地球と金星は大きさも質量も似ており「姉妹星」と呼ばれています。
しかし、その性格は全く異なるモノで”穏やかな地球”に対して”気性の荒い金星”と別れています。
そんな”姉妹”の性格を別れさせる原因をつくってしまったのが木星ではないか?と考えられているのですが・・・。
とまぁ、いったい何の事を言っているのか?わからないかも知れませんので、これから簡単に説明してみようと思います。

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穏やかな地球と荒れ狂った金星の姉妹星

地球と金星は隣り合った惑星同士であり、最も近い距離関係でもあります。
さらに大きさも質量、密度も似ている事もあり、この2つの惑星は「姉妹星」とも呼ばれています。

「Image Credit:Wikipedia」
半径 質量 密度
地球 6,378km 1 5.52g/cm3
金星 6,052km 0.815倍
(地球:1に対して)
5.20g/cm3
しかし”姉妹”とは言ってもその性格は真逆で、生命に満ち溢れた温暖な環境の”穏やかな性格”の地球に対し金星は、厚い二酸化炭素の大気に覆われ、雲は硫酸、地表温度は鉛も溶けてしまう摂氏500度近くあり、地表気圧も地球の海中900mに相当する90気圧と、とても生命がいるなんて想像も出来ない”気性の荒い性格”の金星が実態です。

では何故、良く似た惑星である地球と金星の”性格”がこれほど異なってしまったのでしょうか?
原因については、金星が地球よりも太陽に近い事や自転速度が遅い事や、月のような大きな衛星を持たない等といくつもあります。
ですが、その中でも遠く離れた場所にある木星が大きく関与していたのではないか?との研究結果が発表され注目を浴びています。
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昔の木星は太陽に近い場所にあった!

現在、太陽と木星の距離は平均で7億7,830万キロ。地球と太陽の距離が約1億5,000万キロ(1AU)ですから、木星はかなり遠い軌道上にある事がわかります。

「Image Credit:Kevin Gill
木星は現在の軌道よりももっと遠い場所で形成されたと考えられていますが、最近の研究で誕生したばかりの頃の木星は、初期太陽の重力の影響を受けて少しずつ内側の軌道に移動して来た事が明らかになって来ました。
元々木星が誕生した場所は太陽から約3.5AUの場所だったとされ、それが内部太陽系の地球の軌道に近い位置1.5AUまで接近して来たとされています。
この木星大移動の影響もあり、惑星同士の重力が強く共鳴しあって互いの軌道が重なり、小惑星の激しい衝突が何度も起こったと考えられ、結果、地球や金星といった岩石惑星が形成されたと考えられており、この惑星形成方法は「グランド・タック・モデル」と呼ばれています。

つまり、地球の300倍以上の質量で、木星以外の全惑星の2.5倍の質量を持つ巨大惑星・木星のおかげで、私たちの地球は誕生した可能性があるのです。
そんな巨大な惑星が内側の軌道に移動して来たという事は、地球や金星のような小さな惑星は大きな影響を受けてしまった事が考えられており、これにより姉妹星だった地球と金星の運命が大きく別れてしまった可能性があるとの指摘が挙がっているのです。

その後、何故木星が今の軌道まで遠ざかったのでしょうか?
それについては謎が残っているようですが、おそらくは同じく巨大ガス惑星である土星の重力の影響があったのでは?という推測もあるようです。

木星によって明暗が大きく別れた地球と金星の運命

地球と金星は、太陽系の惑星の中で太陽の軌道を周る軌道離心率が低い事が知られており、離心率~つまりこの値は惑星軌道が如何に円に近いかという事で、数値が低ければ低いほど真円軌道に近いという事になります。
なお、現在の地球の軌道離心率は0.0167。
金星においてはさらに真円に近い0.006。

「Image Credit:Wikipedia」
前記もしましたが、金星は地球と姉妹星と呼ばれるほど大きさも質量も良く似ています。
単純に考えると、金星が地球よりも太陽に4,000万キロほど近い距離を周回して以外、大きな相違点はなく、おそらくはかつての金星は地球に近い環境を持つスペックがあったと、いくつかの研究から可能性が示唆されています。
となると、何故金星は現在のような超過酷な環境になってしまったのか?
その原因をつくってしまったのが、過去に太陽に接近して来た木星の仕業ではないか?と考えられているのです。

木星によって大きく軌道がズレてしまった金星?!

現在の金星の離心率のご説明をしましたが、かつての金星の離心率は0.3もあり、極端な楕円軌道であった可能性があるのです。
でも何故それほどまでの楕円軌道であったのでしょうか?
その原因をつくったのが木星で、内惑星系まで接近した木星の強い重力によって金星の軌道が引き伸ばされてしまったのでは?と考えられています。

木星の重力により極端な楕円軌道になってしまった金星は、太陽との位置関係が大きく変動してしまい、その結果、地表の温度が急冷却されたり過剰加熱をしてしまったりと、元々は温暖な環境だったかも知れない金星を極端に変貌させてしまった可能性があると言います。
その後、内惑星系から離れていった木星。
それにより重力変動が落ち着いて来た事で、金星は地表に残っていた海の潮汐力により現在の軌道に戻ったのでは?と考えられています。
しかし気になるのは、金星が木星の影響を受けてしまったのに地球は受けなかったのか?ですが、それは、当時の地球と木星の距離が近かったというのが幸いして、地球の軌道が大きく引き伸ばされる事はなかったのでは?と考えられています。

木星の影響が無ければ金星は生命の惑星に?

木星の強い重力の影響で軌道をゆがめてしまったと考えられる金星。
これにより、強い太陽放射で水を蒸発させ、その水が水蒸気となり大気を覆ったことで金星の温室効果を高める事に。
さらに金星の自転速度も遅い(約243日)事からさらに温室効果が悪化し、現在のような過酷な環境になってしまったと考えられています。

しかし、姉妹星と呼ばれるだけあって、金星と地球は大きさ、質量、密度が非常に似通った惑星です。

「Image Credit:約30億年前の金星の想像図(Goddard Space NASAより)」
もしかしたら、木星の影響が無ければ金星には生命が育まれていた可能性があるのかも知れません。
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