これまで何度か金星について取り上げて来ましたが、今回は姉妹惑星とまで言われた金星が地球とどう違うのか?再度取り上げてみました。

地球に最も近い惑星である金星、また誕生の過程も惑星を構成する材料までもが地球と良く似た金星が、何故、違う環境持つに至ったか?その運命の別れ道について触れてみたいと思います。

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本来なら生命が居てもおかしくなかったかも知れない金星

冒頭でも述べましたが、地球と金星は「姉妹惑星」と称される程、良く似ています。

「Image Credit:Wikipedia」
上画像↑↑は地球(右)と金星(左)を並べて大きさを比較したモノですが、見てわかるように金星の方が地球より少し小さいだけで、ほぼ同じ大きさと言ってもいい程、2つの惑星は良く似た大きさを持っています。
そんなよく似た地球と金星の他の概要データがコチラになります。
地球 金星
太陽からの平均距離 1億4,960万km 1億820万km
半径(大きさ) 6,378km 6,052km
質量 1 (地球:1に対して)0.815倍
平均密度 5.52g/cm3 5.24g/cm3
公転周期 365日 224.7日
自転周期 24時間 243.02日
衛星数 1 0
概要データを見ていただくと、地球と金星の距離は最短でわずか4,000万キロ程。明け方や夕方の空に大きく輝いて見えるその姿は、金星がそれだけ地球に近いという現れなのです。

「Image Credit:夜明け前に見る金星:明けの明星(tenki.jpより」
金星が地球近くて大きさや質量も地球に似ている事から、その昔は本気で「金星には生命が居て金星人も住んでいる」と信じている人が多かった程でしたが、近年の詳しい探査・調査によりその実態が明らかに。
現実の金星は地球とは程遠い過酷な環境である事が判明はしていますが、かつて(数十億年前)の金星は地球と同じように温暖な気候で海が広がり、生物が居住可能な惑星であったとの研究結果も出ています。

「Image Credit:数十億年前の金星の想像図(NASAより)」
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金星の素顔は地球とは全く異なる超過酷環境

地球と姉妹星とまで言われた金星ですが、その素顔は似ても似つかない環境です。

「Image Credit:Wikipedia」
上画像↑↑のとおり、金星の大気は二酸化炭素で常にブ厚い雲に覆われており、地表などうかがい知る事など出来ない状態であり、これが金星の温室効果を増大させる結果を生んでしまっています。
【金星の素顔(環境)】
・地表の温度は鉛も溶かす程の高熱で摂氏460℃。
・地表の気圧は水深900mに相当する圧力の90気圧。
・空は硫酸の雲が広がり、硫酸の雨が降っています。

「Image Credit:金星地表の想像図(ESA/Christophe Carreauより」
と、金星の基本的な環境はこのような状態であり、常識的に考えても地表には金星人はおろか?生命など住める環境ではない事は誰が見ても明らかではないでしょうか。

何故、姉妹星の地球と金星の運命が極端に分かれたのか?

では、数十億年前は地球と似た環境だったとされる金星が、現在はこのような姿に変貌してしまったのでしょうか?いくつか明確な原因が判明していますので挙げてみます。

生命を育むには金星は太陽に近過ぎた

主星(太陽)と惑星(衛星含む)の距離関係で、生命居住可能領域と呼ばれる「ハビタブルゾーン」という空間が存在します。
これは、主星と惑星の距離が近過ぎず遠過ぎもしない領域の事で、この距離が保てれば天体表面に水が存在すれば、水は安定した液体の状態で維持出来る環境の事を指します。

「Image Credit:NASA」
つまり、太陽系において地球はハビタブルゾーンの範囲内に位置していますが、地球より太陽に近い金星はこの範囲外にある事になり、地球と太陽の距離を1とすれば、金星と太陽の距離は約0.7に相当。この近い距離のおかげで金星は地球の約2倍もの太陽熱を浴びていると考えられ、仮に数十億年前の金星に水があったとしてもこの熱で少しずつ水が蒸発していったと思われます。

太陽の光の強さが増している

太陽系が誕生した創成期の太陽は現在より暗く、降り注ぐ熱も弱かったとされています。その事により太古の金星には豊富な水があった可能性がありましたが、長い年月をかけて太陽光は増し、45億年前に比べると現在は30%程増加していると考えられています。
これも原因のひとつとなり、金星の水が干上がってしまったのかも知れません。

「Image Credit:旧ソ連のベネラ13号が撮影した実際の金星地表(Ru.Wikipedia

金星の自転周期と自転の向き

地球と金星の大きな違いに自転があり、地球は約24時間で一回転しているのに対し、金星は一回転するのに242日以上もかかっています。

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しかも自転方向は地球とは逆回り。とは言っても実際は逆回りではなく、金星は極軸(北極・南極)方向が反転しているため逆回りに回転しているように見えるのです。

でも何故、金星の極軸が反転してしまったのか?その原因については、太古に巨大な天体と衝突して反転してしまった「ジャイアントインパクト説」がありますが、実際のところ不明でわかっていない事です。

金星には衛星が無い

地球には”月”という惑星との比率としてはかなり大きい衛星があります。
生命に育まれている地球にとってこの月の存在は非常に重要で、月がある事で強力な潮汐力が生まれ、大気や海の循環を促し、さらには地軸や自転速度を安定化してくれています。
もし、金星にも月のような巨大衛星があったなら、少しは環境が緩和されていたかも知れません。

超過酷環境の金星にも生命がいる可能性あり?

表面温度は500℃近く、気圧も90気圧と超過酷な金星の地表環境。こんな状態ではとても生物等住む事は出来ないでしょう!?ですが、最近の調査で「もしかしたら上空なら生命体がいるかも?」と話題になっています。
それは、金星の大気上層部で硫酸の雲がある更に高層部。ここにホスフィンと呼ばれるリンと水素の化合物が検出されたといい、ホスフィンは生命活動に由来するのではないか?とも指摘されています。

「Image Credit:金星の大気上層部にホスフィンと見られる黒いシミを発見(NASAより」
しかしこのホスフィンについては異論もあり、火山活動で大気中に放出された金星内部のリン化物から生成された可能性も示されており、現時点ではハッキリしていないため、今後の更なる調査に期待がかかるところです。
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