先日、私たち一般人が宇宙に行ける日も近いなどと紹介しましたが、早速宇宙旅行の受け付けが始まるというニュースが飛び込んで来ました。

どんな宇宙旅行なのか?とワクワクして調べたところ、それは気球に乗って宇宙に行くというモノでした。
当然とは思いますが「気球で宇宙?」と疑問に思う人もいるでしょう。でも宇宙に行くにはロケットじゃなきゃダメという事でもないのです。
では、気球で行く宇宙旅行とはどんなモノで、プランや気になる料金はどれくらいなのでしょうか?

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HISが手掛ける気球で行く疑似「宇宙旅行」プラン

いきなり、今回ご紹介する宇宙旅行を”疑似”と表現しましたが、調べたところどうも本格的な宇宙旅行ではないようでしたのでこのように書いてしまいました。

この”宇宙旅行”を手掛けるのは旅行大手のHIS(エイチ・アイ・エス)。つまり日本の旅行会社が手掛ける旅行プランであり、しかも大手ですのでかなり信頼性が高いモノと言えるのではないでしょうか!?
そんなHISが打ち出した宇宙旅行プランは気球に乗って宇宙まで行くというモノで、「Spaceship Neptune」と呼ばれる気球型宇宙船で離陸してから着地(着水)するまで合計6時間の旅となるそうです。

「Image Credit:HIS」
詳細な旅行行程は、アメリカの宇宙ベンチャー企業「Space Perspective」が提供する、再生可能な水素を推進剤にした気球型宇宙船「ネプチューン」に乗ってフロリダのケネディ宇宙センターから出発し、時速12マイル(時速20km)のゆっくりとした速度で2時間かけて成層圏まで上昇。
最高高度約30キロまで上昇したら2時間程の遊覧飛行を行ったのち、再び2時間程かけてゆっくりと降下し海に着水。出迎えの船に乗って帰るといったスケジュールになっているそうです。

ゆったりと遊覧飛行を楽しめる装備と豪華なもてなし

この気球型宇宙船の最大搭乗(客数)人数は8名。

「Image Credit:Space Perspective」
船内は360度見渡せるの展望窓が付いており、乗客はリクライニングシートに座って景色を眺めながら、食事やお酒等を楽しみ、またライブストリーミングが可能な通信デバイスとWi-Fi接続を装備しているため地上との自由な交信が可能。さらには、カスタマイズ可能なムード照明や観葉植物も飾られ、高性能な望遠鏡も用意される事から遥か上空から地球の様子を眺める事も出来るそうです。

「Image Credit:Space Perspective」
ただ、客室乗務員は乗船していないため(乗務員はパイロット1名のみ)、基本的なサービスはセルフで行うようです。
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気になる料金と申し込み方法

実はこの旅行プランの予約は既に始まっており1,000人以上が申し込んでいると言います。
そのため第一段となる2024年(Year 1)のフライトは完売。現在(2023年1月)は2025年10~12月と2026年1~12月(Year 2)、2027年(Year 3)、2028年(Year 4)の各年での販売を受け付け中だと言います。


「Copyright ©:Space Perspective All rights reserved.」
また、18歳以上なら誰でも申し込み可能で、事前トレーニングの必要もなく参加できるそうです。
そして気になるのが料金。一人あたり12万5,000ドル(約1,614万円)。別途手配料として55万円が必要との事で、返金は搭乗予定日の12カ月前まで可。キャンセルも搭乗予定日の12カ月前から100%可能との事です。

気球で行く宇宙旅行の疑問点

本格的に運用を開始する気球での宇宙旅行。6時間の旅で1,600万円はかなり高額ですが、それでも興味のある人は少なからずいるのではないでしょうか?!
でも、気球で宇宙旅行と聞くと少し不安になるかも知れません。
そこでここでは、疑問点について少し触れておこうと思います。

本当に気球で宇宙に行けるの?

「気球で宇宙に行く」と聞いて、あまり耳慣れていないかも知れません。
でも気球でもかなりの高高度まで上昇出来る事は実証されており、これまでの最高獲得高度は約50キロですので、この旅行で上昇する高度30キロまでは問題はないでしょう。

気球が途中で破裂したりしない?

今回開発された気球型宇宙船「ネプチューン」には、世界で活躍するスペースバルーンの専門家が開発を担当しており、数千回にわたるシュミレーションを行い安全性を確保し、万が一トラブルが起こった場合に備え、予備のバックアップシステム(パラシュート)の装備もしているそうです。

船内の気密性や安全性は大丈夫?

高度30キロという気圧のかなり低い高さまで上昇する気球型宇宙船ですが、そもそも乗客が乗り込むカプセルの安全面は大丈夫なのでしょうか?

旅客用のカプセルは完全に与圧された空調システムが完備されており、耐圧性を高めるための安全対策や、窓には大気高層による太陽光の影響を軽減するために、宇宙飛行士のヘルメットと同じ反射コーティングが施されており、当然ながら試験飛行も繰り返し行われており安全対策に抜かりはないとされています。

Spaceship Neptuneは残念ながら本格的な宇宙旅行ではない

ここまで気球型宇宙船で行く「Spaceship Neptune」の紹介をしておきながらですが、残念ながらこの旅は宇宙旅行ではないと言えるでしょう。

その最大の理由が、気球が上昇する高度は30キロと地球の大気高層である成層圏内である事であり、人類が”宇宙”と定めた高度は100キロ以上の高層となるからです。

「Image Credit:宇宙航空研究開発機構 宇宙環境利用ガイドブックより」
また、この記事を書くにあたり参考としたニュースサイトに「高度約30キロの宇宙の入り口までの旅は無重力にはならない」との記載がありました。
これも大きな誤解があり、仮に気球で本来の宇宙である高度100キロ上空に行けたとしても無重力になる事はありません。
それは気球の飛行速度では地球を周回する軌道に乗る事が出来ないためであり、無重力を得るには地球の重力と宇宙船の速度で発生する遠心力の中和が必要なため、最低でも秒速8キロ以上の高速を出さないとならず、高度400キロ上空を周回する軌道上にいる国際宇宙ステーションはその速度を維持する事で無重力状態を実現出来ているのです。

「Image Credit:宇宙航空研究開発機構 宇宙環境利用ガイドブックより」
おそらく”宇宙旅行”と聞いて、無重力状態を体験したいという人が多いかと思いますが、残念ながらこの旅行ではそれは叶わないですが、それでも普通なら絶対に行く事が出来ない超高高度から眺める地球の景色は、この上ないうっとりする最高の眺めを堪能できる事は間違いないでしょう。
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