イーロン・マスク氏が火星移住計画を進めているという話は有名ですが、そんな中、同氏は2026年に自社(スペースX社)が開発している大型宇宙船「スターシップ」を、火星に向けて送り出すとSNS(X)で述べた事が話題になっています。
しかし、スターシップと言えば現在スペースX社が開発中で、まだ地球低軌道での軌道飛行試験が行われている段階なのですが、わずか1年ちょっとでこの宇宙船を火星まで飛行させる事は可能なのでしょうか?
イーロン・マスク氏が発表した火星飛行計画とは?(考察含む)
イーロン・マスク氏と言えば、今や誰もが知っていると言っても良いほど、世界有数の超有名起業家ではないでしょうか?!そんなマスク氏が悲願としている目標のひとつが、自身が経営するスペースX社で火星に有人宇宙船を送り、さらにはこの惑星に植民地を建設することであり、そのための初期の計画を実行しようとしており、同氏は2025年3月15日にX(SNS)で「スターシップは来年末(2026年末)、Optimus(オプティマス)を搭載して火星に向けて出発する」と述べています。
ちなみにOptimus(オプティマス)とは、同氏が代表を務めるアメリカの自動車メーカー(EV車)「テスラ(Tesla)」が開発したヒューマノイドロボットです。
つまり、本来ならスターシップには人間(宇宙飛行士)を乗せて火星に向かわせたいところですが、残念ながら現段階でのスターシップでの有人飛行は実現していないため、代わりにロボットを乗せて火星に行くとの事のようです。
また、これには続きがあり、マスク氏は「この着陸が成功すれば、人類の火星着陸は早ければ2029年から始まる可能性がある。ただし、2031年がより現実的な時期だと予想される」ともXで述べています。
マスク氏の言う「この着陸」とは、単に火星軌道に到達するというだけでなく、スターシップを火星地表に着陸させようと計画しているのでしょうか?もしそうであれば、おそらく重量100トン以上はあるであろう巨大宇宙船を、大気の薄い火星地表(地球の100分の1以下)にどうやって着陸させようとしているのでしょうか?

「Image Credit:月面に着陸したスターシップの想像図(SpaceXより)」
さらに、「人類の火星着陸は早ければ2029年から始まる可能性がある」とするならば、火星地表に着陸したなら、地球に帰還するために火星地表からの離脱もしなければなりません。この方法もどのようにするのか?個人的には非常に興味があると同時に「本当に(着陸)出来るのか?」という疑問も残ります。
未だ有人飛行を実現していない開発段階の「スターシップ」
有人飛行実現のため急ピッチで試験飛行を行っているスターシップですが、しかし必ずしも順調とは言えないようで、何度も失敗を繰り返しており開発は遅れているとも聞いているのですが、計画ではスターシップの火星飛行直前の2026年9月以降に有人飛行が実施されるそうなのですが、いくら火星飛行にロボットが乗ると言っても2026年末の火星飛行計画は無理があるようにも思えますが、このような発表をするという事はマスク氏には、計画遂行に自信があるのかも知れません。(動画↓↓は、スターシップの7回目飛行試験の様子(2025年1月16日))
イーロン・マスク氏が掲げる火星移住計画の内容とその実現性
マスク氏はSNS(X)でも述べたように「人類の火星着陸は2029年から2031年に始まる」としていますが、この計画が2031年までに実施された場合、今後の計画は何度も火星飛行の実験を繰り返したのち、最大100人が搭乗可能なスターシップを建造し火星居住施設を建設。そして火星移住希望者を募集し少しずつ移住させて行き、2050年までには100万人を火星に移住させるとしています。2031年から火星飛行計画が始まり、2050年には100万人が火星に移住するという、わずか20年足らずでこんな大胆な計画が実現するのでしょうか?また、どんな危険が待ち受けているかもわからない火星に、100万人もの移住希望者が集まるのでしょうか?
ちなみに、単純計算では100万人を火星に移住させるには、100人乗れるスターシップを1万回は打ち上げないと行けませんが、果たしてそんな事が可能なのでしょうか?
私見ではありますが、マスク氏の火星移住計画構想はあまりにも無謀ではないか?と思います。
ましてや、現段階においての人類は火星はおろか月面でさえ居住を確立しておらず、また、火星がどんな場所なのか?も明確には判明していない中で、本当にこの惑星に移住出来るのか?もわかっていません。
確かに、太陽系天体の中で火星が地球に最も似ている事は確かですが、その環境は地球と似ているとは、とても言えない人が住むにはとても過酷な環境である事をマスク氏は承知したうえで発言しているのでしょうか。かなり疑問には思います。
ただ、火星移住はともかくとして、この発表(発言)が、今後の人類の宇宙開発競争を加速させる可能性はあるのかも知れません。
◆ 参考記事:人類の火星移住は可能か?地球とは違い過ぎる過酷な居住環境