毎年のように彗星はやって来ますが、ハレー彗星のような大彗星とはならず、そのほどんどが肉眼で見る事が出来ず人知れず去って行っています。
しかし、2023年初頭に発見された彗星は、まさに今、地球に向かって接近中で、2024年秋には今世紀最大級の明るさを持ち、私たちに大天体ショーを見せてくれる可能性があるとの事です。

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期待外れが多かった近年の彗星たち

21世紀に入ってから世界中から注目され、夜空を賑わせてくれる彗星は残念ながら現れていません。
とは言っても21世紀に入ってからまだ20年とちょっと、今世紀を振り返るにはちょっと早過ぎますが、それでも期待を持たせてくれた彗星はいくつかあり、例えば、2013年暮れに太陽に近日点を迎えたアイソン彗星(C/2012 S1)は、一時は満月ほど明るさに匹敵する大彗星になると期待を寄せられていたにも関わらず、あまりにも太陽に接近したため、大彗星になる前に崩壊し消滅してしまいました。

「Image Credit:近日点通過直前に撮影されたアイソン彗星(Wikipediaより)」
また、2020年7月に見頃を迎えたネオワイズ彗星(C/2020 F3)は肉眼でも見える大きさまで明るくなりましたが、視等級で1~2等級ほどとそれほど明るくはならず、しかも明け方の低い空に位置していたため、それほど話題にはならず・・・といった感じでした。

「Image Credit:ネオワイズ彗星(Nicolas Lefaudeuxより)」
さらに最近で言えば、2023年2月に出現したZTF彗星(C/2022 E3)や、日本人アマチュア天文家が発見し2023年9月に接近した西村彗星(C/2023 P1)は、視等級が5~6等級と肉眼では見る事が難しい明るさにしかなりませんでした。

今度は期待度が高い彗星がやって来る?!

2023年初頭に、南アフリカにあるATLAS望遠鏡と中国の紫金山天文台でほぼ同時に発見されたC/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)(以降、紫金山・アトラス彗星と呼称)は、公転周期約8万年というオールトの雲を起源とする長周期彗星だと思われ、現在(2023年12月)火星と木星の間に軌道上にあり、時速29万キロという速さで地球に向かって来ているとされています。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
気になるこの彗星の今後ですが、2024年9月28日に太陽に最も接近する近日点を迎え、同年10月12日に地球に最接近する見込みだと言います。
なお、地球に最接近する時、彗星は地球の内側の軌道にあるため、見えるのは2024年9月から10月中旬の日没後と日の出前の短い時間帯になると考えられています。
つまり、観測する場合、日没後であれば西の空、日の出前であれば東の空を見上げれば彗星を見る事が出来、地球最接近時は金星と同じくらいの、マイナス5等級前後の明るさで見えるのではないか?と期待されてはいます。
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期待どおりに明るくならない可能性も?!

紫金山・アトラス彗星が、予想通りの明るさまで達すれば肉眼でも彗星特有の長い尾が見えるハズですが、現時点では彗星が地球から遠い位置にあるため詳細な観測が出来ない状態にあります。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
彗星のコマ(核)は氷と岩の塊で大きくてもせいぜい4、5キロほどと非常に小さな天体です。そのため、詳細な観測が出来るのは近日点を迎える直前で、地球にだいぶ接近してからでないと詳細な情報を得る事が難しいでしょう。
すなわち、彗星がどれだけの明るさで私たちの前に現れるか?は、実際に接近して見ないとわからないというのが現状なのです。

紫金山・アトラス彗星の近日点通過時、水星の内側の軌道を通るものとされており、このとき、彗星のコマ(核)が猛烈な太陽熱に耐えられるか?そして耐え切った時、どれほどのガスや塵を放出するか?で明るさが決まります。

ともあれ、今の予測の範囲内では期待度が高いC/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)彗星。正念場は近日点通過の2024年9月28日です。この日を過ぎた時点でどれだけの彗星に変貌するか?本当に金星程の明るさになれば、大きな話題となり、巷ではにわか天文ファンで溢れかえり、大勢の人が夜空を眺める事になるでしょう。
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