先日、X線天文衛星「ひとみ」の打ち上げ成功により、ブラックホールの謎に挑むという事が話題になっています。
ブラックホールは光も発せず目に見えないためこれまで理論上の天体でしたが、実際にその存在が確認されてからそれほど時間は経っていませんし、宇宙のどこにどれだけブラックホールが存在するかも明確にはわかっていません。

謎に包まれ、全てを吸い込む危険な天体とされるブラックホールですが、どこにあるかわからないだけに意外と地球の近くに存在するかも知れません。

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はじめて存在が確認されたブラックホール

目に見えないブラックホールですが、理論的にその存在を提唱されたのは早く18世紀後半にイギリスの科学者・ジョン・ミッチェルによって理論化されました。
そして実際に存在が確認されたのが1971年。太陽系から約6,000光年の距離にある「はくちょう座X-1」。
この「はくちょう座X-1」は巨大な重力を持つ連星の天体と考えられており、片方の星(恒星)から流れ出たガスが、伴星と思われるもう一方の天体に吸い込まれて強力なX線を放出していることが確認され、この伴星がブラックホールではないか?と考えられたのが最初でした。

「Image Credit:はくちょう座X-1の想像図(Wikipediaより)
ブラックホールは可視光では見えませんが、X線観測によって発見出来るように以降、数々のブラックホールが見つかって来ましたが、中でも、我々の太陽系が所属する”天の川銀河”の中心にも、太陽の400万倍以上と思われる超巨大なブラックホールも確認され世界を驚愕させました。
※ 追記:2022年5月12日。国際プロジェクトイベントホライズンテレスコープ (EHT) によって、いて座A*に存在する超大質量ブラックホールの直接観測に成功したと発表があり、その画像が以下となります。

「Image Credit:いて座A*(Wikipediaより)」

見えないブラックホールの中心には何がある?

ブラックホールは、太陽質量の30倍以上ある恒星の寿命が尽き、超新星爆発を起こした後の中心に残った超重力天体がブラックホールだと考えられています。
そんな超重力であるブラックホールの中心は、時空が屈曲された高密度の”特異点”が存在するとされ、この特異点に近づく物質は無限ともいえるほど小さく押し潰されるとされ、つまり、ブラックホールは物質を吸い込むのではなく、次元すら存在し得ないくらいまで押し潰してしまう”無”になるというワケです。
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ブラックホールはいずれ蒸発する?

これまでブラックホールは周りの物質を吸い込み押し潰してしまうだけか?と考えられてきましたが、スティーブン・ホーキング博士らにより、ブラックホールはエネルギーを放出していると理論付けし、ホーキング放射という時空の揺らぎを起こしていると言います。
このホーキング放射によりゆっくりと蒸発し、いずれは消滅してしまうと考えられますが、確かに、そうでないと宇宙はブラックホールだらけになってしまいますので、ホーキング放射とういうブラックホールのエネルギー放出の考え方も理解出来ます。

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地球に最も近いブラックホールは?

さて、宇宙のあちこちに点在すると考えられている危険なブラックホールですが、残念ながら現在の観測技術では探し出すことが非常に困難で、ブラックホールの位置を正確に捉えることが出来ないのが現状です。
そんな中でも、いくつかブラックホールではないか?と考えられる天体も見つかっており、現在地球に最も近い天体が「いっかくじゅう座X-1」で、約3,000光年離れている連星のひとつです。
しかし、今後それよりももっと近い距離にブラックホールが誕生する可能性もあります。

それは地球から約640光年離れたオリオン座の一等星・ベテルギウス。この星はもう間もなく星としての一生を終え、超新星爆発を起こすと考えられています。

「Image Credit:末期状態となり巨大化したベテルギウス(Wikipediaより)」
ブラックホールになるであろう恒星の質量は、太陽の30倍以上だと考えられていますが、ベテルギウスの質量は約20倍ですので、ブラックホールではなくその一歩手前の中性子星になるのではないか?とも考えられますが、必ずしもブラックホールにはならないとも言い切れませんので、今後のベテルギウスの動きに注目したいところです。

もし、今後ベテルギウスが超新星爆発を起こしブラックホールになったとしても、光の速さで600年以上かかる距離にありますので地球や太陽系に影響は無いものと思われます。
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