太陽系最大の惑星・木星。
そこには衛星の数も多く、これまで68個の衛星が発見され土星(83個)に次ぐ衛星数を誇ります。
しかし、ここに来てまた新たに衛星を発見!それも合計12個。
これで木星の衛星は80個になったワケですが、実は元々は木星の衛星を探索して発見されたモノではなく他の天体を探っていた時に偶然発見されたそうなのです。
いったいその偶然とはどういうことなのでしょうか?
そして新衛星たちの特徴と、これを機会に改めて木星の衛星について調べてみようと思います。

Sponsored Link

新惑星を探していたら偶然見つかった木星の新衛星

ネットニュースでも大きく取り上げられていましたが、今回、木星に見つかった12個の衛星ですが、実は衛星を見つけようとして発見されたのではなく、太陽系第9惑星・プラネットナインを探す過程において偶然に発見されたのだと言います。

ですが、プラネットナインと木星の衛星は全く異なり、探索する領域も違うのではないでしょうか?
と、そんな疑問はあるかと思いますが、この衛星たちが見つかった理由は、冥王星の遥か外側の軌道にあるとされるプラネットナイン探索のために、チリにあるセロ・トロロ汎米天文台の超高感度望遠鏡を向けた方角にたまたま木星があったためであり、また、この強力な望遠鏡の性能のおかげで、これまで見つかっていなかった小さな衛星がいくつも発見されたのだと言います。

「Image Credit:セロ・トロロ汎米天文台(Guillaume Doyen/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA)」
●参考記事:【太陽系第9惑星(プラネットナイン)の発見はいつになるのか?】

Sponsored Link

木星の新衛星の特徴

今回見つかった衛星12個が、何故これまで発見されなかったのでしょうか?
その原因は、これらがいずれも直径が1~3キロほどと小さな衛星で探索が非常困難だった事にあり、この衛星12個のうち2個は木星に非常に近い軌道を周回しており、おそらくは元々は大きな天体だった可能性のある天体が巨大な重力を持つ木星に近かったため、その潮汐力でコナゴナに砕けてしまいその残骸が今回発見された2個の衛星ではないか?と推測されています。

一方、残りの10個は木星から離れた軌道を周回しており、うち9個はお互いに近接した軌道を本来の軌道とは逆の方向(逆行)に周回していると言います。

「Copyright ©:Carnegie Science All rights reserved.」
これらの9個の衛星の起源は、元々は数百キロ程度の衛星が隣接して複数存在し、木星の潮汐力とお互いの重力の影響で衝突して破壊された残骸ではないか考えられています。

新発見の衛星で唯一公式名称が付けられた衛星

木星の新衛星12個はまだ発見されたばかりにも関わらず、既に1つの衛星には公式名称が付けられています。(2018年7月現在は提案)

その衛星の名前はウァレトゥード(Valetudo)

「Image Credit:新衛星12個の軌道。緑色の軌道は衛星ウァレトゥードCARNEGIE INSTITUTION FOR SCIENCEより)」
ちなみに、ウァレトゥードという名前の由来は、ローマ神話に登場する「健康と衛生の女神」から来ていると言います。

なお、衛星ウァレトゥードの軌道は逆行しておらず、他の衛星同様に木星の自転方向に周回していますが、衛星ウァレトゥードは木星に傾いた軌道で、今回発見されたうちの3つの衛星を横切る軌道を取っていることから、ウァレトゥードが逆行衛星と衝突した事で9つの衛星群が誕生した可能性があると推測されています。
もっとも、ウァレトゥード自体も衝突で砕け散り、現在の衛星はその名残りではないか?とも考えられています。

意外と多い木星の逆行衛星

今回、新たに12個の衛星が確認された事で、これで80個となった木星の衛星ですが、それでも土星の83個には及ばず、太陽系の惑星第2位の衛星数になります。

「Copyright ©:惑星ごとの衛星数 All rights reserved.」
そんな数多い木星の衛星の中で、最も目立つほど大きく有名なのが「ガリレオ衛星」で、木星から近い順にイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストの4衛星で、これらの衛星は市販の天体望遠鏡でも観測出来るくらい大きな天体です。

「Image Credit:木星と4つのガリレオ衛星(Wikipediaより)」
しかし、木星で大きな衛星はこの4つくらいで他は岩石の塊のような直径200キロ以下の衛星ばかりと、発見された新衛星12個も皆、直径1~3キロ程度の小型の衛星ばかりです。

「Image Credit:ガリレオ衛星の次に大きい衛星アマルテア(NASA/JPL/Cornell Universityより)」
また、木星の自転方向とは逆に公転する逆行衛星も多数存在(衛星アナンケ、カルメ、パシファエ、シノーペ等)。
逆行衛星の多くは、木星の引力によって捕らえられた小惑星が逆行したまま衛星になってしまったモノと見られており、他の小さな衛星群もおそらくは元々は大きな天体で、木星の強い潮汐力でバラバラに破壊されてしまったモノと考えられています。

たくさんの衛星を持ち、それらを破壊するほど大きな重力を誇る木星。
木星の質量は地球の約320倍。

その質量が創り出す潮汐力は想像を絶するほど強力なモノで、衛星のみならず近くを通る小惑星や彗星をも引き寄せる大きなチカラを持っています。
Sponsored Link