現在、地球低軌道上を周回し、宇宙空間での様々な実験や研究を続けている国際宇宙ステーション(ISS)ですが、2030年には運用が終了する事が決まっており、その後の宇宙ステーションはどうなるのか?気になるところですが、このISSに代わる後継機を導入しようと積極的に手を挙げているのが民間の宇宙ベンチャー企業たちです。
そんな中、ヨーロッパの航空宇宙企業である「エアバス(Airbus)」社が、非常に画期的な次世代型宇宙ステーションを提案し注目を集めています。
老朽化のため2030年には運用が終了する国際宇宙ステーション(ISS)
2011年の運用開始以降、10年以上も地球上空約400キロの軌道を周り続けている国際宇宙ステーション(ISS)ですが、そんなISSにも老朽化という運命があり2030年には運用が終了する事となっています。「Image Credit:Wikipedia」
しかし、ISSはサッカー場とほぼ同じ大きさで質量は約420tもある巨大な建造物です。そんな巨大な施設は運用終了後も放置するワケには行かないため、意図的に地球に落下させて焼却するという荒ワザ的な処分方法を取る事になっています。
5兆円以上もの建設費がかかったISSを、このように処分するというのは勿体ないと思いますが、放置してもいずれは地球の重力に捕まり地上に落下してしまい、場合によってはISSの破片が地上に被害を与えてしまう可能性があるため、ポイントを決め被害の出ない洋上に落下させる事になっています。
「Image Credit:廃棄したISSの落下ポイント(NASAより)」
ちなみに、上図↑↑のISS落下ポイントは南太平洋上にある「ポイント・ネモ」と呼ばれている場所で、東西南北すべてが陸地や島から遠く離れ周囲に何もない海域で、人工衛星を落下させた時に燃え残った破片で被害を与える危険性がない事から、これまでに300機近い人工衛星やロケットがこのポイント(海域)に落下させているそうです。
エアバス社が考案した国際宇宙ステーション(ISS)の後継機
ヨーロッパの航空機メーカーとして有名なエアバス(Airbus)社も宇宙ビジネスに参入している企業の1つですが、このエアバス社が考案したISSに代わる次世代型の宇宙ステーション(多目的軌道モジュール)が「エアバスループ(Airbus LOOP)」です。「Image Credit:Airbus」
エアバスループは直径が8メートル、長さ26フィートの大きさがあり、4人が常駐出来るように設計されていますが、一時的には最大8人の人員を収容できるようになっているそうです。
また、このモジュールの構造は3層構造になっており、最上部が居住デッキ、中央部が科学デッキ、最下層部が遠心分離機になっているとの事。
「Image Credit:Airbus」
各デッキは、中央部にあるトンネルを介して繋がっており、モジュールの中心には温室構造が設置され、デッキ毎に分離することで内部の「セーフハーバー」コンセプトが実現出来るといいます。
そしてエアバスループの特質すべき点は、最下層部に設置してある遠心分離機です。
遠心分離機は、小型デッキを回転させる事で遠心力を利用した人工重力を発生させ、地上と同じ重力環境を造り出しており、この小型は4つ設置されており、2つは立って動けるようになっており、残り2つは地上と同じ重力で寝そべる事が出来るよう造られてるため、長期間宇宙に滞在する宇宙飛行士にとっては、つかの間の重力を感じる事が出来る空間がある事で、人体へのストレスを軽減できるようになっているそうです。
国際宇宙ステーション(ISS)の後継機候補はエアバスだけじゃない!
エアバス社が考案したエアバスループはISSの後継機に決まったワケではなく、ひとつのコンセプトとして提案されたモノであり、他の民間企業も独自のコンセプトを打ち出しており、その中で注目すべき後継機候補を2つほど紹介します。ブルー・オリジンが中心になり提案している「オービタル・リーフ」
世界的なインターネット通販「Amazon」の創業者で有名なジェフ・ベゾス氏の宇宙ベンチャー「ブルー・オリジン(Blue Origin)」が中心となってチームをつくり提案している商業宇宙ステーション「オービタル・リーフ」。「Image Credit:Sierra Space via Gizmodo US」
オービタル・リーフは「宇宙に浮かぶ複合型ビジネス・パーク」がコンセプトで、商業目的の宇宙ステーションとして運用され、その中でこれまでISSで行って来た科学的な宇宙実験や研究も継続して行われつつ、一方では民間人を対象とした宇宙旅行施設まで運用するという、宇宙に新たな市場を開拓することを目的で建造すると言います。
アクシアム・スペースの宇宙ステーション
アクシアム・スペース(Axiom Space)」という会社は、既存のISSに商業モジュールを結合するとコンセプトを発表しています。「Image Credit:Axiom Space」
これはISSを利用するという事で既に動き出しており、2024年には打ち上げをしISSに結合する予定となっていて、ISSのモジュールのひとつとして運用され、宇宙実験や民間人の宇宙旅行用に使用された後は、廃棄前のISSから離脱して独立した宇宙ステーションとして運用する計画となっており、コスト削減でもかなり現実味のある計画になっています。
今後は民間が運用する商業用宇宙ステーションの時代がやって来る!?
これまで国家事業として行われて来た宇宙開発ですが、今後は民間企業が宇宙に進出しビジネスを展開する時代がやって来ます。その中でもこのような商業目的の宇宙ステーションの建造に関してもNASA等が後押しをし、2020年代後半以降はISSのような軌道モジュールがいくつも誕生し、地球低軌道でのビジネス展開が進んで行くものと思われます。
また、地球低軌道での商業化が進んで行く事により技術的にもコスト削減が可能となり、月面開拓や有人火星探査も費用や人員等の注入がしやすくなるというメリットもあると事で、今後はさらに加速した宇宙開発が進んで行く事が期待出来るかも知れません。