「宇宙望遠鏡」と聞いて思い浮かべるのは、有名なハッブル宇宙望遠鏡かも知れません。
また、数々の太陽系外惑星を発見したケプラー宇宙望遠鏡も有名です。
しかし、この有名な2機の宇宙望遠鏡が共に任務を終了しようとしています。
(※ 追記:ケプラー宇宙望遠鏡は2018年10月に、望遠鏡の姿勢制御システムの燃料を使い果たし運用を終了しています。)
人類の宇宙探査に大きな貢献をして来たハッブルとケプラーに、「お疲れさま!」と労をねぎらいたいところですが、でも、この2機に代わる宇宙望遠鏡ってどうなっているのでしょうか?
20年以上活動したハッブル宇宙望遠鏡が寿命か
ハッブル宇宙望遠鏡は、1990年から運用を開始して来た地上上空から約600kmの軌道上に投入されている宇宙望遠鏡です。ハッブルの大きさは大型バスほどもある望遠鏡ですが、人類の宇宙探査の中でこれまで数々の成果を挙げており、天文ファンならずともこの宇宙望遠鏡の名前は何度も耳にしているのではないでしょうか?
「Image Credit:Wikipedia」
ハッブル宇宙望遠鏡は、本来の運用期間である15年を大幅に超える長い期間運用を続けて来ましたが、過酷な宇宙空間での運用を余儀なくされるハッブル宇宙望遠鏡は、運用期間中に何度も不具合・故障が発生しています。
ですが、高度600キロという上空なら人が直接ハッブル宇宙望遠鏡まで行き修理するのは可能だった事もあり、その利点を活かしてハッブルの修理・部品交換等の復旧作業をスペースシャトルで行い、このサービス・ミッションは合計6回に及びそのおかげもあり約30年もの運用を続けることが出来ました。
「参考動画:1993年スペースシャトルによるハッブル宇宙望遠鏡修理の模様」
しかし、スペースシャトルの運用が終了した今。もしまたハッブルが故障しても簡単に修理をするというワケには行かず、さらに長年の運用で老朽化が著しくなっている中、姿勢制御用のジャイロが故障しついに運用休止のセーフティモードになってしまいました。
ただ、以前故障したジャイロが復活出来れば、まだ運用再開の望みはあるそうです。
とは言え、もう想定される寿命はとっくに過ぎているハッブル宇宙望遠鏡は、運用再開が出来たとしても一時的なモノになる可能性も高いそうです。
※ 追記:過去に故障したジャイロのうち状態の良かったものを修正して復旧に成功し、その後もペイロードコンピュータに問題が発生したものの、バックアップに切り替え再起動に成功し、2022年現在も運用を続けています。
ハッブル宇宙望遠鏡の功績
人類の宇宙観測に画期的な成果をもたらしたと評価されるハッブル宇宙望遠鏡。それは想像以上の成果で、数々の宇宙の謎を解明し太陽系の惑星や衛星の詳細な観測や深宇宙の探査、さらには宇宙誕生の謎解明まで挑みました。
また、大気や電波の影響が無い宇宙空間で望遠鏡が捉えた鮮明で美しい映像は私たちに感動すら与えてくれました。
「Image Credit:1995年にハッブルが撮影した”創造の柱”と呼ばれるガス状星雲(NASAより)」
その他、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた数々の画像はコチラのGallleryで公開されています。
多くの系外惑星を発見したケプラー宇宙望遠鏡も寿命?!
ケプラー宇宙望遠鏡もまた大きな功績を残した望遠鏡で、2009年に打ち上げられ主に太陽系外の天体を観測する目的で運用されました。この望遠鏡は地球軌道上に投入されたハッブル宇宙望遠鏡とは異なり、より正確な観測を可能とさせるため地球から9,400万マイルも離れた軌道上に投入されているため、ケプラー宇宙望遠鏡が故障してもハッブルのように修理は出来ないことになります。
「Image Credit:ケプラー宇宙望遠鏡(Wikipediaより)」
そんなリスクのある中、運用開始まもなくして姿勢制御系のトラブルが発生。これにより自由に方向を変えて観測が出来なくなってしまいました。
しかし、この故障が功を奏することになります。
姿勢制御が出来なくなったケプラー宇宙望遠鏡は、天の川銀河内のほんの一角のみしか観測出来ないため、これまであまり注目されて来なかった小さく温度が低い恒星・赤色矮星を観測することに。
すると、そんな一角の中だけにある赤色矮星に次々と惑星が発見(2,000個以上)され、しかも、生命生存可能とされるハビタブルゾーン領域にも惑星が発見され世界中の話題となったのでした。
そんなケプラー宇宙望遠鏡もいよいよ寿命を迎えることに。
大きな成果を出したが故に、運用延長もされましたが、流石に燃料切れはどうしようもなく運用停止のスリープモードに移行し、残った燃料を使って、最後の観測データを地球に送信して任務を終了しました。
ハッブルとケプラーに代わる宇宙望遠鏡
ハッブルとケプラー宇宙望遠鏡の任務が終了したからといって、これからの宇宙望遠鏡による観測が終わるワケではなく、ケプラーの後継機として既に打ち上げられている望遠鏡はTESS(トランジット系外惑星探索衛星)。「Image Credit:NASA」
「TESS」が軌道投入されているのは地球衛星軌道上で、ここから太陽系近郊の恒星系(300光年以内)に望遠鏡を向け系外惑星の探索を行っています。
またTESSは、ケプラーでは観測出来なかった小さな系外惑星も探索する事が可能で、さらにケプラーの400倍以上も広い範囲で観測が出来るという事でこれからの新しい発見に大きな期待がかかっています。
革新的な成果が期待のジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡
史上最強の観測マシンと言われるのは、何度も打ち上げ延長の末、ついに2021年12月に打ち上げられ運用を開始した「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」です。「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」はテニスコート一面ほどもある巨大な望遠鏡。
「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(NASAより)」
この宇宙望遠鏡も性能を最大に発揮するために、地球から100万マイル以上も離れた軌道に投入されており、軌道投入される場所はケプラー宇宙望遠鏡と似ていますが、汎用性で言えばハッブル宇宙望遠鏡の後継機にあたる望遠鏡になります。
このジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のスゴいところは、宇宙の歴史を遡れるタイムマシン的な機能があるという事で、搭載された高性能な赤外線カメラで宇宙誕生から2億年後の光を観測出来ると言い、これが出来れば一気に宇宙誕生の謎に迫れるワケで、宇宙が誕生して初めて生まれた星・ファーストスターを見つけ出すことも出来るかも知れません。
「Image Credit:ファーストスターのイメージ図(ILLUSTRATION BY N.R.FULLER, NATIONAL SCIENCE FOUNDATION)」
また、深宇宙探査だけでななく系外惑星の詳細な観測も可能という事で、ケプラーが発見した地球型惑星に生命存在の可能性も探る事が出来る可能性があります。
高性能な機能を持つジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、開発費用も膨らみ100億ドル以上にもなるとか?!
これだけ費用が膨らんだ高価な望遠鏡ですので、投入される軌道がレスキュー不可能な場所だけに失敗は許されません。
それ故にか?
元々は2007年に打ち上げが予定されていたこの新型宇宙望遠鏡ですが、開発の難しさと慎重を期して10年以上の遅れとなってしまったようです。