果てしなく広い宇宙。そこには私たちが想像出来ない奇妙な星々も多く存在します。
今回、そんな奇妙な星の中から、観測データを基にして制作されたアニメーション動画が公開され話題になり、それは私たちの住む銀河の中にある超新星爆発の残骸の再現動画だそうで、まるで巨大ブラックホールにも似た性質を持っている事から「マイクロクエーサー」とも呼ばれている天体です。
超新星残骸・マナティ星雲
私たちの太陽よりも遥かに重い恒星が寿命を終えると大爆発を起こします。その現象を超新星爆発と言い、爆発の跡には巨大なガスが広がりいわゆる星雲が形成されます。
そんな超新星残骸のひとつが、地球から見て「わし座」方向(約1万8,000光年)彼方に、形状が水生動物のマナティに似ている事から名付けられた「マナティ星雲(W50)」があります。
「Image Credit:実際のマナティ星雲と右下が水生動物・マナティ(WISE/NASA; (inset) Tracy Colson)」
マナティ星雲は約2万年前に超新星爆発を起こしたと思われる大質量恒星の残骸だとされ、またその中心部には、超新星爆発の果てに形成されたと思われるコンパクト天体(ブラックホールもしくは中性子星)が存在し、その近くには連星となる恒星がありその2つの天体はお互いに回転しあって、そこから放出させるガスによってこのようなマナティに似た星雲模様が出来上がっていると見られています。
マナティ星雲の心臓部は荒れ狂うマイクロクエーサー
この星雲は、マナティという愛らしい動物の名前が付けられているのとは裏腹に、その中心には大質量恒星(太陽質量の30倍以上)が大爆発を起こした跡に残った強重力のコンパクト天体が存在し、その近くには伴星のA型超巨星と推定されるSS-433と呼ばれる連星系を成している天体が存在しており、この連星は、お互いの天体が回転しながらコンパクト天体がA型超巨星のガスを巻き込み降着円盤を形成し、さらにコンパクト天体からは双方向にイオン化したガスの噴流するジェットが放出されているという、超巨大ブラックホールを取り巻くクエーサーに特徴が似ている事から「マイクロクエーサー」とも呼ばれています。「Image Credit:ESO」
ちなみに、マイクロクエーサーと呼ばれるこの連星の規模は、双方向に流れるジェットの長さまで含めるとおよそ太陽系の5,000倍にも及ぶと推測されています。
アニメ映像で再現されたマナティ星雲のマイクロクエーサー
非常に特徴的な天体「SS-433」は発見されてから40年以上を経過していますが、科学者たちこの天体を詳しく観測し、その観測データから実際どのようになっているのか?をアニメーション動画で再現しました。このアニメ動画を観ていただけるとおわかりかと思いますが、主星(ブラックホールか中性子星と考えられているコンパクト天体)の近くに、高温で巨大な伴星の恒星があり、そこから主星に向かってガスが流れ込む様子が描かれています。
さらに主星に流れ込んだガスは、主星を取り囲む超高温の降着円盤を形成し、高温になったガス流の降着円盤は、その圧力に耐え切れなくなった磁場の影響で天体の両極方向から外に向かって、光速の4分の1にもなる速度で勢いよくガス・ジェットを放出。
その様子が動画で詳細に再現されています。
また、最近の観測研究でSS-433からは高エネルギ-のガンマ線が放出されている事も判明。
見た目こそ愛くるしいマナティを想像させるマナティ星雲ですが、その実態は巨大なエネルギーを持つマイクロクエーサー天体。
ただ、長年観測研究が続けられていますが、まだその詳しい実態はわかっていないそうです。