地球から最も遠い距離まで到達している人工物で、さらに地球を飛び立ってから約半世紀も経過したというのに、今もなお稼働し運用を続けている(2025年現在)無人探査機と言えばNASAの「ボイジャー1号」。

そんなボイジャー1号ですが、これまで何度も深刻なトラブルに見舞われており、その都度トラブルを乗り越え復活を遂げているのですが、でも流石にもう運用限界が近づきつつあるような時に、またまた奇跡の復活を遂げ”健在”を私たちに示してくれているようなのです。

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これまでのボイジャー1号の軌跡

ボイジャー1号は、1983年に惑星グランドツアー(Planetary Grand Tour)と呼ばれる4つの外惑星(木星・土星・天王星・海王星)が、地球から見てほぼ同じ方向に並ぶ現象が起こるため、1970年代後半のタイミングで探査機を打ち上げスイングバイの重力アシストを行えば、短期間及び最小限の燃料で一気にこれら全ての惑星を探査できる事から、NASAは「ボイジャー計画」を立ち上げ、同型機のボイジャー1号と2号の惑星探査機が建造し、1号、2号ともに1977年に打ち上げられました。ちなみに、惑星グランドツアーが起こるのは175年に一度だそうです。

「Image Credit:惑星グランドツアーによるボイジャー1号と2号の航行軌道(Wikipediaより)」
打ち上げからわずか1年半という短期間(1979年3月5日)で木星に最接近を果たしたボイジャー1号は、約1カ月半の木星および衛星イオ等の観測を行ったあと一路、土星に向けて進路を取り、これもまた約1年半という短期間で土星に到達し、土星の環や衛星タイダン等の観測を行い、ボイジャー1号のの惑星科学ミッションは終了。それ以降は、太陽系外縁部へ進路を取り星間ミッションに移行しています。

「Image Credit:同型機のボイジャー1号(左)ボイジャー2号(右)(Wikipediaより)」
なお、ボイジャー1号の詳しい探査の軌跡はコチラをご参照下さい。
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星間ミッションに移行したボイジャー1号のその後①

土星の探査を終え星間ミッションに移行したボイジャー1号ですが、星間ミッションにおいては特に天体の観測等は行っていませんが、飛行をしながら搭載した観測機器を駆使し、未知の空間である星間物質等の観測し続けていました。
さらに8番目の惑星・海王星の軌道を超え、エッジワース・カイパーベルトの領域に到達したボイジャー1号は、太陽からおよそ60億キロ離れた地点で太陽系の惑星たちが写るポートレート撮影「太陽系家族写真」をしています。

「Image Credit:上(太陽系家族写真)下(太陽系家族写真の詳細図)(Wikipediaより)」
ボイジャー1号が撮影した写真(合計39枚)には、太陽を含む全ての惑星が写っています。つまり、この写真こそがボイジャー1号が太陽系外縁部へ到達したという証拠写真にもなるのです。

星間ミッションに移行したボイジャー1号のその後②

秒速約17キロという速度で太陽系の外へ向けて飛行を続けるボイジャー1号。そして2012年8月25日、ついに太陽風が届く限界地点である「ヘリオポーズ」を通過し太陽圏の離脱に成功しています。なお、その6年後(2018年11月5日)にはボイジャー2号も太陽系離脱に成功しています。

「Image Credit:Wikipedia」
太陽圏離脱というと太陽系の外へ出たと勘違いするかも知れませんが、あくまでも太陽風の届く領域の外に出たという事であり、太陽系はまだまだ続いており、ボイジャー1号が完全に太陽系の外に飛び出すまでには、あと数万年はかかるとされています。
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ボイジャー1号。度重なるトラブルの連続から奇跡の復活!

ボイジャー1号はこれまで老朽化も伴った事もあり、度重なる不具合を起こしていますが、もちろん不具合が起こったからといって直接の復旧作業は出来ませんので、地上からコマンドを送信することで難局を乗り越えて来ました。
例えば、2023年11月に発生したボイジャー1号から送られてくるデータが解読不能となる不具合は、飛行データシステム(FDS)のメモリを保存するチップが破損しましたが、破損したチップに保存されていたコードを分割して、別の場所に保存することで復活しています。

「Copyright c:Did You Know? All rights reserved.」
しかし、今回のトラブルは地球との交信には欠かす事が出来ない姿勢制御用のスラスター(推進器)が正常に作動しなくなった事でした。つまり、スラスターが作動しないとボイジャー1号のアンテナを地球方向に向けられなくなり、交信不能となってしまうのです。
なお、スラスターは複数装備されており、姿勢制御のため回転用推進器・予備推進器・軌道変更用推進器を上手く使い分けながらアンテナを地球に向けています。そんな中2004年にボイジャー1号のメインスラスターである回転用推進器に不具合が発生。内臓されたヒーターの電源が入らなくなったそうです。
そこでNASAのエンジニアたちはヒーターの使用を諦め予備推進器に移行するコマンドを送り復旧に成功しています。
ところが、その頼みの予備推進器も稼働限界が訪れつつあったため、エンジニアたちはもう一度メインスラスターの再起動を試みたところこれに成功。ちなみにメインスラスターのヒーターに電源が入らなかった原因は、ヒーターの電源供給回路上のスイッチが誤動作している可能性があったと考え、スイッチを元の位置に戻してから再起動を行った事で復旧に成功したそうなのです。

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気になるボイジャー1号の現在地

ボイジャー1号の現在地(2025年5月時点)で太陽から約250億キロ彼方にあり、地球からボイジャー1号に向けて通信するには片道約23時間もかかるそうですし、またボイジャー1号から送られてくる電波も微弱なため、NASAのエンジニアたちの努力がいかほどなのか頭が下がるばかりです。

ちなみに、ボイジャー1号、2号の現在地はNASAの公式サイトにアクセスするとリアルタイムで知る事が出来ます。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
NASA・JPL(ジェット推進研究所)のウェブサイト(Mission Status)

ボイジャー1号、2号の打ち上げからのミッション経過時間や地球からの距離、現在の速度等、最低限の情報を教えてくれており、他にも、ボイジャー探査機の詳細な情報を閲覧する事も可能で、NASAが打ち上げた他の外惑星探査パイオニア10号、11号やニューホライズンズの、3D画像でリアルタイムでインタラクティブ体験も出来ます。

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