今年4月末に小惑星が地球に接近するというニュースがちょっとした話題になっています。
幸運な事にこの小惑星が地球に衝突する危険はないのですが、ただ、小惑星が地球に接近するという事態はそう珍しい事ではなくほぼ毎年のようにこのようなニュースを耳にします。
ですが、小惑星接近が珍しい事でないという事は、いつかは地球に衝突する小惑星が現れるかも知れない。と冷静に考えれば、それもおかしい事ではありません。
では、小惑星地球衝突というリスクはどれくらいあるのでしょうか?
そして万が一、そのような事態になった場合、地球が被る被害とはどれくらいなのか?
また、人類はそのような事態を回避する事は出来るのでしょうか。
小惑星地球接近のニュースとは?
この記事を書いているのは2020年3月上旬で、この時期にNASAが公表した小惑星地球接近のニュースがあり、NASAによると4月29日に直径が約1.8~4キロほどの小惑星が、地球から約630万キロの地点を時速3万キロ以上で通過するとの事でした。「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
距離的に地球と月の16倍以上も離れているため地球に及ぶ危険はないとされていますが、この小惑星は太陽を3.68年かけて周回する「1998OR2」という天体で、その公転進路が地球を横切る軌道のため潜在的に危険な小惑星として指定されている天体でもあり、また、あまり話題にはなりませんでしたが、2020年に入ってからも直径400~1キロほどの大きさがある小惑星が地球と月の距離の15倍ほどもある地点を通過しており、これも潜在的に危険な小惑星として指定されている天体でした。
小惑星地球接近は稀な出来事ではない!何故なら・・・
地球に小惑星が接近する事は決して稀な事ではなく、むしろ日常茶飯事に起こっている事と言っても過言ではありません。何故なら地球近傍には大小無数の小惑星が存在しており、そのうち少なくとも数千個以上は地球に接近する軌道要素を持っているとされ、その天体は潜在的に危険な小惑星(略称:PHA)に分類されており正確は数はわかっていない事が現状です。
つまり詳細な情報が掴めていないため、ある日突然地球目掛けて飛んで来る小惑星が出現してもおかしくないワケです。
実は小惑星・リュウグウもPHAだった!
2019年小惑星「リュウグウ」に着陸して大きな話題になった日本の小惑星探査機「はやぶさ2」は、約3億キロもの長い宇宙の旅をし目標だった小惑星リュウグウに到着したのですが、実はこの小惑星「リュウグウ」もまた潜在的に危険な小惑星(PHA)である事をご存じの人は少ないと思いますし、そればかりか、初号機の「はやぶさ」が到達した小惑星「イトカワ」もPHAだったのです。小惑星「リュウグウ」は基本的に地球と火星の間の軌道を周る小惑星ですが、その軌道要素が楕円軌道を描いているため地球の公転軌道を横切るという危険な軌道を持っている事でも知られています。
「Image Credit:小惑星リュウグウの公転軌道図(Wikipediaより)」
ただ、現時点では小惑星「リュウグウ」も「イトカワ」も地球に衝突するような軌道ではありませんので、PHAとは言っても危険視する必要はなさそうです。
しかしPHAはあまりにも多過ぎるため、現在の観測技術でもその数を正確に把握する事は不可能とされ、今後の課題として、もし地球に危険を及ぼす天体が接近して来るのであれば、いち早く発見し危険を予知する必要はあります。
「Image Credit:地球周辺にある潜在的に危険な小惑星(PHA)の軌道図予想(NASAより)」
もし直径1キロ級の小惑星が地球に衝突したならどうなる?
2020年4月末に地球に接近する小惑星もおそらくは1キロ級で、「リュウグウ」も1キロほどの大きさの小惑星です。もしそんな1キロ級の小惑星が隕石となり、地球に衝突したとするならどれほどの被害が出てしまうのでしょうか?
そんな事を調べてみたところ、仮に東京の中心部に落下した場合、関東エリアは壊滅し、東京のど真ん中に100キロほどのクレーター(巨大な穴)が出来てしまう事が予想されます。
「Image Credit:バリンジャー・クレーター(米アリゾナ州)(Wikipediaより)」
この衝突が意味する事は、関東だけではなく地球全体に壊滅的な被害が起きる事の前触れで、衝突によって大気高層部まで巻き上げられた塵や水蒸気で太陽光が遮断され、地球上全ての気候が急速に変化する事が予想され、また隕石が海上に落下した場合は巨大な津波が発生し、沿岸部の都市を次々に飲み込み壊滅的な被害が起こってしまうでしょう。
早ければ2020年代に小惑星が衝突する可能性も?
NASAをはじめ、各国の研究機関は地球を脅かす危険な天体の監視を続けていますが、そんな監視の中でもまだ軌道要素がハッキリせず、また無数の天体群の中に危険な天体も潜んでおり、もしかしたら2020年代前半にも地球に接近し衝突する可能性のあるPHAが含まれているかも知れないと一部の専門家が示唆しています。さらには巨大な小惑星の中でも「アポフィス」と「ベンヌ」は危険度が非常に高いとされており、2068年に15万分の1の確率でアポフィスが、2175~2199年に2,700分の1の確率でベンヌが地球に衝突すると考えられています。
「Image Credit:小惑星ベンヌ(Wikipediaより)」
もちろんこれか可能性の話であり正確な情報ではないようですが、それでもまだまだ謎が多く発見が難しいPHA天体は何の前触れもなく突然出現する可能性もあり、2013年にロシアで起こったチェリャビンスク州の隕石落下事件のようなケースがまた起こるかも知れません。
「Image Credit:2013年ロシア・チェリャビンスク州に出現した小惑星の隕石雲(Wikipediaより)」
人類に小惑星衝突を回避させる方法はあるのか?
今後、地球に甚大で壊滅的な被害を及ぼす小惑星が出現する確率は少なくともゼロではないと思われ、そのため専門家たちは、来るべく小惑星衝突の回避方法を真剣に模索しているという事のようで。その回避方法としていくつか案があるようですが、今最も有力視されているのが小惑星の軌道を変える方法だと言います。
ではどうやって巨大な小惑星の軌道を変えるのでしょうか?
方法の一つとして挙げられている案が「キネティック・インパクター」と呼ばれるキラー衛星を使った方法。
キラー衛星とは、人工衛星を秒速6キロで目標天体である小惑星に衝突させ軌道を変えるという方法です。
「Image Credit:NASA」
◆参考動画:【Dart Moon Collision】
もちろん、SF映画のように大きく軌道を変える事は出来ないでしょうが、この衝突で0.1ミリでも軌道を変える事が出来れば、少しずつ軌道がズレて行き地球に最接近した時は衝突コースから外れているというやり方のようです。
しかしこの方法には大きな欠点があり、目標物である小惑星が地球に衝突する遥か遠方にある時にキラー衛星を衝突させる必要がある事で、つまり、1ミリの軌道を反らし衝突回避をさせるには、軌道自体が大きくズレるための距離が必要になって来るという事で、小惑星が地球に接近してしまったときにこの手法を行っても軌道を大きく変更する事は出来ないでしょう。
実際この実験は行われていて、日本のJAXAも小惑星リュウグウで実験予定でしたが予算不足で断念したと言います。
いずれにしてもSF映画のように派手に小惑星を爆破するというような事は現実的には不可能なようで、今のところ理論上ではありますが衛星を衝突させてほんのチョットだけ軌道を変えるというこの方法が最善の策のようです。
ただ、もしも衝突まで数日~数週間という地球に近い場所で小惑星が見つかった場合は、今の人類にはどうする事も出来ず静かに運命を受け入れるしか無いようです。