月の反対側(裏側)って地球からは絶対に見ることは出来ませんよね!?
月の裏側が見えない事で、神秘的なイメージもあったりして宇宙人の基地があるとか?
古代文明の遺跡があるとか?など荒唐無稽なウワサも出たりで謎に包まれていましたが、人類が月に探査機を送るようになった20世紀後半以降、その謎はデータや画像、動画等で詳細に解明され、宇宙人の基地など存在しないことがわかっています。
しかし、実際の月の反対側ってどうなっているのでしょうか?
そんな月の裏側の画像を、ハイビジョンカメラを搭載したJXSAの月周回衛星「かぐや」が捉えています。
月の表側の模様は昔から世界各地で色々なモノに例えられています。
例えば、日本ではうさぎがモチを突いている姿とか、ヨーロッパではカニの姿だったりとか、女性の横顔に見えるとか、国や地域によって様々な見方がされています。
その様々な模様に見える月の表面は、全て月の表側を見る事で例えています。つまり、地球から見える月は常に同じ方向を向けており、決して反対側(裏側)を地球に見せる事はないのです。
「Image Credit:Wikipedia」
月の裏側が見えない理由
地球から見る月が、常に同じ方向を向けているのは何故なのでしょうか。その理由は、月が自転していないからと答える人もいるかも知れませんが、月は地球と同様に自転はしています。
何故なら、月の自転と公転周期が全く同じという同期現象を引き起こしているからです。
この現象は、地球と月が互いの重力に引かれて共通重心の周りを公転している事で発生し、地球より重力の弱い月の方が強い影響を受け、常に地球側に同じ面を向けて自転しているのです。
少しややこしい説明の仕方でしたが、もっと簡単に解説すると、地球の重力影響で月の重心が少し地球側に傾いてしまう現象の事で、言わば月が”起き上がりこぼし”のような状態なっているのが現象で、「潮汐ロック」とも呼ばれています。
◆潮汐ロックのイメージ図
「Image Credit:Wikipedia」
月の自転スピードは遅く1回転するのに27日もかかってしまいます。
それに対し、月が地球を1周する公転周期も同じ27日で、月が地球を1周公転する間に自らの回転(自転)も1回していることになるため、見た目上、月は自転しているようには見えないのです。
月の裏側探査の歴史
地球からわずか30数万キロしか離れていないのに、裏側を決して見ることが出来ない月。そんな月の裏側は長い間、人類が知りたくても知ることが出来ない謎とされてきました。月の裏側を初めて撮影することに成功したのは、アメリカと旧ソ連の冷戦時代の宇宙開発競争初期の1959年。アメリカより先に、旧ソ連の月探査機「ルナ3号」が月の裏側に周り、撮影しています。
「Image Credit:1959年に「ルナ3号」によって撮影された月の裏側(Wikipediaより)」
その後、アメリカのアポロ計画でも有人飛行で月の裏側を直に目にし、ウワサされているような宇宙人の基地など無いことが証明されています。
それからも各国で月の探査(無人)が行われ、そんな中で最も鮮明な月の裏側の撮影に成功したのが、我が日本の月周回衛星「かぐや」の活躍です。
「かぐや」が探査した月の裏側の真実
2007年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」。「かぐや」は月周回軌道に乗り、約1年半に渡り月上空から様々な観測を行いました。
「Image Credit:月周回衛星「かぐや」(JAXA宇宙科学研究所より)」
「かぐや」のミッションは、搭載された高性能なレーダーとカメラで月全体の地形図を作製したり、月では地球と違い昼と夜の区別がハッキリしていない場所があるため、1年中太陽光が当たり続ける場所「永久日照」や逆に1年中日が当らない「永久影」も観測発見しています。
この「かぐや」の観測成果は、今後人類が月面基地を建設するときなどに役立ち、太陽光で電力を供給するには、永久日照のある場所に基地を建設することも検討されています。
なお、「かぐや」によって撮影された数々の観測データはコチラの動画で閲覧する事が出来ます。
また「かぐや」は、月の表側と裏側では環境がかなり違うという事を発見しています。
「Image Credit:Wikipedia」
上画像でもおわかりのように、表側は盆地など平地が多いのに対し、裏側はゴツゴツとした地形でクレーターがより多く見られています。
これは、太古の昔に表側に起きたと思われる巨大な天体衝突の影響で、平坦な地形が出来たのではと考えられますが、それに対し裏側は山やクレーターだらけの地形です。
このクレーターだらけの地形の原因のひとつは、月が潮汐ロックによって常に地球に背を向けている事で、裏側に隕石の衝突が集中した事で衝突痕のクレーターが多く見られる事に加え、月の裏側の地形は約25億年前まで火山活動が活発だったことも明らかにされ、その名残りもありゴツゴツとした地形が現在でも残っていると考えられています。
「かぐや」が撮影した月の裏側の写真
月の表と裏側。異なる歴史を踏んできたため、ことなる景色が広がっています。「かぐや」はそれを詳細に分析して地図として作製。そのおかげもあり、私たちは作製された月面地図をブラウザ上で手軽に見ることが出来ます。
「Image Credit:月の表側(左)と裏側(右)(国土地理院より)」
◆参考サイト:【国土地理院「月の地形図」】
月面地形図を見ると、一見不気味な月面のように見えますが、実際にこのように見えているワケではなく、地形をわかりやすくするために画像加工しているからです。
特に、ゴツゴツした凹凸のある月の裏側はより不気味に見えますが、これを見ると月の低い場所や高い山などが良くわかるかと思います。