日本では小惑星・リュウグウを探査した探査機「はやぶさ2」が話題になっており、この探査機の最大の任務は小惑星のサンプルを地球に持ち帰る~サンプルリターン・ミッションで、見事、地球にサンプルを持ち帰る事に成功しています。
しかし、このサンプルリターン・ミッションに挑戦しているのは日本の「はやぶさ2」だけではありません。
NASAもまたこのミッションを成功させるべく探査機を小惑星に送り込んでいるのです。

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サンプルリターン・ミッションとは?

サンプルリターン・ミッションとは、探査を行った天体からサンプル(試料)を採取し地球に持ち帰る任務の事であり、実はこのミッションは50年以上前に既に成功しており、最初にサンプルを持ち帰ったのは人類初の有人月面着陸に成功したアポロ11号でした。
このとき、宇宙飛行士の手でサンプルを採取し、約22キロの”月の石”を地球に持ち帰っています。

「Image Credit:月のサンプルを採取するアポロ宇宙飛行士(NASAより)
以降、アポロ計画では計6度による有人月面着陸で382キロが採集され、無人探査機では、旧ソビエト連邦が1970年代に行ったルナ計画によるサンプルリターンで326キロの月面の試料が地球に持ち帰られています。

「Image Credit:アポロ計画 月面活動の様子とアポロ16号が持ち帰った月の石(Wikipediaより)
このように、月のサンプル採取はこれまで何度か成功していますが、月以外の他の天体から試料を採集し地球に持ち帰るというミッションは非常に難しく、以降も何度か挑戦されてはいましたが失敗も多く成功したのは数回のみでした。

その中で私たちの記憶にも残っているのが、我が日本(JAXA)が行ったサンプルリターン・ミッションの「はやぶさ計画」ではないでしょうか?
初代の探査機「はやぶさ」は、小惑星イトカワからサンプルを採集し持ち帰り、2代目の「はやぶさ2」は小惑星リュウグウの探査を行い、こちらもサンプル採取に成功を収めており、私たち日本人には、この「はやぶさ計画」がサンプルリターンの宇宙探査として有名ですが、やはり宇宙探査の先駆者でありノウハウも技術も日本より遥かに上をゆくアメリカ航空宇宙局(NASA)も、「はやぶさ計画」よりは少し遅れを取りましたがサンプルリターン・ミッションを行っています。

それがオサイリス・レックスです。

NASAのサンプルリターン・ミッション「オサイリス・レックス」とは?

JAXAの「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着したのが2018年6月下旬。それから遅れること約半年。2018年12月上旬に探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」に到達しています。

小惑星「ベンヌ」は小惑星「リュウグウ」と同じように、地球近傍を周回する小惑星で、地球からの距離にして約1億キロ~2億キロの軌道を周っている大きさ500メートル超の天体です。

「Image Credit:オサイリス・レックスが約24kmの距離から撮影した小惑星「ベンヌ」(www.nasa.govより)
2016年6月に打ち上げられた「オサイリス・レックス」は、約2年半の飛行で小惑星「ベンヌ」に到着し、約1年半滞在し探査とサンプルを採集した後、地球に向けて出発。予定では2023年9月に地球に帰還することになっています。
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「はやぶさ」と「オサイリス・レックス」の違い

JAXAの「はやぶさ計画」とNASAの「オサイリス・レックス」。目的地小惑星の違いはあれど、同じサンプルリターン・ミッションです。
とは言え、この探査する小惑星の特徴こそが同じサンプルリターン・ミッションの大きな違いになります。

サンプルリターン・ミッションの違い その1:「探査する小惑星の特徴」

JAXAの「はやぶさ2」が探査する小惑星リュウグウはC型小惑星に分類される天体であり、C型小惑星の主な特徴は炭素系物質で形成されており、リュウグウの場合、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられています。
そのため、リュウグウを詳しく調査しサンプルを採集すれば、太陽系形成において有機物や水がどのような存在であったのか?また、これらがどのように相互作用して生命の起源になったのか?について謎の解明に迫ることが出来るモノと期待されています。

一方、「オサイリス・レックス」が探査する小惑星・ベンヌも、リュウグウと同様に有機物を多く含んだC型小惑星で、初期の太陽系の時代からの元素や物質が保存されているタイムカプセルのような天体だと考えられており、主な探査目的は「はやぶさ2」と変わりませんが、大きな違いは、ベンヌはリュウグウより地球に近い!という事です。

これは何を意味するのか?
もちろん、探査目標が地球に近ければ、それだけ探査もしやすく費用も抑えることが出来ますが、それとは他に、人類の将来の資源確保にもこのベンヌは欠かせない存在になるかも知れないという事。
つまり、資源豊富と考えられる小惑星が地球の近くにある事によって、この小惑星にどれくらいの資源があり資源を採掘して地球に運搬できる可能性があるか?についても探る目的があります。

サンプルリターン・ミッションの違い その2:「探査方法」

「はやぶさ2」と「オサイリス・レックス」は、そのサンプルリターンの探査方法に違いがあります。

まず「はやぶさ2」は、インパクタ(爆薬)を使い小惑星の地表に穴(人工クレーター)を開け、そこからサンプルを採集する方法をとっています。
● 参考記事:【小惑星探査機「はやぶさ2」のミッション内容

次に「オシリス・レックス」のサンプルリターンの探査方法はというと、可能な限り小惑星の表面に接近し約3メートルのロボットアームを伸ばし、アームの先から窒素ガスを噴射し舞い上がった塵を採集するという方法を採用しています。

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」

サンプルリターン・ミッションの違い その3:「サンプルの採集量」

サンプルリターン・ミッションで気になるのが、どれくらいのサンプルを採集して持ち帰る事が出来るのか?という事があるかと思います。
これについて調べてみたところ、「はやぶさ2」と「オサイリス・レックスス」には大きな違いがある事がわかりました。

「はやぶさ2」の目標採集量は0.1グラム。
たった0.1グラムと思うかも知れませんが、地中に穴を開け小惑星内部のサンプルを持ち帰る「はやぶさ2」にとっては、分析出来る十分量だと言います。
※ 「はやぶさ2」は、サンプル採取目標だった0.1グラムを遥かに上回る約5.4グラムの採取に成功しています。

「Image Credit:「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取したサンプルの実際の写真(JAXA宇宙航空研究開発機構より)
一方、「オシリス・レックス」は最低でも2オンス(約56.7グラム)のサンプルを採集する事を目標としており、探査機自体の積載量は4.4ポンド(約2キロ)まで可能との事です。

「はやぶさ2」と「オサイリス・レックス」ミッション成功率はどちらが高い?

同じ探査目的である「はやぶさ2」と「オサイリス・レックス」。
当たり前ですが、どちらも必ず成功する事を想定してミッションが組まれています。
しかし、「はやぶさ2」はミッション遂行中に想定外の問題に直面しており、それは「はやぶさ2」が到着した小惑星リュウグウの表面は、想定外のゴツゴツした岩塊(ボルダー)だらけだった事でした。

「Image Credit:「はやぶさ2」から撮影された小惑星リュウグウ表面の赤青立体視画像( JAXA はやぶさ2プロジェクトより)
この想定外の問題が意味する事は、硬い岩塊だとインパクタで思うようなクレーターを生成できない可能性がありサンプル採集に困難を極めるかも?という事でした。
これによりJAXAはミッション遂行を延期し、サンプル採集に必要な最低でも直径100mの平坦な場所を探し出しミッションを再開。そしてご存じのとおり見事成功をおさめています。

さらに、これもリュウグウに到着して事実が判明した事で、リュウグウには水が存在する可能性があり、それを調査する事も目的だったのですが、「はやぶさ2」の近赤外線での観測ではリュウグウには期待していた水がほとんど存在していない事も判明しています。

こういった少し予想とは違った小惑星リュウグウに対し、「オサイリス・レックス」の目的地である小惑星ベンヌ。
現時点では詳細な情報は入っていませんが、窒素ガスで塵を舞い上らせるというサンプル採集方法を採用している「オサイリス・レックス」にとってはベンヌの地形はそれほど問題ではなく、このミッションも見事に成功させています。
流石はNASA!と言ったところですね!

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」
ミッション成功をさせた2つのサンプルリターン探査。この成功で宇宙探査に新たな希望をもたらすを事を期待していですね。
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