2017年から2018年にかけて全3部作で公開されたSFアニメ映画「GODZILLA怪獣惑星」に「くじら座タウ星」という太陽系外惑星が登場しましたが、この惑星は架空の天体ではなく実在する星です。
映画では、壊滅しかけた地球を追われた人類が移民先の新天地として目指した星が「くじら座タウ星系」にある「惑星タウe」だったのですが、ここ最近で次々と発見されている地球型惑星の中で、何故このじら座タウ星eにスポットが当てられたのか?少し気になったので、今回は「タウ星」についていくつか調べてみたいと思います。
アニメ映画で登場した地球外惑星移民計画で選ばれた「くじら座タウ星e」
映画「GODZILLA怪獣惑星」に「くじら座タウ星e」が登場したのは冒頭のみでしたが、この惑星の登場は物語において最初キーポイントとも言えるモノでした。「Image Credit:タウ星系のイメージ図(The University of Hertfordshire: 2012より)」
地球を破壊し滅亡寸前まで追い込んだ怪獣(GODZILLA)により、地球を見捨てざるを得なかった人類がAI(人工知能)を使って移民先として選んだのが、地球から見てくじら座方向にある約12光年離れた恒星・タウの第四惑星・タウeだという設定でした。
「Image Credit:くじら座タウ星の位置(YAHOO!JAPAN きっずより)」
地球を脱出して20年以上もかけてこのタウeに辿り着いた生き残った人類だったのですが、しかしそこは人類の移住には不適格な環境だという事が判明し移民計画は破綻してしまいます。
仕方なく、地球に引き返すという事になりそこから物語は始まるのでした。
ちなみに、この「くじら座タウ星系」の惑星は「GODZILLA怪獣惑星」以外に「スタートレック」等にも登場しており、実際には地球外知的生命探査(SETI)のオズマ計画でも地球外生命体探査でも対象の星として選定されています。
実在する「くじら座タウ星」とは?
前述もしましたが、くじら座タウ星は地球から約12光年という近い距離にある実在する恒星です。タウ星の一番の特徴は、地球に近いスペクトル型が太陽と同系列のG型主系列星(黄色矮星)のひとつで連星ではなく単独星である事で、また、質量や大きさは太陽よりも少し小さい(太陽の約80%)ですが、年齢も約58億歳と太陽とほぼ変わらない年齢で非常に安定した活動をしている恒星でもあります。
「Image Credit:太陽(左)とタウ星(右)大きさ比較図(Wikipediaより)」
つまり、「くじら座タウ星」は地球から最も近い太陽に良く似た恒星とも言え、もしこのタウ星に地球と似た環境を持つ惑星が存在しているならば、生命の可能性や、さらにはタウ星の58億年という年齢からして生命が進化する時間が十分にあることから、人類と同じような知的生命体がいたとしてもおかしくないという事も想像は出来ます。
そもそもタウ星系に地球型惑星は存在するのか?
太陽に似たG型のスペクトル型を持つタウ星。しかも、約12光年という近距離である事から観測研究対象としては注目されており、各国の天文学者がこの星に望遠鏡を向けて観測しています。
その結果、現時点でタウ星系には少なくとも4つの地球と同程度の質量を持つ惑星を発見され、その内「GODZILLA怪獣惑星」でも登場したタウeとタウfの2つの惑星は、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に位置する可能性があるとされています。
くじら座タウ星e
タウ星eは、主星のタウ星から8,260万キロの距離を168日かけて公転しています。この8,260万キロという距離を太陽系に当てはめると水星と金星の間に相当しますが、タウ星の質量が太陽の80%ほどである事を考えると、金星の外側の軌道に相当のハビタブルゾーンに位置する事になると考えられています。
但し、タウ星eの質量は地球の4.3倍もある事からスーパーアース(巨大地球型惑星)の可能性があると推測されており、もしスーパーアースなら質量もあるため地球よりも重力が大きく厚い大気に覆われており、かなり激しい大気の動きが考えられ生命が生息するには不向きな可能性があると推測はされます。
くじら座タウ星f
タウ星fは、主星のタウ星から約1億9,000万キロの距離を1.76年かけて公転しています。この距離を太陽系に当てはめると火星に近い軌道に相当しますが、タウ星fの質量もまた地球より大きいスーパーアース級の6.6倍である事が判明しており、また、ハビタブルゾーンの外縁付近を公転しているため、ギリギリ水が液体で維持出来ている状態か、もしくは水が存在したとしても氷で覆われている可能性もあり、必ずしも生命が生存するには適していないかも知れないとされています。
「Image Credit:YouTUBE」
人類が”第二の地球”を探すには太陽に似た星が絶対条件?
残念ながら現在のところでは、くじら座タウ星系には生命が生息できるような環境はあまり期待できないようです。ですが何故、このくじら座タウ星が人類の移民先としてSF映画等に登場して来るのでしょうか?
タウ星以外でも、最近の観測では他に4.2光年先にあるプロキシマ・ケンタウリや、39光年先のTRAPPIST-1星系の惑星が生命存在の有力候補が見つかっているにも関わらずです。
その理由については個人的な考察になりますが、タウ星が太陽系に近く、さらには太陽に最も似た恒星であるからではないでしょうか?
というのも、私たち人類は太陽という黄色い光を放つ黄色矮星の環境下で育まれ進化して来ました。
しかし、プロキシマ・ケンタウリや39光年先のTRAPPIST-1等は、いずれも赤い光を放つ赤色矮星です。
赤色矮星が放つ光は太陽に比べて可視光の割合が低く、そこにある惑星に降り注ぐ光は波長が長い近赤外線になるため地球の環境とはかなり異なることが予想されます。
「Image Credit:赤色矮星を公転する惑星の想像図(Wikipediaより)」
このような近赤外線の環境下だと、太陽が放つ紫外線領域の可視光下で生きて来た人類にとっては不適合になってしまう可能性があり地球と同じレベルでの生活は望めないでしょう。
とにかく、人類が移民出来るような”第二の地球”は宇宙広しと言えど、そう簡単に出会えるモノではないのかも知れません。