1970年代に制作されたスペース・ファンタジーアニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク版の「宇宙戦艦ヤマト2199」が2013年に制作され人気を呼んでいます。
(2022年までに、続編の宇宙戦艦ヤマト2202・宇宙戦艦ヤマト2205が制作。)
今回のリメイク版の人気の要因となっているひとつが、ヤマトの航海におけるストーリー構成と、現在の科学的根拠に基づいたリアル感と世界観が素晴らしいとのことのようです。
リメイク版は前回の作品とは違う、本作品はどのようなモノになっているのかを検証してみました。
リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」とは?
2013年より制作され放送となったリメイク版「宇宙戦艦ヤマト」。リメイク版ですので、基本的なストーリーは前作と同じではあります。
そのストーリーは、異星文明(ガミラス)の攻撃により、放射能で汚染された地球。
地球壊滅までの残り時間があと1年と言う中で、人類最後の望みの戦艦「ヤマト」に乗り、遥か大マゼラン銀河にあるイスカンダル星まで汚染浄化システムを受け取りに行くというモノです。
◆ 参考サイト:【宇宙戦艦ヤマト2199】
航海途中、人類の敵である異性文明「ガミラス」と戦闘を繰り広げながら、希望の地イスカンダルに懸命に向かうというところは同じですが、前作と本作に違うところが多数盛り込まれていて、とても楽しく鑑賞出来、単なるスペース・ファンタジーアニメだけではなく、科学的な根拠も伴った興味深い作品になっています。
宇宙戦艦ヤマトの前作との違い
基本的には前作と同じストーリーなので、スペース・ファンタジー感の強いアニメに仕上がってはいるのですが、前作と違うのは、現代の宇宙科学に基づた世界観を表現していて、SF宇宙作品にありがちな想像的発想から来る荒唐無稽な展開がかなり少なくなっている事にあります。そんな今回の「ヤマト」制作に当たっては、よりリアルな宇宙観を出すために、宇宙科学の専門家である鹿児島大理学部の半田利弘教授が科学考証を担当していると言います。
昔の「ヤマト」(1970年代)は、当時の科学知識のレベルも低かった事もあったと思いますが、物語の面白さを追及するためもあり、科学的根拠を無視した突っ込みどころ満載のおとぎ話的な要素もかなり含まれていました。
しかし今回の「ヤマト」は、かなりリアルな宇宙観を追及していて、宇宙に詳しい天文ファンが観ても面白いと評判で、もちろん細かいところを言えば突っ込みどころはありますが、スペースファンタジーアニメにしてはかなり現実的に仕上がっています。
では、以前の「ヤマト」と今回の「ヤマト」ではどこがどうリアルに表現されていあるのかを比べてみました。
◆参考動画:【1973年作:宇宙戦艦ヤマト 第1話】
◆参考動画:【1973年作:宇宙戦艦ヤマト 第2話】
◆参考動画:【宇宙戦艦ヤマト2199PV】
宇宙服・戦闘服の違い
前作:宇宙服は、ほぼ船内で着ている服装にヘルメットを被るだけ。危険な宇宙空間に出るという認識が無かった?今作:船内服・与圧服・宇宙服と3つに別れていて場面、環境よって使い分けている。かなり現実的な装備。
木星の大赤斑
木星の大気圏に浮かぶ赤い斑点。↓↓~これを大赤斑と呼びます。この正体は木星の巨大な台風です。「Image Credit:Wikipedia」
前作:大赤斑は木星の上空に浮かぶ巨大な大陸と考えていて「浮遊大陸」として紹介。
今作:大赤斑には一切触れず、代わりにガミラスが自分たちの生活環境に地球を改造するための人工島(ガミラス・フォーミング)を木星の大気圏上空軌道上に持ち込んだ。
恒星(太陽)の巨大な炎
前作:恒星表面から噴き出す地球をも飲み込む巨大なガスの炎を”コロナ”と呼んでいた。今作:これはコロナではなく正しくはプロミネンス。劇中ではフレアと呼んでいたが間違いではない。
「Image Credit:Wikipedia」
生身で船外(宇宙空間)へ出る?
前作:ガミラスの総統・デスラーは宇宙服も着用せず船外へ出ても平気だった?今作:地球人とガミラス人は、ほぼ同じ遺伝子構造の人間であるという設定。
そうでなくても生命体が生身で宇宙空間へ出ることはあり得ない。
人工重力に対する考え方
前作:宇宙が舞台なのに、ほとんど場面で地球と同じ重力が働いていた。今作:ヤマトには重力制御ジャイロが装備されているという設定。
ヤマト船内に重力制御が働いているため、船体がひっくり返っても船内に影響は無い。
ちなみにその装置が故障したときは、船内すべてが無重力状態になった。
さらに、波動砲を打ったときも、船の姿勢がしっかり固定出来るよう重力アンカーという装備があった。
天文観測技術向上によって変わったもの。
前作:大マゼラン星雲(距離:14万8000光年)今作:大マゼラン銀河(距離:16万8000光年)
前作:銀河系
今作:天の川銀河
以上、現在の科学的根拠に基づいて変更になったところはありますが、現代の「宇宙戦艦ヤマト」は、天文に詳しい人間が観てもかなり楽しめる作品に仕上がっていると思います。
アニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」に携わった半田教授もおっしゃっていますが、この作品で、新しいある程度正しい宇宙観を勉強し、さらに若い人が宇宙や天文学に興味を持つきっかけになればうれしい。と期待を寄せています。