自転サイクルをアニメーションで表したモノで、地球の自転サイクル1日(24時間)と比較すると以下のようになります。
水星:59日
金星:243日
火星:24.6597時間(1.027日)
木星:9時間56分
土星:10時間34分
天王星:17時間14分
海王星:16時間6分
これをみると、水星と金星は自転速度が遅く1日が極端に長く、火星は地球の1日とほぼ同じ、巨大惑星の木星、土星、天王星、海王星は自転速度が速く1日が短いというサイクルになっています。
ですが、動画をご覧いただいてもわかるように、8つの惑星の中でも金星と天王星だけは特殊な自転をしており、この2つの惑星だけ特異な星のように見えてしまうかも知れません。
自転軸が反転している金星
金星は地球に最も近く最短で約4,000万キロ、大きさや質量も地球に良く似ていますが、その環境は全く別モノで、生命に溢れる地球に対し金星は高温・高圧の超過酷環境な事はこれまでの調査で明らかになっています。「Image Credit:Wikipedia」
金星の超過酷環境を作り出している要因の一つになっているのが、金星では西から日が昇り東に沈んで行くという地球とは逆向き(177度反転)に自転している事で、しかも1回転するのに243日もかかっており、金星が太陽を一周(公転)する225日よりも長いのです。
では何故、金星の自転軸は177度も傾いているのでしょうか?
現時点では正確な原因はわかっていませんが、有力な説として考えられているのが惑星潮汐変形説。
金星の誕生当時は地球と同じような自転(正)をしていたのですが、惑星内部の重い核やマントルによる摩擦(CMF)と、金星の濃密な大気の影響で摩擦に拍車がかかる潮汐変形が起こり、自転にブレーキをかけてしまい、結果的に自転方向(負)が変わってしまうという現象が起こってしまったと考えられています。
横倒しで自転する天王星
こちら↓↓は、最新の高性能宇宙望遠鏡ジェイムズ・ウェッブ(JWST)によって2023年9月に撮影された天王星の画像です。「Image Credit:NASA, ESA, CSA, STScI」
まるで宝石のように輝く天王星のこの画像は、JWSTに搭載された近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影された、人間の目で捉えることができない赤外線の波長をもとに着色加工されており、実際の可視光でこのように見えるワケではないのですが、その加工のおかげもあり、天王星最大の特徴でもある縦方向に取り巻く環(リング)がハッキリと捉えられています。
地球の4倍程の大きさがある天王星は、最短で地球から約26億キロも離れており、主ににガスと多様な氷で構成されている巨大氷惑星とも呼ばれています。
そんな天王星には前述もしたように縦に環が取り囲むといった特殊な形状をしているのが見て取れます。
しかし、この縦の環は天王星を縦方向に取り囲んでいるのではなく、天王星の自転軸が黄道面に対し、98度傾いている事で環が縦巻きになっているように見えているだけなのです。
では何故、天王星の自転軸は98度の横倒し状態になっているのでしょうか?
これもまた、その原因は判ってはおらず現時点では2つの説が考えられており、1つがジャイアント・インパクト説。
「Image Credit:ジャイアント・インパクトの想像図(Wikipediaより)」
ジャイアント・インパクト説は、巨大な天体が天王星に衝突した事で、その衝撃で大きく自転軸が傾いてしまったという考え方です。
もう一つの説は、かつての天王星には自転軸をも動かしてしまう程の巨大衛星が存在しており、その衛星の引力で徐々に自転軸が傾いていき、衛星は天体同士の潮汐力でロッシュ限界を迎えてしまい粉々に崩壊。その残骸の一部が今の天王星の環となって残っているという説です。
金星、天王星ともに自転軸が傾いてしまった原因はわかっていませんが、金星については日本のJAXAの探査機「あかつき」等も詳しい調査を行っていますし、天王星についても今後探査が行われていく事でしょう。
それにより、この特異な惑星の謎が解き明かされていくのではないでしょうか。