NASAが開発し、火星で活動を始めた新型探査ローバー「パーサヴィアランス」。
この探査機には史上初の試みとして宇宙ドローンが搭載されており、火星の地で飛行をしようとしています。
地球ではすっかりお馴染みになり様々な場所で活躍しているドローンですが、これを火星で飛ばすとなると地球のようには行かず相当難しいと言います。
でも何故、火星でドローンを飛ばすのが難しいのでしょうか?今回は主にこの点について触れてみたいと思います。

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新型の火星探査機に搭載された火星ヘリコプターとは?

2021年2月に火星の地に降り立ったNASA・マーズ2020ミッションの火星探査ローバー「パーサヴィアランス」。
パーサヴィアランスの着陸地点は、かつて火星で豊富な水を湛えていた湖だったとされる「ジェゼロ・クレーター」の中。

「Image Credit:ジェゼロ・クレーター(NASA/JPL-Caltechより)」
つまり水があったのであれば、そこには何らかの生命の痕跡が残っているのではないか?と考えられた上で、それを見つけようという重要な任務を課されパーサヴィアランスは探査に当たっています。

「Image Credit:NASA / JPL-Caltech」
パーサヴィアランスはローバーですので自由に火星地表を動き回り、イメージ図のように多少の凸凹した場所も問題なく走行する事が出来、移動をしながら間近で火星の探査を行う事が出来ます。
しかし、その行動範囲はそれほど広くなく遠方まで行動する事は困難。更に、探査の視点も限られたモノになって来るため、それを補うにはどうしたら良いか?として考えられたのが火星でドローンを飛ばす事でした。
そして今回、実験機としてパーサヴィアランスに搭載されたのが、小型ヘリコプター「インジェニュイティ」です。
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火星で飛ぶために開発されたインジェニュイティの性能

史上初の宇宙ドローンとして開発された小型ヘリコプター「インジェニュイティ」の重さは1.8キロで、大きさは50センチ(高さ)ほどに、2枚のプロペラが装備され長さは1.2メートルあり、地球で使われているドローンの大きさとあまり大差はありません。
ちなみにインジェニュイティには、「創意工夫」や「発明の才」の意味があるそうです。

「Image Credit:実際の火星の大地に立つインジェニュイティ(NASA / JPL-Caltech)」
インジェニュイティのプロペラは、太陽電池とバッテリーでモーターを毎分2,500回転させ火星の上空を飛べるように設計されていますが、今回搭載されたインジェニュイティは実験機ですので、実際に火星の探査に使うというより飛行実験が主な目的で、そのため、それほどの飛行能力はなく最大飛行時間は90秒しかありません。

つまり、この能力で飛行出来る距離は300mほどで最高高度は約5m。また、地球から遠隔操作を行うとかなりの時間差が生じるため、予めプログラムしたコマンドに従い自立で飛行出来るようになっています。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」

火星でドローンを飛ばすのは超困難!

史上初の宇宙ドローン「インジェニュイティ」。この機体を火星で飛ばすとなると技術的にもかなりの困難があります。
それは、実際に上昇する高度が5メートルの低空であっても、大気圧は地球の100分の1程しかない火星では、地表でも地球での高度3万メートルに相当する大気の薄さとなってしまいます。

実際、地球上においてもプロペラで飛ぶヘリコプターの最高到達高度は1万2,440メートル。つまり、それの倍以上の高さにもなる気圧下で飛んだ事なんてないのです。
これだけ薄い大気の中では、機体の重さもなるべく軽くしプロペラは超高速で回転させないといけなく、また地球の3分の1程しかない火星の重力下で、どのように飛行するのか?実際に飛ばしてみないとわからないと言います。
そんな不安要素がある中で行われた「インジェニュイティ」の初飛行は大成功。その後も繰り返しフライトを行い予想を上回る成果を挙げています。

◆ 参考動画:実際の「インジェニュイティ」の初飛行の様子。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」
初飛行に成功し、合計30回以上もフライトを行っている史上初の宇宙ドローン「インジェニュイティ」は、装備された2枚のプロペラを地球上以上に高速で回転される事で飛行する事が出来ています。
また、火星においての課題は薄い気圧や低重力だけでなく、マイナス90度にもなるという火星の超低温もあり、この極寒対策には、電子部品が凍りつかないよう内部ヒーターで機体を温めているそうですが、そのヒーターの電源も火星に降り注ぐ太陽光だよりで、日中の陽が高い時間帯だけしか飛ばす事が出来ないという欠点があります。

この課題の多い宇宙ドローン飛行実験での成功は今後の宇宙探査を大きく前進させる可能性もあり、火星だけでなく他の天体でもドローンが活躍できる期待が広がるかも知れません。
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