
人類は月に、有人でのミッションを含め、幾度も月面探査を行っています。
しかし、そこには何もなく、荒涼とした”無”の世界が広がっています。
そんな月面ですが、最新の調査で水が存在するという新事実が判明しています。
しかも、大量の水が存在しているという事です。
あの荒涼とした世界に何故水が存在するのか?
その水はどこにあるのか?
そして、月面に水があることで、人類にとってどんなメリットがあるのか?
これら、いくつかの疑問点について調べてみました。
月面に水の存在の証拠!きっかけはアポロ計画の鉱物サンプル
これまで、月には水が存在しないと考えられて来ましたが、最新の研究でその考えに誤りがあることが判明しました。その誤りを正すきっかけを作ったのは、アポロ15号が月面探査で持ち帰った鉱物サンプルにありました。
アポロ15号は1971年7月、ハドレー谷という火山活動域の近くに着陸し、3日間の月面探査で77キロの鉱物サンプルを採集し、地球に持ち帰りました。

「画像参照:月面でサンプルを採取するアポロ15号の宇宙飛行士(NATIONAL GEOGRAPHICより)」
宇宙飛行士によってハドレー谷で採集されたサンプルの中には、かつて火山活動で形成されたと思われるガラス粒子がありました。
月も太古の昔は火山活動が活発だったと推測されており、このガラス粒子は、その噴火でマグマが月面へ噴出される際、内部に水を封じ込めることで結晶化して形成されています。
そんなガラス粒子を分析したところ、地球の玄武岩に含まれる量に匹敵するほどの、水が含まれていることが判明しました。
月に存在する水の量は大量だった!?
アポロ15号が月面探査でも、比較的容易に採集出来たガラス粒子。これにより、水が含まれたガラス粒子は、月面に豊富に存在していることが示唆され、後に詳しい調査をしたところ、極めて広範囲に水を含んだ鉱物があることが確認されました。
つまり、月面の広範囲に鉱物があるとすれば、その地下には、さらに膨大な量の水が眠っていることも考えられます。
実際には、どれくらいの量の水が月に存在するのかは、今後の詳細な調査で分かって来ると思われますが、仮に月にあるすべての水を取り出したとするなら、月面全体が深さ1メートルほどの海に覆われるのではないか?と推測されると言います。
何故、月に水が存在するか?
地球に存在する膨大な水の誕生は、地球創世期頃に遡ると考えられ、当時の生まれて間もない太陽系には、太陽を取り巻くガスや塵の中に大量の氷が存在し、その氷が原始の地球に降り注ぎ、水となったとされています。月もまた、その誕生が地球と同時期ではないか?と考えられており、同じように氷が月の内部に取り込まれたモノではないか?と推測されています。

「画像参照:月誕生の起源?ジャイアント・インパクト説(Wikipediaより)」
月に水が存在することでどんなメリットがある?
”月に水”?、単純に「月にも生命の起源が?」と考えられる人もいるかも知れませんが、残念ながら生命が生息し得る環境にない月面には、そのような可能性はまずないでしょう。では、月に水がある事でどんな意味があって、人類にとってもメリットがあるのか?
基本的に地球には豊富に水がありますので、月の水を地球の資源として利用することは考えられず、この水を利用するとなれば、将来人類が再び月面に立ち、探査を行ったりなど、長期間月面で過ごす場合に利用できるのではないか?と期待されています。

「画像参照:青い部分が月面に堆積している水を含んだ鉱物の分布AmericaSpaceより」
つまり、月に水があれば、月に行くのに地球から水を持参する必要がない!?ということになります。
しかし、月に水があったとしても、単純には喜べない現実もあります。
その理由は、月面は地磁気に守られた地球とは違い、太陽からの有害な放射線が容赦なく降り注いでいるため、月にある水は汚染されている可能性が高く、もし、人類が月の水を利用するとなれば、浄化する必要があるものと考えられます。
とは言っても、月に水が存在することは人類にとって朗報
月の水が利用できるとしたならば、人類の今後の宇宙開発にとってかなり有用なモノとなることが考えられます。もちろん、この水を飲用や生活用水として利用できるだけではなく、発電用などエネルギー利用にも役立つことも期待できます。
そう!それは、月面に眠るもう一つの資源”ヘリウム3”。
ヘリウム3は、核融合発電の燃料として利用できるとされ、核融合の熱で水を蒸発させ、水蒸気で発電用タービンを回すといったことに利用もできます。

「画像参照:核融合発電のしくみ(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所より)」
つまり、核融合発電の技術が確立すれば、発電のための材料は、月で調達できるというワケです。