よりリアルを求める肉体派のハリウッドスターで有名なトム・クルーズ氏。
彼が実際の宇宙で映画撮影に挑むってニュースが、2021年に伝えられ話題になった事を覚えているでしょうか?
それは史上初の試みって事で話題になったのですが、その後ロシアに先に撮影を敢行され話題性が失速したように見えましたが、トム・クルーズ氏サイドはさらに壮大な計画を打ち立てているようでその続報がスゴい計画との事。
なんと!ISSに世界初の映画スタジオ・モジュールを建造して本物の宇宙映画をつくる計画だとか。
世界初の宇宙シーン専用撮影スタジオが2024年オープン
世界初の宇宙映画撮影スタジオが造られるのは国際宇宙ステーション(ISS)だろの事で、ISSはいくつものモジュールが接続されている地球低軌道に浮かぶ巨大な有人施設で、日本の宇宙実験棟「きぼう」もそのモジュールのひとつです。「Image Credit:Wikipedia」
そんなISSに英エンタメ会社のスペース・エンターテインメント・エンタープライズ(SEE社)が、「アクシオム・スペース(Axiom Station)」内に設置する商業用モジュール内に映画・テレビ撮影が可能なSEE-1という施設を設置するとの事。
この記事の冒頭でトム・クルーズ氏の名前を挙げた事で、あたかもトム・クルーズ氏が宇宙にスタジオをつくるみたいになったかも知れませんが、実はそうではなく、あくまでも彼が主演する映画がSEE-1で撮影する映画第一号との事のようです。
ちなみにSEE-1では宇宙空間での撮影が行われるだけでなく、映画やテレビ・音楽・スポーツ等の各種イベントの開催にも対応し、コンテンツ開発・レコーディング・ライブ配信といった様々なエンターテインメントの使用することも可能であるといいます。
なお、ISSに建造されるアクシオム・スペースですが、その後は母船であるISSから切り離され単独で地球低軌道を周回しながら運用されるとの事です。
ISSが商業用宇宙ステーションに生まれ変わる背景
現在、国際宇宙ステーション(ISS)は、アメリカやロシア、欧州、日本、カナダなどの国々が協力して建造した国家事業の実験施設として運用されていますが、建造開始から約四半世紀を経過し老朽化が進んでおり、これまでISSでは建造から運用まで16兆円以上の莫大な費用がかかっていますが、それが老朽化により運用終了の岐路に立たされています。そんな老朽化での運用続行が不可能となるISSですが、当初の予定では2030年までには地球の大気圏に落として焼却廃棄処分となる予定でした。
実際最近では、老朽化が原因と思われる空気漏れがロシアモジュールで発生しています。
「Image Credit:ISSロシアモジュール(ROSCOSMOSより)」
しかし、廃棄処分するにしてもサッカーグラウンドほどの大きさに約420トンもの質量があるため、大気圏に落としても完全に燃え尽きなくて地上に落下する危険もあり、何より莫大な費用を投じて建造されたこの施設を処分してしまう事も憚れる事もありその方針が転換されようとしています。
それがISSの運用終了後に民間に譲渡し商業施設として生まれ変わらせる事で、その背景には、これまで宇宙開発は国家事業として行って来ましたが、21世紀に入り民間企業が宇宙事業に参入している事があり、その勢いは凄まじくスペースX社やブルーオリジンを筆頭に民間会社独自で宇宙航行が出来るようになるまでに急成長しています。
「Image Credit:Blue Origin(ブルーオリジン)」
このような事からアメリカ航空宇宙局(NASA)では「商業地球低軌道開発プログラム(Commercial LEO Development program)」を進行しており、ISSに退役後は発展的に民間企業へ移管。これにより地球低軌道における米国の継続的なプレゼンスの維持、そして宇宙ビジネスの振興を目指しています。
商業企業が目指すISSの有効利用
NASAはISSが退役した後の商業用の宇宙ステーションを開発するため次世代宇宙探査技術パートナーシップを計画しており、その計画の一環として選出されたのが、今後宇宙で映画撮影を行うアクシオム・スペースは、まず国際宇宙ステーション(ISS)に接続する形で建造されます。ちなみに、トム・クルーズ氏が撮影を開始するのはアクシオム・スペースが出来る前の2022年後半からで、その後はより撮影に適したアクシオム・スペースのSEE-1で撮影が続行する可能性があるとの事。
そしてその後は2028年にISSから切り離され”独り立ち”するとの事です。
「Image Credit:単独で軌道を周るアクシオム・スペース(Axiom Spaceより)」
ただ気になるのは、現時点では資金調達の段階でまだ必要な資金が集まっていないとの噂もあり実現が不明確なところもあるようです。
いずれにせよ、今後は”ISSの跡地”を使った民間による宇宙事業が拡大しそうな予感があり、NASAはそうした商業用宇宙ステーションを開発推進するために「ブルー・オリジン(Blue Origin)」、「ナノラックス(Nanoracks)」、「ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)」との契約を結んでいます。
なお、この3社の宇宙ビジネス計画の概要は、ブルーオリジンが新たな民間専用の宇宙ステーション(オービタル・リーフ(Orbital Reef))の設立しています。
「Image Credit:オービタル・リーフのイメージ図(ブルーオリジンより)」
ナノラックスは、これまでISSでの実験設備の実施や300機以上のキューブサット(超小型衛星)の放出をビジネスとして手掛けている実績があり、それを活かした実験施設「スターラボ(Starlab)」を提案しています。
「Image Credit:スターラボ(Starlab)」
ノースロップ・グラマンも商業ステーションを提案しており、ISSに物資を補給する「シグナス」補給船などの技術を活用した実績を持っている会社です。
気になるトム・クルーズの宇宙映画の内容は?
世界初の宇宙撮影スタジオ、アクシオム・スペースSEE-1で撮影されるという映画はどんな映画なのでしょうか?映画ファンならずとも気になるところですが、2022年1月現在においてその詳細は明らかになっていません。
しかし、メディア情報によるとトム・クルーズ氏代表作でもある『ミッション・インポッシブル』のようなアクション・アドベンチャー作品になるとの事。
また、ISSが退役前に行われるこの映画。もしかしたらNASAの全面協力のもとで行われる可能性もあり、某スペースファンタジー映画のような現実離れしたSF映画ではなく、しっかりとした宇宙常識に沿ったリアリティのある映画が出来そうな予感もあります。
となると、映画ファンだけでなく天文ファンにとっても大いに期待できる映画かも知れません。