太陽系で最も遠い惑星は今のところは海王星であり、その距離は地球から約45億キロと気が遠くなるような距離ですが、それよりも4倍も遠い場所に新たな天体が発見されて話題になっています。
そんな遠い場所にある天体を日本の「すばる望遠鏡」が初観測したとの事なのですが、いったいどうやって地球と海王星の距離の4倍もある太陽系の果てで見つける事ができたのでしょうか?
すばる望遠鏡が初めて成功した観測史上最も遠い天体
先日、地球から約80AU(1AU:約1億4,960万キロ)というとてつもなく遠い場所に準惑星が発見された!というニュースを紹介しました。●参考記事:【謎の第9惑星と公転周期4万年の準惑星「ゴブリン」】
しかし今回はそれよりももっと遠い約120AUの位置に準惑星が発見され、その天体を我が日本が誇る大型光学赤外線望遠鏡(通称:すばる望遠鏡)が観測史上初めて確認しています。
「Image Credit:space.com」
上↑↑は、すばる望遠鏡が捉えた120AUの距離にある準惑星で、画像の中央部分で少しだけ動いて見える小さな点がその天体です。
このように、すばる望遠鏡が初めて観測した史上最遠の天体について、これが本当にそうなのか?と、改めてチリのラスカンパナス天文台にあるマゼラン望遠鏡で確認したところ、「間違いない!」と認定されたそうです。
天文単位120AUはどれくらい遠いのか?
地球から約120AUという場所で発見された準惑星の名前は「2018 VG18」(暫定名)し、通称を「遥かに遠い」という意味の「Farout(ファーアウト)」と名付けられています。ところで、地球から準惑星・ファーアウトまでの120AUという距離ですが、これをキロメートルに直すと約180億キロとなるのですが、あまりにも遠過ぎるこの距離は、秒速30万キロで進む光の速さでさえ16時間40分もかかってしまいます。
ちなみに、これまでで発見された太陽系外縁天体の中で最も遠かったのは「V774104」という天体で地球からの距離は約150億キロでした。
さらに準惑星・エリスまでは約145億キロあり、ファーアウトはこれまで発見された最遠天体を大きく超えたことになります。
「Image Credit:space.com」
またこの場所は、太陽圏の外側にある星間空間の境界線ヘリオスポーズもしくはギリギリ太陽圏の内側の領域であり、つまり、ほぼ太陽風が届かない距離にあるものと推測されています。
太陽系最遠天体・ファーアウトはどんな星なのか?
約120億キロという遥か彼方で見つかった準衛星・ファーアウト。そこは地球からあまりのも遠いためこの天体の詳細はほどんどわかっていませんが、準惑星というだけあって球形になれるだけの比較的大きな質量を持つ直径は約500キロほどある天体だという事です。
また、ファーアウト表面の分析をしたところ、太陽光を反射すると氷を大量に含んだピンクがかった色をしている事も概ね判明しているとの事。
「Image Credit:準惑星・ファーアウトの想像図(space.comより)」
残念ながら、まだその公転軌道は明らかになっていませんが、太陽との距離関係から推測すると、おそらくは1,000年以上の公転周期はあるものと考えられています。
ファーアウトは太陽系第9惑星探索の過程で見つかった天体
準惑星・ゴブリンもそうでしたが、このファーアウトもまた現在、世界中の天文機関が懸命に研究している、謎の太陽系第9惑星探索の過程で発見された天体だという事です。現時点で推測されている第9惑星の質量は地球の約10倍ほどで、大きさは地球の2~4倍ほど。
つまり、地球より遥かに小さい準惑星・ゴブリンやファーアウトが発見されているのに対し、地球より大きいと推測される第9惑星が発見されていないという事は、現在第9惑星はファーアウトが見つかった距離の120AUより遥かに遠い場所に存在するものと考えられています。
この事により今後も第9惑星の探索には時間がかかる事が予想され、位置関係が悪ければあと1,000年は発見されないという懐疑的な声もあります。
ちなみに、今回発見された準惑星・ファーアウトは観測史上最遠の天体ですが、これより外側の軌道に天体が存在しないというワケではなく、おそらく、第9惑星を含め準惑星級の天体はまだ存在する確率は高く、今後も更に遠い場所にある天体が発見される可能性は十分にあります。
というのも太陽系はまだまだ広く、最も太陽系の外側にあり彗星の故郷と言われているオールトの雲は5,000~10万AUの距離にあるモノと考えられているからです。