オーロラは天文現象のひとつ。高緯度の極域近辺で見られる美しい光のカーテンとして誰もが知り、そして一度は観てみたいと願う神秘の光のショーです。

そんなオーロラは時に、それほど高緯度でもない北海道でも見る事が出来るのですが、もっと南に位置する日本各地で見られたという記録が残っています。
その時のオーロラを当時の人は「赤気(せっき)」と呼び、一部の文献では不吉な兆しとし大混乱に陥ったとの話もあります。
では、過去に日本で見られたオーロラはどのように見えたのでしょうか?
そして何故、高緯度でもない地域にオーロラが出現したのか?その原因について迫ってみたいと思います。

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過去に日本各地(北海道以南)で観られたオーロラの記録

北海道では稀にオーロラが観測され、この時出現するオーロラの事と「低緯度オーロラ」と呼び、夜空がうっすらと赤やピンクに染まる現象を観る事が出来ます。


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しかし、過去には日本で観られたオーロラの記録文献がいくつか残っていますが、明治期以前の北海道は開拓が進んでおらず、言わば未開の地。つまり、過去の文献に残るオーロラの記録は、北海道よりさらに低緯度の地域で観られたという事を意味しているワケです。

例えば、織田信長が本能寺の変で倒れる3カ月前の天正十年(1582年)3月8日。本能寺がある京都でもオーロラ(赤気)が観測されたとの記録が残っており、さらには明和七年(1770年)7月28日に、東日本や京都といった西日本の一部の地域でオーロラが観測されましたが、その数日前にはレクセル彗星も出現した事もあり、当時の人々は「悪い予兆か?」と大混乱に落ちったとの話も残っています。

「Image Credit:1770年に観測されたオーロラの絵図(国書データベースより)」
研究者たちは歴史資料から赤気現象を調べ、この当時、太陽活動が活発化した事により大規模な磁気嵐が発生。これにより比較的緯度が低い日本等の地域でもオーロラを発生したのではないかとの見解を示しています。
また、日本最古の記録によると620年にも低緯度オーロラが観測(日本書紀)されており、これらを11年周期でやって来る太陽活動の極大期を遡る事で、過去に日本で観測された低緯度オーロラの説明が付くとされています。
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オーロラはどうやって発生する

この記事冒頭でオーロラは天文現象のひとつと話ましたが、オーロラが発生する原因は太陽にあり、私たちの地球は太陽からやって来る光や熱の恩恵を受けて生きています。しかし太陽からやって来るのは光や熱だけでなく、その中には電気を帯びた荷電粒子(プラズマ)も多く含まれており、これらが地球の両極(N極やS極)に引き寄せられ大気と接触し発光する事で起こる現象です。

「Image Credit:Wikipedia」
このような太陽から放出された荷電粒子の事を太陽風と呼び、太陽風自体は生命にとって非常に危険なのですが、強い磁場を持つ地球がそれを防いでくれており、それでも太陽風の危険な粒子の一部が地球磁気圏内部に侵入して磁場を乱したり、地球の上空に降り注いだりしています。このような太陽風による現象の一つがオーロラなのです。
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緯度や高度によって見え方が違うオーロラ

今回、日本で観測された低緯度オーロラについて解説していますが、基本的にオーロラは高緯度で観られる発光現象で、観測出来る領域をオーロラ・ベルト(オーロラ・オーバル)と呼び、両極周辺の緯度75度~80度付近がオーロラ・ベルトに該当します。

「Image Credit:緑のラインがオーロラ・オーバル(天空の神秘オーロラより)」
またオーロラは発生する高度や観測する位置によって見え方が異なり、その原因となっているのは地球の高度毎に含まれる大気成分によるもので、その大気層に多く含まれる成分と荷電粒子の衝突で発光色に変化が生じて来るのです。
  • 高度約50~100キロ(ピンク色):比較的低い高度では、その大気層に多く含まれる窒素が反応してピンク色の発光色となり、これは低い高度まで太陽風が侵入している事を意味しており、特に太陽活動が活発になっている時に発生しやすいオーロラだとされています。

    「Image Credit:Zoltan Kenwell」
  • 高度約100~200キロ(緑色):良く「光のカーテン」称されるオーロラがこの高度で発光するオーロラ。主な発光成分は酸素で、比較的上層部で衝突する粒子のエネルギーが高いためカーテンを引いたような緑色の輝きを魅せてくれます。
    「Image Credit:Wayne Barsky」
  • 高度約200~500キロ(赤色):主な大気成分は酸素ですが、大気密度が低い大気最上層部で発光するため、ぼんやりとした淡い赤色で発光します。

    「Image Credit:Tobias Billings」

赤気の正体は高高度で発光するオーロラだった

ここまでの解説でもうお分かりかと思いますが、北海道を含む過去に日本で観測されたオーロラ(赤気)の正体は、高度200~500キロという大気密度が薄い層で発光するオーロラであり、このような低緯度オーロラが観測された原因は、太陽活動の活発化により強力な太陽風が放出された事で、地球の大気上層部が強く発光し日本までその光が届いたという事になります。
もし、過去に観測された低緯度オーロラが現代でも発生した場合、強力な磁気嵐も起こり、世界各地で大停電が発生する可能性もあるため、この赤い光(赤気)は、人類に対する警告の意味にもなるいのかも知れません。
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