地球外生命探査。まずは、太陽系の中で地球以外に生命が居る可能性があるとして期待されている4天体があり、その中でも最有力候補と目されているのが土星の衛星「エンケラドゥス」です。
地球から遠く離れた土星の衛星であって、探査機を送るにもかなり大変なエンケラドゥスに対し、生命がいるかどうかをどうやって調べるのでしょうか?
実は、探査機がエンケラドゥスに到達さえすれば、意外と簡単?に調べる事が出来るそうなんです。
エンケラドゥスってどんな星なの?
当サイトでも、何度かエンケラドゥスについて解説していますが、改めてどんな天体なのかについてご紹介しますと。エンケラドゥスは土星の衛星で、直径が約500キロと地球の衛星である月と比べると7分の1程しかない小型の衛星です。
「Image Credit:Wikipedia」
この衛星の特徴は、上画像↑↑でもわかるようにその見た目の白さ。表面全体を白い氷の大地で覆われているため「太陽系の中で最も白い星」と呼ばれ、他の天体(衛星)に比べ美しくも見える星です。
そんなエンケラドゥスの表面温度はマイナス180℃以下で、白い氷のも桁違いのブ厚さで20~25キロもあると考えられています。
エンケラドゥスの地下には熱源がある!?
エンケラドゥスと主星である土星の平均距離は約24万キロ。地球と月の距離が約38万キロですから、大きさが地球の約9倍で質量が95倍もある土星との距離感を考えたら、エンケラドゥスはかなり土星に近い距離を公転していると言えるでしょう。つまり、この土星との距離の近さこそがエンケラドゥスに生命が居るかも知れないという期待を持たせてくれる理由の一つであり、さらにエンケラドゥスは、外側の軌道を公転する直径約1,000キロの衛星・ディオネと軌道共鳴の関係にあり、ディオネが土星を一周公転する間にエンケラドゥスは二周公転しています。この土星との距離と軌道共鳴によりエンケラドゥスには強い潮汐力が働き、内部に摩擦熱が発生し地下に熱源があるものと推測されているのです。
「Image Credit:エンケラドゥスとディオネの公転軌道(Wikipediaより)」
エンケラドゥスの生物探査は地下の熱源から放出される氷と水蒸気の調査
エンケラドゥスに生命が居る可能性を発見したのは、土星探査機・カッシーニでした。カッシーニは、スイングバイを行うためエンケラドゥスに接近し南極付近を通過した際、表面のひび割れ(タイガーストライプ)から水蒸気や氷が吹き出している事を発見。後の観測・分析から噴出物には塩とシリカの塵が含まれていることが明らかになりました。
「Image Credit:エンケラドゥス表面のタイガーストライプ(右)と水蒸気や氷の粒が噴出している様子(左)(NASA/JPL/Space Science Institute.より)」
この事からエンケラドゥスの地下には塩分を含んだ海が広がっているモノと思われ、そこには地球の深海のような世界が広がり、生命が存在している可能性があると期待度が高まるようになったのです。
「Image Credit:エンケラドゥス内部の熱源と地下の海を表したイラスト(右)と水蒸気や氷の粒が噴出している様子(左)(NASA/JPLより)」
土星のE環はエンケラドゥスによって造られている
衛星エンケラドゥスの主星である土星。この惑星の最大の特徴は誰もが知るレコード盤の溝のような巨大で美しい環(リング)です。「Image Credit:Wikipedia」
土星の周りを幾層にも連なる環(リング)の外側を薄い層で取り巻くE環の中を公転しているのがエンケラドゥスで、そのE環の形成に寄与しているのがエンケラドゥスから放出された水蒸気や氷から成る微粒子だとされています。
「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
今後予定されるエンケラドゥス探査スケジュール
エンケラドゥスには本当に生命が居るのか?それを確かめるには、数十キロもある厚い氷の下に潜り調査する必要があるかも知れません。しかしながら、その調査を行うには超高度な技術が求められてしまい、残念ながら今の人類の技術ではエンケラドゥスの氷の下まで潜る術はありません。そこで現在の技術でも可能なエンケラドゥス生命探査で考えられているのが、エンケラドゥスから放出されている微粒子を採取し調べる事。
エンケラドゥスからは、地球の海底にある熱水噴出孔付近には微生物に富んでいるシリカ微粒子が存在する事が知られており、おそらく地下に熱源があるエンケラドゥスからもシリカが存在している可能性があると考えられている事から、土星のE環を含めたエンケラドゥス由来のシリカを採取出来れば、地球外生命体の証拠を見つける事が出来るかも知れないのです。
NASAはこのエンケラドゥスから放出されているシリカを採取するミッションを計画中「エンケラドゥス・オービランダー・ミッション」であり、予定では2038年に計画を実行するとの事です。
「Image Credit:エンケラドゥスに接近する土星探査機カッシーニの想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
このミッションでは、探査機がエンケラドゥスを1年半ほど周回し、その後はエンケラドゥスに着陸して2年間ほど滞在し調査を行い、地表付近にあるシリカ等微粒子を採取する計画だと言います。
なお、探査機がエンケラドゥスに訪れ調査を行い、最終的に調査結果がわかるのは2050年頃ではないか?と見られています。