いよいよ始動したNASA主導の「アルテミス計画」。
この計画は、人類が再び月面の地に立つ事を含め、更なる宇宙への進出を実現しようとする壮大なプロジェクトです。

そんな中、人類が宇宙に出るためには必要不可欠な新型宇宙服が公開され、メディアでも大きく報じられています。
今回は、この次世代型宇宙服の話題を中心に、今後のアルテミス計画の展望を調べてみたいと思います。

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アルテミス計画で使用される次世代型宇宙服をNASAが公開!

NASAは、アルテミス計画の月面探査計画で使用される新型宇宙服をメディアに向けて公開しました。


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公開された宇宙服は、2025年に予定されている有人月面着陸で使用されるモノで、最新のテクノロジーを詰め込んだ次世代型の宇宙服として開発された試作品だそうです。

「Image Credit:NASA」
上画像はアポロ計画で使用された旧型宇宙服(左)と新型宇宙服(右)を比べるために並べた写真なのですが、概観としては旧型がパイプ類が剥き出しになっている以外は、あまり見た目は変わっていないようにも見えます。(ちなみに、新型は独自設計の機密を守る目的で黒を基調とした青とオレンジの配色が施されていますが、実装版は旧型と同様に熱対策が施された白い宇宙服になるそうです。)

確かに見た目こそあまり変わらないですが、そこは50年以上前に開発された旧型とは性能がかなり異なり、月面でも動きやすいよう格段に柔軟性がアップ。
他、遮熱性能や生命維持機能の向上、さらには破けにくい材質で造られているそうで、頭部には照明とHDカメラが据え付けられています。

なお、NASAは15年程の時間をかけて新型の宇宙服開発に取り組んだそうですが、結果的に開発はうまく行かず(開発費用総額500億円以上)、アメリカの民間宇宙企業「アクシオムスペース(Axiom Space)」と共同開発した今回の宇宙服が採用される事になった経緯があるそうです。
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宇宙服の性能とお値段は?

宇宙服は真空空間という過酷な環境下で人間の身体を守り活動出来るよう造られた「命を守るスーツ」であると同時に、宇宙服の正式名称は「船外活動ユニット」といい高価なスーツでもあります。

「Image Credit:NASA」
今回、新型宇宙服として公開された月面で使用される宇宙服も、真空に加え、昼間は100度を有に超え、夜間はマイナス200度近くにもなる寒暖差約300度という超過酷な環境と、宇宙では有害な放射線も絶え間なく降り注いでいるという、この厳しい条件の中で人体を守りながら長時間活動出来るスーツを開発する必要があったため、これまでの人類の宇宙空間での活動実績等を踏まえ、時間と費用をかけて開発。新型宇宙服が公開された時点では詳しい性能や値段等は公表されていませんでしたが、アポロ計画で開発された宇宙服の運用性能は以下のモノでしたので、新型宇宙服はコレを上回る性能である事は間違いないでしょう。
・参考データ:NASAアポロ計画で使用された宇宙服の運用性能
  • 重量:約82kg
  • 運用耐熱温度:摂氏-179度~+154度
  • 運用圧力:3.70 – 3.90平方インチ
  • 連続運用時間:7時間
なお、新型になっても宇宙服の基本構造は変わっていないモノと思われ、人が宇宙空間で活動するための様々なパーツが組み合わさっている事もあり値段はかなり高価。旧型の場合、一着の価格は約10億円とも言われていました。

「Image Credit:ファン!ファン!JAXA!」


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宇宙服は場所と用途によって着替えている

今回公開された新型宇宙服は、宇宙飛行士が月面で活動するためのモノで、これは宇宙船の船内や宇宙空間の船外活動で使用するモノではありません。
つまり宇宙服は、場所と環境で使い分けており、おそらくではありますがアルテミス計画では3着の宇宙服が用意されているモノと思われます。

宇宙船内で着用される「船内与圧服」

まず、宇宙飛行士が宇宙に飛び立ち、地球に還って来る時に着用するのが「船内与圧服」で、私たちが一番目にする事が多い宇宙服もコレではないでしょうか?

「Image Credit:SpaceX, ASTRAX」
上画像↑↑は、アメリカの民間宇宙企業「SpaceX」が開発・運用している船内与圧服で、主に打ち上げ時と大気圏再突入時に着用するモノで、宇宙船内でのクルーのストレスや疲労を軽減するため、シンプルで動きやすいデザインになっています。この宇宙服の着用目的は宇宙船内での気圧や温度の変化に対応するモノで、これを着て宇宙空間で自由に活動出来るワケではありません。

月面活動用宇宙服

次が今回公開された月面活動用の宇宙服。詳しい解説は前述していますので省きますが、月面での動きやすさに加え、おそらくこの宇宙服は月面の砂(レゴリス)や岩等の対策も施されているのではないでしょうか?

「Image Credit:米ヒューストン(AP)」

最も高性能で超高価な船外活用宇宙服

そして3着目が、宇宙空間での船外活動で使われる宇宙服。
この宇宙服は動きやすさもさることながら、最も重要なのが宇宙飛行士の生命を守る事が最優先に考えられた超高性能で超高価な「着る宇宙船」とも呼ばれる宇宙服です。

「Image Credit:NASA」
この船外活動用の宇宙服は、宇宙空間に降り注ぐ有害な放射線を防ぎつつ、微小な宇宙デブリもある程度防御出来るようにする必要があります。
船外用宇宙服はこれまで国際宇宙ステーション(ISS)での船外活動にも使用されて来ましたが、アルテミス計画でも必要となるため、新たなる宇宙服の開発が必要になるという事で、約1億ドルをかけて新型を開発しているそうで、2026年にはこの新型が完成するとの情報も入って来ています。

ところで「アルテミス計画は有人月面着陸を目指すのに、何で船外活動用宇宙服が必要なの?」と思う方もいらっしゃるかも知れません。
もちろん、新型の船外活動宇宙服はISSでも使用される事になりますが、アルテミス計画は月面着陸だけが目的ではなく、月周回軌道上に月面や火星に向けた中継基地を建設する「月軌道プラットフォームゲートウェイ」があります。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの想像図(NASAより)」
つまり、新型の船外活動用宇宙服は、このゲートウェイ建設時に使用される事が濃厚だと思われ、建設時には欠かせない宇宙服になる可能性が高いでしょう。
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