2019年1月18日に打ち上げられたJAXAの低コスト小型ロケット・イプシロン。
このロケットに積まれた7つの人工衛星のうち1つが、新しい宇宙ビジネスモデルとして大きな話題になっています。
それはこのサイトで以前も取り上げた人工的に流れ星を降らせる装置(人工衛星)「ALE-1」が積まれていた事。この日本発で革新的な世界初の人工衛星は、今後の宇宙ビジネス躍進に一石を投じてくれるのでしょうか?

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世界初の宇宙ビジネスモデル人工流星衛星打ち上げまでの経緯

イプシロンロケットにより打ち上げられた人工的に流れ星を降らせる衛星「ALE-1」。
これは日本の小さな宇宙ベンチャーである株式会社ALE(エール)が開発した人工衛星で、しかも若き女性で子育てするママが設立した会社なのです。

●参考サイト::【ALE Co., Ltd. – 衛星から人工流れ星を流す宇宙ベンチャー】
彼女がALEという会社を創業した経緯を見てみると。「しし座流星群」に影響を受け人工で流れ星を降らせることは出来ないかと考え、それを実現に向け研究を始めた結果、会社を設立し現在に至ったとあります。
つまり彼女は、人工流星は実現可能でビジネスとしても成り立つ!と確信を持ったからこそ会社を立ち上げたワケで、会社設立後は、4つの教育機関(東北大学・首都大学東京・神奈川工科大学・日本大学)と共同で試行錯誤の研究開発を重ね、その集大成として2019年1月の人工流星衛星初号機「ALE-1」の打ち上げに成功しています。

「Image Credit:2019年1月18日。鹿児島件内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられるイプシロンロケット4号機(JAXAライブ中継より)」

人工流星プロジェクト「Sky Canvas」とは

夜空を美しい光を放って流れる流れ星。
そもそも流れ星の正体は、彗星等が宇宙空間に撒き散らした数ミリ~数センチ程度の塵です。
そんな宇宙を漂う塵が地球に落ちて来る時に、大気との摩擦熱で発生するプラズマが発光する現象が流れ星として見る事が出来るのです。
故に流れ星は見たいときに出現するワケではなく、それは突発的に出現したりと、地球が塵の集まった領域に入った時に起きる年に何回かの流星群の時だけに限ります。

そんな自然まかせの流れ星ではなく、人工的に自由に流れ星を発生させた壮大な光のエンターテインメントを実現させるべく発足されたのが、株式会社ALEの「Sky Canvas」プロジェクトです。
人工で流れ星を発生させる仕組みはALEが製作したプロモーションビデオをご覧いただけるとおわかりになると思いますが、

「Copyright ©:ALE Co., Ltd. / 株式会社ALE All rights reserved.」
以下補足として、人工流れ星システムについて簡単に解説すると。
  • 装置:地上から約400キロ上空の地球低軌道を周回する専用の人工衛星
  • 人工流れ星の素材:人工衛星から射出される直径1センチ、重さ数グラムの特殊素材の金属球
  • 1回の射出数:5~20個(粒)
  • どれくらいの明るさで見える?:マイナス1等級(シリウス程度の明るさ)
    「Image Credit:ALE Co., Ltd.公式サイト」
  • 人工流れ星が見える時間:3~10秒程度
  • 人工流れ星が見える範囲:地上200キロ周辺の範囲
  • 地上に落ちた人工流れ星はどうなる?:高度60~80キロで完全に燃え尽きる
  • 人工衛星が搭載出来る人工流れ星の数:20~30回使用可能な400~1,000個(粒)搭載
  • 人工流れ星を使い切った人工衛星の使い道は?:最期は大気圏に突入させて燃え尽きる
といった内容で、「Sky Canvas」プロジェクトによる人工流星はつくられるそうです。
また、この流星には細工もされているとの事で、ただ発光するだけではなく虹が流れるように様々な色に変化する演出も施されているとの事です。
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人工流星に対する懐疑的な声

どんな挑戦もそうですが、初めての試みには批判的な声はつきモノです。
残念ながら、この世界初の人工流星についても懐疑的な声が多く挙がっており、その声の一部を紹介すると。
  • 流れ星は自然のモノだからこそロマンティックであり、人工的な流れ星にはそんな価値が見出せない。
  • 大気を汚す環境汚染に繋がる。
  • 完全に燃え尽きる補償はあるのか?危険性は?
  • 人工流星は光害で天体観測の邪魔になる。
  • 軍事利用される危険もあるのでは?
  • たった数秒間のショーなのに費用がかかり過ぎる。花火の方がよっぽど経済的。
といった具合にSNSを中心に批判的な意見があるようです。
さらには、そもそも論として「いくら流れ星の素とは言え、上空からモノをバラまく行為はどうなの?」という声もあるようです。

また余談ですが、この試みを世界初と紹介をしましたが、実は既に実験には成功しており、人工流星のアイデア自体は1940年代からあり、1960年にはNASAのラングレー研究所が成功しています。

人工流星はビジネスとして成功するのか?

人工流星について懐疑的な声を紹介しましたが、その中で多いのが、費用・コスト面で、このビジネスが成り立つのか?疑問視する声があります。

この人工流星が使われると予想されるのが、お祭りやコンサート会場でのエンターテインメント演出。

「Image Credit:ALE Co., Ltd.公式サイト」
花火に代わり、夜空に無数の流れ星が降ってくれば大いに盛り上がる事でしょう!?
しかし、これにはコスト面を含め、いくつかの問題点が浮上しています。

【人工流れ星の問題点】
  • コストの問題:人工流星の打ち上げコストは総額5億円(開発費は20億円)で、1回の演出額は100万円以上?一方、打ち上げ花火は1発数万円程度で済む!?
  • 天気に左右される:遥か上空を流れる流星のため、雲の無い好条件でないと出来ない。
  • 明るい場所では出来ない?:街灯りの強い都会や、月明かりの中では効果が期待出来ない?
  • 見える範囲が広過ぎる:イベント会場周辺200キロ範囲内で見える人工流星。そのため多くの人たちが無料で楽しめるのは良いのだが、
    その一方で高額なお金を払っている主催者から不満が出る可能性も?!
いずれにせよ初めての試みですので、賛否両論があるのは仕方がない事かも知れません。

今回打ち上げられた人工流星衛星が実験的に使われるのは、具体的な日程の記載は見つかりませんでしたが、2020年の夏から秋に広島と瀬戸内海の空の上で行わる予定の「SHOOTING STAR challenge」というイベント。

「Image Credit:SHOOTING STAR challenge公式サイト」
このイベントの結果次第で、今後の人口流星ビジネス成功の行方がハッキリするのではないでしょうか?
そしてさらに、イベントが東京オリンピック開催前に成功すれば、開会式や閉会式で実現の可能性も?!

そうなれば、世界初の壮大な宇宙エンターテイメントとして、一気に世界に知れ渡ることとなるでしょう。
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