爆音と巨大な炎を噴き出し宇宙へ飛び出すロケット。
それは大掛かりで圧巻。それ故にロケット打ち上げには莫大な費用がかかり庶民が宇宙に行くなんて夢また夢で、こんなロケットで宇宙に行ける人はほんの一握りの特別な人だと、皆が思う事でもあるのではないでし
しかし、そんな庶民でも近い将来は気軽に宇宙に行ける時代がやって来るかも知れません。しかもロケットではなく飛行機で行けるというのです。
2011年にアメリカ航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルの運用が終了して以降、宇宙飛行士を乗せて宇宙に行ける手段は、ロシアの旧式ロケット・ソユーズしかありません。(2017年現在(中国は除く))
日本人宇宙飛行士も数人が、このソユーズロケットに搭乗し宇宙に飛び立っています。
「Image Credit:NASA/GCTC/Andrey Shelepin」
しかし、このロケットに搭乗するためには、宇宙飛行士1人あたり約100億円という莫大な費用がかかり極めて高コストだと言えます。
また、最近では民間が宇宙開発に参入する事で、ロシアのロケット以外でも徐々に宇宙に行けるようになって来ています。
「Image Credit:SpaceX/NASA」
もちろんNASAもロシアや民間企業に頼っているワケではなく、スペースシャトルに代わるロケットを新たに開発中(2017年現在)ですが、それでも高コストには変わりなく、さらに搭乗できる人間も限られているままです。
そんな高いコストでは、私たち庶民が宇宙に行きたいという夢を叶えるのはとても無理なのでは?!と諦めムードもある中、それでも、もしかしたら庶民の夢を叶えてくれそうな宇宙船が実現される可能性が出て来るかも?と淡い期待もあったりもします。
そこで、最近注目され出して来ているのが、民間の会社が宇宙ビジネスに乗り出し開発を進めている事案です。
ジェットエンジンとロケットエンジンを併用した「スペースプレーン」
イギリス企業のリアクション・エンジンズ社は、通常の航空機のように大気圏内を飛べるエンジンと、宇宙ロケットに使用する液体燃料エンジンの両方を1つの機体に搭載したスペース・プレーン「スカイロン」を開発しているそうです。「Image Credit:Reaction Engines」
この「スカイロン」には、液体水素と液体酸素が燃料として積まれており、大気圏内では空気中の酸素と液体水素を反応させジェット推進を作り出し飛行します。
そして、宇宙に飛び出す時には液体酸素を燃焼させてロケット推進で加速し、一気に音速の20倍まで加速することが可能だそうです。
なお、この「スカイロン」に搭載するジェット・ロケット併用エンジンを、新世代型航空機エンジン「SABRE(Synergistic Air-Breathing Rocket Engine)」と呼ぶそうです。
このSABRE(セイバー)を搭載した「スカイロン」は宇宙飛行機として運用され、滑走路からジェットエンジンで飛び立ち、上空で大気圏を離脱するときは、ロケットエンジンに点火して宇宙に飛び出すという新方式をとるとの事です。
また、この「スカイロン」に搭載できる重量は11トンあり、人工衛星など荷物の運搬はもとより宇宙旅客機として活用できる画期的な乗り物になるそうです。
画期的な新世代航空エンジン
「スカイロン」に搭載されるエンジン・SABREには、これまでにない熱交換システムが採用されているとの事です。音速を超える航空機では、摩擦熱で発生する空気の温度が非常に高温になってしまい、エンジン内に入る流入空気もかなりの高温になり、エンジンそのものがその温度に耐えきらない状態になってしまいます。
そのため、新型エンジン・SABREの熱交換システムはエンジンの正面に設置され、摩擦熱で摂氏1,000度まで上がった流入空気を瞬時(100分の2秒)で、摂氏マイナス150度まで冷却してくれます。
これにより、これまでの航空機の常識を超えた速度まで加速することが出来、一気に宇宙へ飛び出すことも可能になるそうです。
画期的なのは大幅なコストダウン
SABREの熱交換システムで、スカイロンは超音速で飛べるようになります。「Image Credit:Reaction Engines」
そのスピードは、大気圏内でマッハ5.4。大気圏を飛び出すときは一気にマッハ15まで加速します。
つまり、スカイロン一機で超音速の航空機としても使えて、そのままロケットになり宇宙に飛び出すロケットにもなるわけです。
そうすることで、これまでの宇宙ロケットにかかる費用も100分の1まで軽減され、さらに宇宙基地からの大掛かりな打ち上げもなく、通常の空港からでもわずか15分程度で宇宙に行けるようになるとの事です。
この「スカイロン」。
現段階では、まだ開発途中ですが数年以内(10年以内)には完成となり実用化される計画らしく、もしこれが完成すれば人類の宇宙進出はもちろんの事、航空史も大きく変貌を遂げ次世代へ移行した超音速で飛べる民間航空機が登場する可能性も期待できるのではないでしょうか?