私たちの住む地球は、太陽という恒星を中心とした太陽系と呼ばれる惑星系の中にあり、太陽系は巨大な星の渦・天の川銀河(銀河系)の中にある事を知っている人は多いかと思います。
しかし、そんな天の川銀河の本当の姿を誰も見たことはありません。
当然です。誰も銀河系の外に出たことなんてないのですから全貌を知る由もありません。

ですが、最新の観測技術を駆使し詳細な分析をする事で、銀河の外に出なくても実際の天の川銀河の構造やカタチが浮き上がって来るそうです。

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天の川銀河のカタチは渦巻き銀河

これまでの常識として、私たちの銀河系(天の川銀河)の形状は、アンドロメダ銀河のような美しい渦巻き銀河だとされて来ました。
しかし、最近では天の川銀河の形状は渦巻き銀河ではなく「棒渦巻き銀河」ではないか?!と考えられるようになって来ています。

「Image Credit:Wikipedia」
ただこれについても科学者たちの推測の域を超えておらず、実際はどのような形状をしているのか?ほとんどわかっていないのがこれまでの状況でした。

ですが、最新の観測技術の発展は素晴らしく、地上に設置された高性能電波望遠鏡や、宇宙空間に浮かぶ宇宙望遠鏡などを駆使し、天の川銀河の全貌が少しずつわかって来るようになっています。

地球から見える銀河系の中心

私たちの地球は天の川銀河の中にあるため、残念ながら地球から銀河の全貌を見ることは出来ませんが、天の川という雲状の光の帯で内側から銀河を肉眼で見ることは出来ます。
しかし、天の川を見てもその中心方向はどこにあるのかわからない人は多いと思いますが、星座を見れば銀河の中心がどこにあるのかを比較的簡単に知ることは可能です。

銀河の中心を知るには、出来れば中心方向がある星座の「いて座」を探せば良いのですが、いて座はオリオン座や北斗七星のようなメジャーな星座ではありませんので、どれが「いて座」なのか判断出来る人は少ないかも知れません。そんな時は、いて座と隣接している比較的メジャーな星座「さそり座」を目印にすれば探しやすいか?と思います。

「Image Credit:青ヶ島村ホームページより
さそり座は夏の星座の代表格としても知られ、比較的探しやすい星座で南の夜空を見上げると見つけることが出来ます。
さそり座を見つけたら、その隣に「いて座」も確認する事は出来ると思いますので、上画像でもおわかりのように「いて座」と「さそり座」の間が天の川銀河の中心方向になります。
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銀河の中心にある天体・巨大ブラックホール

天の川銀河の中心方向を見つけることが出来たら、次はそこに何があるのか?想像してみて下さい。

私たちの銀河は、太陽を含めた2,000億個以上の恒星の集合体だと考えられており、その中心に鎮座しているのが、太陽質量の430万倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールであることが最近の研究で判明し、2022年には超大質量ブラックホール「いて座A*」の撮影に成功した事が一躍話題になりました。

「Image Credit:直接観測に成功した実際の「いて座A*」の写真(Wikipediaより)」
なお、中心部に超大質量ブラックホールが存在するのは天の川銀河だけでなく、宇宙のほとんどの銀河にも巨大ブラックホールが存在すると考えられています。

銀河系の中心を捉えたスピッツァー宇宙望遠鏡

私たちの銀河の全貌を捉えるきかっけとなったのが、2003年にNASAが打ち上げられたスピッツァー宇宙望遠鏡の観測によるものでした。

「Image Credit:スピッツァー宇宙望遠鏡(NASA/JPL-Caltech)」
スピッツァー宇宙望遠鏡は高性能の赤外線望遠鏡で、観測の邪魔になる地球が放射する赤外線の影響を避けるため、地球の衛星軌道ではなく地球を追いかける太陽周回軌道に投入され、天の川銀河の中心方向に焦点が向けられ銀河の全貌の観測を続けていました。
その観測結果により、これまでは銀河の中心には、アンドロメダ銀河のような丸い形状をした銀河バルジがあると考えられてきましたが、天の川銀河には、棒渦巻き銀河の特徴である細長い円盤状のバルジがあることが判明しています。

「Image Credit:天の川銀河を真横から見た図。中央の白い部分がバルジ(Wikipediaより)」
銀河バルジは、中心部にある超大質量ブラックホールの重力により、星が集まる事で光り輝いて見えると考えられており、天の川銀河のバルジの直径は約1万5,000光年あると推測されています。

銀河を渦巻くスパイラルアームの観測

スピッツァー宇宙望遠鏡の観測により、私たちの銀河バルジは細長い円盤状であることが判明した事で、天の川銀河は棒渦巻き銀河である事がわかりましたが、銀河にはバルジを取り巻くスパイラルアームと呼ばれる渦腕があり、それはどのような形状でバルジから何本伸びているのかが謎でした。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech/ESO/R.Hurt」
しかし、科学者たちはその謎にも迫り、チャンドラX線観測衛星や世界各国の望遠鏡等を使って詳細な分析を行ったことで正確な観測結果を導き出し、天の川銀河にはバルジを取り巻く星の密度の濃い4本のスパイラルアームが存在する事が判明しています。
これにより、天の川銀河のほぼ全体像が見えて来ることになったのです。

「Copyright ©:European Space Agency, ESA All rights reserved.」
この観測結果によると、天の川銀河の全体の大きさは約10万光年もある巨大な銀河であり、銀河の誕生から100億年以上も経過していると推定されるとの事です。

銀河系での太陽系の位置とは?

天の川銀河の全貌は解明されて来ましたが、気になる私たちの太陽系は銀河のどの場所にあるのでしょうか?
現在、太陽系は銀河の中心から約25,800光年離れた外縁部に位置し、星の密度の低い2本のスパイラルアームの間にあると想定されており、秒速240キロという猛烈なスピードで銀河を周回している事が判っています。

「Image Credit:国立天文台」
太陽系は現在、星の密度が低いスパイラルアームの外側に位置しますが、1億数千万年に1度の頻度でスパイラルアームの中に突入するとされており、今後太陽系がスパイラルアームの中に入った場合は、他の星々からの宇宙線の影響を受け、地球は寒冷化する可能性があるという仮説もあるという事です。

本当の銀河系の真の全貌とは?

天の川銀河は、細長い円盤状の周りに4本のスパイラルアームが取り巻く銀河だという事が分かってきましたが、実はそれだけが天の川銀河の全貌ではなく、天の川銀河(ディスク:円盤状の星の集合体)の外側にある26個の矮小銀河も銀河の一部と考えられており、本体である天の川銀河の強大な重力の影響を受け矮小銀河が天の川銀河に合体することで、そこからはみ出した星々が銀河の周りをリボン状に取り巻いている事が分かって来ています。

「Image Credit:YouTUBE」
つまり、本当の天の川銀河の姿はかなり複雑な構造をしていると考えられ、銀河を取り巻くリボン状の星々の多くは寿命の長い赤色矮星ではないか?とも考えられていて、その範囲は数十万光年にも及ぶと推定されていす。
ちなみに、現在の天の川銀河に存在する星々の約半数は、銀河の周りにあった矮小銀河から取り込まれたと考えられており、数々の矮小銀河を吸収する事で現在の天の川銀河が創られたとされており、今後も長い時間をかけて銀河は更に巨大に成長して行くのではないかと考えられています。
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