これまで人類は数々の太陽系外惑星を発見し、その中には地球に似た惑星もいくつか見つかっています。
ですが、その地球型惑星のほとんどは主星(太陽)が赤色矮星を周る惑星であり、いくら地球型惑星だと言ってももそこには生命が居ない可能性があると懐疑的な意見も多くありました。

何故なら、赤色矮星を周る惑星は生命生存出来る環境を創れていないのでは?という懸念があったからであり、観測技術の発達でようやく地球型惑星が見つかるようになって来たのに、それって残念な事で夢が壊れるような話にも聞こえます。
でも、これまでの見解を覆す「赤色矮星の惑星にも生命居住可能かも知れない」という期待度が高まる研究結果が発表されました。
今回は、この研究結果について少しまとめてみました。

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何故、赤色矮星の惑星は生命居住に適さないのか?

赤色矮星は太陽よりも小さく低温の低質量恒星で、天の川銀河内の7割を占めていると考えられているありふれたタイプの天体で知られています。

「Image Credit:太陽(左図)赤色矮星(右図)例(Wikipediaより)」
上図↑のように太陽よりもかなり小さく、表面温度も低い(摂氏2,000℃~4,000℃(太陽の表面温度は摂氏約6,000℃))ため赤く見る事から赤色矮星と呼ばれるこの恒星を周回する惑星は、主星(太陽)にかなり近い近い公転軌道を持っている事もわかっており、その惑星に大気と水が存在するのではあれば温暖な状態を保つ事が出来、水も液体を維持出来るとされるハビタブルゾーンも近い事から、惑星が主星活動の影響を受けやすいと考えられています。

赤色矮星を周回する惑星は潮汐ロックを受けやすい

主星である赤色矮星を公転する惑星は距離が近い事から、互いの重力に引かれ合う共通重心の影響が大きいため、その潮汐力により惑星の重心が主星の方に傾いてしまい、常に主星に同じ面を向けて回転する現象を起こしており、自転周期と公転周期が等しくなる自転と公転の同期現象(潮汐ロック)にある可能性が高いと推測されています。

この潮汐ロックの現象は地球と月でも起こっており、月の表面の模様(日本ではうさぎが餅をつく姿に例え)がいつも同じなのは、月が常に同じ面を地球に向けている潮汐ロック現象の何よりの証拠であり、地球と月だけではなく太陽系のほとんどの惑星と衛星には潮汐ロックが起こっています。

このように惑星と衛星の関係なら潮汐ロック現象が起こってもさほど大きな問題はないかと思われますが、これが恒星と惑星との間で起こる潮汐ロック現象であれば状況が大きく変わって来ます。
つまりこれは、惑星はいつも主星(太陽)に向かって同じ面を向けているという事は、その惑星では太陽が昇って沈むという地球では当たり前の事が起こらないという事になってしまいます。
すなわち、惑星の片面は常に昼間で、もう片面は常に夜という事になり、この状況がずっと続けば昼間の側は太陽熱に温められ続けられ灼熱の状態になり、一方の夜側は極寒の環境になってしまう事が考えられ、いくら惑星がハビタブルゾーンにあったとしても、そこでは生命を存続させる事が困難な環境が出来てしまうと予想されるのです。
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赤色矮星ではフレアが起こりやすい

赤色矮星は低質量で低温の小さな恒星ですが、その活動は活発で表面で強力な爆発現象「フレア」が発生しやすい天体としても知られています。

「Image Credit:S.Dagnello,NRAO/AUI/NSF」
赤色矮星で巨大なフレア(太陽風)が起こると、惑星は至近距離で強烈な爆風に晒されてしまう事になります。
このような状態に置かれた惑星で、いくらハビタブルゾーン圏内にあったとしても生命存続には致命的になってしまい、場合によってはフレアで大気そのものが剥ぎ取られてしまう可能性もあります。

最新の研究でわかった「赤色矮星のフレアは惑星に影響しないかも?」という事

上画像↑のように、赤色矮星の低緯度付近で巨大な太陽風(フレア)が起こった場合、黄道面で公転する惑星に大きな影響が出てしまう可能性がありますが、最新の研究では強力なフレアは赤色矮星の高緯度で発生する傾向があり、惑星への影響は限定的かも知れないというのです。

「Image Credit:AIP/ J. Fohlmeister」
また研究によると、赤色矮星を周回する惑星にも地球と同じような磁場を持っている可能性があり、その磁場が主星である赤色矮星からやって来る紫外線等、有害な放射線を保護してくれるバリアの役割を果たしているかも知れないとしており、これが事実ならこれまで発見されて来た赤色矮星を公転する地球型惑星に生命がいる可能性も高くなる事になるかも知れません。

赤色矮星の地球型惑星がフレアの影響を受けなかった場合の生命居住の可能性

赤色矮星において、太陽と同じように黄道面に沿った公転軌道上に惑星が形成され、なおかつ形成された惑星の位置がハビタブルゾーン圏内であり、さらに太陽風(フレア)の影響を受けにくいとなれば、その惑星に生命が存在していても不思議ではないかも知れません。

ただ気になるのは前述もしました潮汐ロックの問題があります。
潮汐ロックは天体同士の距離が近い場合に起こりやすい現象のため、低質量で低温の赤色矮星と惑星の間に潮汐ロックが起こってしまう可能性は非常に高いと思われます。
しかし、これも最新の研究結果によると「潮汐ロックが起こっている惑星でも生命が育まれる可能性がある」としています。

その理由は、その惑星に十分な大気と水(海)が存在すれば大気と水の循環が生まれ、惑星全体が適温に保たれる可能性があり、また潮汐ロック状態でも昼と夜の境目領域(トワイライトゾーン)なら適度な太陽光にも恵まれ、その場所には生命が繁殖出来る環境が整っているかも知れないというのです。

「Image Credit:YouTubeより」
このような潮汐ロック惑星でのトワイライトゾーンはわずかな領域ですが、この惑星で人類のように高度な文明が生まれれば、生命生存には向かない領域も克服し惑星全体に生活圏を広げている可能性もあるかも知れません。
いずれにせよ、専門家による研究結果でもこれは可能性の話であり実際はもっと観測を続ける必要があるでしょう。
そして、もしかしたら近い将来に本当に地球外に生命を発見し、知的文明の発見もあり得るかも知れない期待はあります。それだけ宇宙には生命が育まれる可能性のある赤色矮星がたくさんあるのです。
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