オリオン座の一等星で有名な巨星・ベテルギウス。
2019年の10月頃から急激な減光をはじめ、いよいよベテルギウスに最期の時が迫りこの減光が超新星爆発の兆候ではないか?と世界中で注目されたのですが、減光をはじめてからわずか4ヶ月ほどで再び元気を取り戻し?増光に転じて来ています。
天文学者等、多くの専門家をはじめ天文ファンたちも、人類が初めて体験するであろう近距離での超新星爆発を期待していたのですが増光となると超新星爆発もお預けか?と少し残念に思いますが、同時に冬の代表星座・オリオン座の消滅も無くなるワケですのでそこは安心できるところかも知れません。

ですが、何故ベテルギウスはこんな短期間で減光から増光を起こす事になったのでしょうか?
◆参考記事:【ベテルギウス急速減光で人類史上最高の天体ショー幕開けか?】

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一時は2等星まで転落したベテルギウスの急激減光

夜空を見上げれば無数の星が輝いています。
そんな無数の星の中でもひと際明るい一等星は、北半球、南半球を合わせた全天を通してもわずか21個しかありません。

オリオン座のベテルギウスは数少ない一等星のうちの一つで、平均視等級が0.4と21個の一等星の中で9番目というかなり明るい星でもあります。
しかし、2019年10月末頃から急激な減光を始めたベテルギウスは、翌2020年1月下旬には視等級が二等級に該当する1.6以下まで下がるという事態になってしまいました。

「Image Credit:グラフの”緑点”がベテルギウスの明るさを表します。(AAVSOより)」
ですが、上図グラフをご覧いただければおわかりのように、ベテルギウスの明るさを示す緑色の点が1月下旬以降上向きになっています。
つまりこれは、これまで急激な減光を示していたベテルギウスが一転して増光に転じているという証拠を示しています。
では何故、ベテルギウスは急激な減光をし、そして増光に転じたのでしょうか?

変光星のベテルギウスにとって減光は珍しい事ではない

地球からは赤くそして明るく輝く小さな星にしか見えませんが、実際のベテルギウスは太陽の1,000倍を超える大きさの赤色超巨星です。
太陽の1,000千倍以上の大きさと言われてもいまいちピンと来ないかも知れませんが、仮にベテルギウスを太陽の位置に持って来たとすると、それは木星軌道に到達する程の大きさになってしまいます。

「Image Credit:mail Onlineより(※ 左下0.015″は太陽と地球の距離である1天文単位を表します。」
しかし、本来のベテルギウスは太陽の約20倍の質量ですので、太陽のように核融合反応が安定した主系列星の状態であればここまで巨大化する事などあり得ません。
では何故ベテルギウスがこれほどまでに巨大化した赤色超巨星になってしまったのか?
その原因となるのは、ベテルギウスが主系列星を維持するための燃料である水素をほとんど使い果たしたからであり、替わりにヘリウムや炭素といった水素より重い物質が核融合反応を起こし出し巨大化していったモノと考えられています。
つまり、今のベテルギウスは恒星の命の源とも言える熱核融合反応がいつ停止してもおかしくない状態で、それに伴い活動も不安定で不規則に光度が変化し減光と増光を繰り返す変光星(半規則型変光星)である事がわかっています。
また、変光星には大きく分けて2種類あり、1つは、恒星の内部から来るエネルギーの伝達状態が不安定で、明るさが大きく変動するといった現象食変光星
2つ目は、恒星の周りの物質や自ら放出したガスや塵等で、星自体が見え隠れしてしまい明るさが変わってしまうという現象脈動変光星
このような変光星であるベテルギウスに減光や増光が起こっても不思議はないワケですが、ここまでの減光現象が起こったのはベテルギウスの観測史上はじめての事でした。
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ベテルギウスが増光に転じた理由とは?

短期間での急激減光の後、増光に転じて来たベテルギウス。

「Image Credit:減光前(左)と減光後(右)のベテルギウス(Brian Ottum/EarthSky)」
上画像を参照していただくと、左側が2016年2月に撮影された減光前のベテルギウスで、右側が2019年12月末に撮影された減光時のベテルギウスで、明らかに暗くなっているのがお分かりか?と思います。
では何故、これほどの短期間でベテルギウスは暗くなってしまったのでしょうか?

その原因については推測の域でしかありませんが、おそらくは、ベテルギウスから大量の塵が噴出して星の光を遮ったのではないか?との見方があるようです。
ただ、ベテルギウスから大量の塵が噴出したのが急激な減光の原因だったとすれば、この現象は赤色超巨星が重力崩壊を起こして超新星爆発する直前の兆候ではないか?との考えも同時にあるようです。

専門家たちが待ち望むベテルギウスの超新星爆発は起こるのか?

このサイトでも何度もお話していますが、もし今後ベテルギウスが重力崩壊を起こし超新星爆発をしてしまった場合、人類史上初めての経験をする事になります。

地球からベテルギウスまでの距離は約530光年。
単純に考えると光の速さで530年もかかってしまうとても遠い場所にある星ではありますが、天文的な距離感覚ではこの距離はむしろかなり近いと言えます。
事実、これまで人類はこれほどまでに近い距離で起こる超新星爆発は経験した事がありません。

では、もしこの距離で超新星爆発が起こってしまったらどうなるのでしょうか?
それをシュミレーションした動画が公開されていて、視聴回数も1千万回を超えている有名な動画なのでご存じの方も多いか?と思います。

「Copyright ©:masaharu yajima All rights reserved.」
この人類未経験の近距離で起こるであろう超新星爆発は、残念ながら今回の減光で爆発は起こりそうにもありません。
ですが、星が近距離で爆発するのに何故、危険ではなく残念なのでしょうか?
それについては動画シュミレーションでもあるように世界中の人がこの一大天文ショーを観測出来る事に加え、地球に直接の被害が及ばない事があり、何より天文学者等の専門家たちにとってはこれほどの好条件で星のメカニズムを観測出来る機会がないからです。
ただ、おそらくベテルギウスの超新星爆発は間近に迫っている事は間違いないようで、専門家たちはその現象が数年の間、もしくは数十年の間に起こる事を期待しています。

しかしながら、間近とは言ってもベテルギウスがいつ爆発するか?は誰にもわからない状況であり、それは明日かも知れませんし、数百、数万年後かも知れません。
それに、もしかしたらもうベテルギウスは爆発している可能性もあり、何故なら、今回の急激な減光は530年前に起こった事で、つまり、日本の歴史で言うところの織田信長や豊臣秀吉が生まれるた頃に起こった現象を、今私たちが見れている事になるからです。
その後の530年の間でベテルギウスが超新星爆発を起こしてしたら、私たちが爆発を観測出来るのは今後640年の間のどこかで観れるという事になります。
そしてつい忘れがちになるのですが、ベテルギウスを含む夜空に輝く美しい星々は、全て過去の出来事が映し出されているタイムマシンである事も改めて認識する必要があるかも知れません。
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