高度な技術と莫大な投資。そして危険も伴う宇宙開発。
21世紀になった今日。そんなリスクの大きい宇宙開発に目をつけ、参入を目指す民間企業が次々にあらわれ、彼らが宇宙を目指す理由は、そこに大きなビジネスチャンスがあるからに他なりません。

宇宙開発に期待される数々のビジネスチャンス。
今回はその中から、最も価値が高いと言われる宇宙に眠る資源・エネルギー分野の中の天然資源採掘事業について調べてみたいと思います。

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宇宙開発におけるビジネス市場

かつては国家事業だった宇宙開発。
特に20世紀後半は、大国同士アメリカと旧ソ連が宇宙開発で争い、莫大な予算をそこに投資して来ました。

「Image Credit:左・サターンロケット(アメリカ)右・ソユーズロケット(ロシア(旧ソ連))(Wikipediaより)」
そんな20世紀を生きて来た私たちにとって宇宙は、国家予算レベルの莫大な費用がかかるため「民間なんてとても手を出せる場所ではない!?」というイメージを持っている人が多いと思います。
ですが、21世紀なり大きく事情が変貌。次々と民間宇宙ベンチャーが立ち上がり宇宙開発参入に名乗りを挙げて来ており、その背景にあるのが宇宙におけるビジネス市場への期待であり、市場規模は約40兆円以上はあると見込まれ、さらには、2040年代には120兆円にも達すると言われている超ビッグ・ビジネスチャンスがあるからです。

「Image Credit:事業構想 Project Design Online

宇宙開発におけるビジネスモデルとは?

では、ビジネスモデルとは何なのでしょうか?
細かく分類するといくつもモデルは存在しますが、ここでは代表的な7つのビジネスモデルをご紹介します。

① 放送・通信衛星サービス

まず、地球上の放送・通信網のサービスを構築する事業は、衛星を地球低軌道上に打ち上げ、放送・インターネット等の通信サービスを提供する事です。

「Image Credit:人工衛星による通信網を構築するイメージ図(東京エレクトロンより)」
このビジネスモデルで最近話題になっているのが、アメリカのスペースX社が計画を進めている「スターリンク計画」で、地球低軌道(高度350キロ~1,150キロ)に、約1万2,000基のスターリンク衛星を配備するという壮大な事業ですが、この通信衛星網により、世界のどこにいても途切れることのない高速インターネットサービスが利用できるようになるという壮大で画期的なプロジェクト。

「Image Credit:スターリンク計画のイメージ図(Wikipediaより)」
スターリンク計画は現在進行中(2022年現在)で、この事業にかかる投資額も莫大ですが、このプロジェクトに成功すれば世界中のインターネットの覇権をスペースX社が一手に握ることで、投資額を遥かに上回る利益があげられる事が予想されます。

② 測位衛星サービス

測位衛星を一般的な名前で言うと「GPS」です。
この事業は既に大きく進んでおり、民間レベルというより国家レベルでのサービスとも言ってよいでしょう。
我が日本でも準天頂衛星システム「みちびき」の運用が始まり、4期の測位衛星を運用し誤差数センチの測位(GPS)が利用できるようになります。

「Image Credit:NECより)」

③ リモート・センシング

民間ベンチャーにとって、現時点で最も大きなビジネスチャンスのひとつとなっているのがリモート・センシングです。
これは宇宙から地球上を観測するビジネスで、人工衛星により地球上のあらゆる対象物の観測を行いデータを収集し、このデータを必要とする機関に販売する事で利益を得るというビジネスです。

「Image Credit:宇宙から地球を観測するリモート・センシング(NASA, OSC)」
例えば、土地や海洋、自然資源の情報、自然災害等の現場に収集されたデータを販売し、現場での管理・集積等に活用していくサービスもリモート・センシングのビジネス戦略の方法です。
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④ 宇宙ロケット開発・運用

民間で独自のロケットを開発し、人工衛星や貨物、人等を宇宙に運搬する事業。

「Image Credit:スペースX
この事業でもスペースX社が一歩抜きんでており、既にいくつもの宇宙ロケット開発し運用ベースに乗せています。

⑤ 宇宙旅客サービス

かつて国家事業で宇宙開発を行っていた時代は、科学者や軍人等、優秀で選ばれた人のみが宇宙へ行くことが出来ていました。
しかし、民間が宇宙進出をして来ると誰もが宇宙に行き旅行が出来る時代がスグそこまでやって来ている事が予想されますが、宇宙旅行とは言っても火星等に行けるワケではなく、まずは低軌道の宇宙ステーション滞在や月周回旅行などに限定され、また、一番現実味が高いのが、スペースプレーンと呼ばれる宇宙空間を経由して地球上の目的地に短時間で到達出来る超高速旅客機で宇宙を体験してみるという、簡易的な宇宙旅行になると思われます。

「Image Credit:ペガサス=PDエアロスペース」
スペースプレーンは弾道飛行で飛ぶ事で、東京~ニューヨーク間を30~1時間程度で行けるようになる画期的な宇宙旅客になる事が期待されています。

⑥ 宇宙移民

これはある意味で、人類が宇宙進出する上での究極の事業とも言えるかも知れません。
例えば、最近良く耳にするのが火星移住計画で、最も地球に似た環境の惑星である火星に人を移住させようというモノ。
実際、2030年代までには火星入植を目指すと言っている宇宙ベンチャーもあるようで、少しずつ現実味が増してきているかも知れませんが、そこまで行くにはまだまだいくつもの大きな壁を超えないと実現は難しいのではないでしょうか?

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⑦ 資源・エネルギー開拓

ここまでご紹介した宇宙ビジネスモデルの中で、今後大きなビジネスチャンスとなり得るのがこの資源・エネルギー開拓ではないでしょうか。
宇宙には手付かずの資源、そして利用できる莫大なエネルギーが眠っており、その市場規模は測り知れず、言わば無尽蔵にある宝の山と言っても過言ではないでしょう。
例えばそれは太陽エネルギーであったり、月や地球近傍小惑星などに眠る鉱物資源の採掘。
現時点では、その資源の採掘、利用技術は構築されていませんが、そう遠くない将来それらの資源開発が行われるようになるでしょう。

「Image Credit:NASA」

宇宙ベンチャーの狙いはゴールドラッシュが期待できる鉱物採掘?

宇宙開発におけるビジネスモデルにおいて、最も市場価値が上がると言っていいのが今後月面や近傍小惑星で採掘ができるかも知れない鉱物資源であり、その市場規模はまさに天文学的な価値があるとされ、
21世紀は鉱物資源採掘で宇宙のゴールドラッシュが起こる可能性があると言われています。

例えば、月面においては良質な鉄やニッケル、アルミニウム等の金属資源。さらには、次世代エネルギーの主役と言われている核融合発電の燃料ヘリウム3等、数々の手付かずの資源が眠っているとされています。
また、小惑星にも純度の高い金属資源を有する天体が数多くあり、中には黄金やプラチナ、ダイヤモンド等の天然資源も採掘できる期待があります。
ただ、実際にこれらの資源を採掘できる技術を持つまでには、商業ベースで後50年は最低でもかかるとされています。

「Image Credit:小惑星資源採掘プラントの想像図(Illustration courtesy Bryan Versteegm, DSI)」
しかし、金やプラチナ、ダイヤモンドは希少価値があってこその資源であり、もし、これから小惑星で金やプラチナ等が大量に採れるようになった場合、市場価値が大きく下がってしまい経済が混乱する可能性もあり、ある意味怖い話かも知れません。
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