ついに始動したNASAの新たなる宇宙プロジェクト「アルテミス計画」。
この計画で注目されているのは、やはり人類が再び月面に立つというミッションではないでしょうか。
しかし、この計画はそれだけではなく、有人月面着陸の先に待っているのは壮大な長期宇宙ミッションだと言います。
これから人類が目指す本格的な宇宙進出に向けて非常に重要なステップとなるであろう「アルテミス計画」の全容について、現時点でわかっている情報をまとめてみました。

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アルテミス計画の第一目標は今後を見据えた有人月面着陸

2022年11月。アルテミス計画の第一弾である「アルテミス1」のミッションが開始され無事成功を収めました。

「Copyright ©:NASA Johnson All rights reserved.」
「アルテミス1」では無人機による月周回ミッションでしたが、2024年の「アルテミス2」は有人(乗員4名)での月周回ミッションとなり、2026年、ついに1969年のアポロ11号以来、実に57年ぶりに人類が再び月面の地に降り立ちます。
前回のアポロ計画で月面に降り立ったのは、選ばれた勇敢なアメリカの軍人たちでしたが、今回のアルテミス計画では初の女性、有色人種も月面を踏む事になっています。
またこの計画はアメリカ(NASA)が単独で行うモノではなく、我が日本(宇宙航空研究開発機構(JAXA))をはじめ、欧州宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)、オーストラリア宇宙庁(ASA)他、アメリカの民間宇宙開発事業者(スペースX等)も参加するといった国際的なパートナーシップが計画を進めて行くと言います。

この事からアルテミス計画は、人類を月面の地に立たせる事が大きな目標だった前回のアポロ計画とは大きく異なり、国際協力のもと月面の開発、そして宇宙開発を本格的に進めて行く事になります。

月面開発は月の南極を拠点にしてはじめる

人類が再び月面の地に降り立つ時に使用する着陸船は、アメリカの民間宇宙会社「スペースX」が開発した「スターシップHLS」を使用し、降り立つ場所は月の南極域となっています。

「Image Credit:スターシップHLS(SpaceXより)」
でも何故、月面での着陸地点が南極域なのいでしょうか?
その最大の理由は、月の極地域には永久に日光が当たらない永久影が存在する事がわかっており、その永久影に大量の水の氷が埋蔵されている事も確認されています。
つまり、月に埋蔵されている水を利用する事で、飲み水や生活用水に活用するだけでなく、水から酸素を取り出す事も出来るため、この地を拠点にし月面基地を建設し月面開発を進めていく事も検討されており、また、南極地域では、月着陸船が降りやすい平地も多く、地球と通信もしやすく、日照時間も長く太陽光発電もしやすい利点があると言います。

「Image Credit:アルテミス計画での月面着陸候補地13か所(NASAより)」

今後10年以内に月面に長期滞在が出来るようになる?!

2026年の有人月面着陸以降、月面に埋蔵されている水の活用が出来るようになれば人類の月面開発は一気に進む可能性があります。
そうなった場合、月面基地では様々な研究が行われるようになり、それに伴い研究者たちが月面に長期滞在する事も想定されるようになるでしょう。

「Image Credit:月面で船外活動をする「アルテミス3」のクルー想像図(NASAより)」
実際、アルテミス計画での月面着陸が成功し月面活動での安全性が証明されれば、10年後には人を月面に居住させる計画があると関係者述べていると言います。
但し、月面に長期滞在出来るのは、研究者たちが中心となる事は仕方ないのかも知れません。
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月軌道ゲートウェイから火星へ

アルテミス計画では有人月面着陸だけでなく、月軌道上に月軌道プラットフォームゲートウェイを建造する計画があります。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの想像図(NASAより)」
月軌道プラットフォームゲートウェイでは、月面基地との中継だけでなく、国際宇宙ステーション(ISS)で行って来た実験・研究も継続して行われるようになり、また商業目的でも利用される計画もあると言います。

さらに、人類は今後、更に先の深宇宙進出を目標にする計画があり、月軌道プラットフォームゲートウェイでは最初に深宇宙を目指す目的地として有人火星ミッションを視野に入れており、火星飛行に向かってのテスト実施の拠点として利用する予定にあると計画されています。

月から火星へ向けての計画も進行中

アルテミス計画によって人類は新たな宇宙探査の時代を迎えようとしており、月の有人ミッションの後には火星の有人ミッションが控えています。
ただ、火星は地球の隣りの惑星とは言え、その道のりは遠く、地球と火星が接近するタイミングで宇宙船を飛ばしても、火星に到着するまで半年以上はかかってしまいます。
そんな長くかかる火星までの道のりを短縮すべく、NASAは核熱推進と原子力電気推進を組み合わせた原子力ロケットを研究していると言い、もしこの原子力ロケットが完成し実用化できれば、地球から火星までの道のりは一気に短縮され、何と45日で到達できると言います。

「Image Credit:原子力ロケットのコンセプト(NASAより)」
現在の技術では、約2年に一度訪れる地球が火星に接近するタイミングで火星に向けて出発し、約半年間ののちに火星へ到着し、次に地球と火星が接近するまで1年以上、火星で待たないと行かず、そのため有人火星探査にかかる実質の日数は約3年という事になってしまい、この間、宇宙飛行士たちは狭い宇宙船と無重力、火星での滞在、さらには放射線にも晒され続けなくてはならず、人体や精神にかなりの負担がかかる事が予想されます。
しかし、火星に45日で到達できる原子力ロケットが完成すれば、火星有人ミッションは数カ月で済み、リスクが大幅に抑えられうえにミッションにかかるコストも減らす事が期待出来ます。

この原子力ロケットエンジンについて、NASAは2027年までに実証実験を行うと発表しており、開発が順調に進めば2030年代初頭には、原子力エンジンを搭載した火星行きの宇宙船が完成しているかも知れません。
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